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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ
第2期

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第40話 風音

重い浮遊感と耳鳴り。

ノイズが走る。

その時。


ハルト「……っ」


硬い地面に着地。

咄嗟に受け身をとる。

数秒遅れて、ハルトはゆっくり顔を上げた。

そこに広がっていたのは、巨大な都市。

だがそこは、普通の都市ではない。

果てしなくビルや道が広がる大都市だった。


ハルト「始まったのか……」


ここは前の世界とは違う。

もっと人工的で、もっと不気味だった。

ハルトは周囲を見渡す。

だが、誰一人いなかった。


ハルト「やっぱり、ランダムスポーンか……」


その時だった。


???「接続確認」


突然、聞き馴染みのある声が聞こえる。


ハルト「!」


ハルトは即座に振り返る。

すると、空中に小さな光が浮かんでいた。

白い粒子と共に現れたのは。


ハルト「クリオ!」


だが、何故か小さい。

手のひらサイズで、どこか丸い。


???「正確には、クリオ本体ではありません」


ハルト「……ん?」


小さなその存在は胸を張る。


???「名ずけて、“ミニクリオ”です」


ハルト「そのまんまだな……」


ミニクリオ「私はクリオ本体から、一部サポート権限を移行されています。いわゆる、コピー的存在です」


小さいのに、妙に真面目だった。

ハルトは小さく息を吐く。

少しだけ安心した。

完全に1人ではなかった。


ミニクリオ「今から、ルールの詳細を説明します」


ミニクリオが空中を移動する。


ミニクリオ「まず、私たちは敵プレイヤーの能力や詳細情報を無条件で開示することができません」


ハルト「戦うまでは分からないってことか」


ミニクリオ「はい。ですが、敵プレイヤーと接触をした瞬間、対象の“名前”“属性”“ランク”を自動的に表示します」


ハルト「接触?」


ミニクリオ「こちら側が、相手と遭遇し、対立を起こしたと判断した時です」


ハルト「なるほどな……」


ハルトは目を細める。


ミニクリオ「さらに仲間、または敵プレイヤーが脱落した場合、そのプレイヤー名を即時通知します」


ハルト「……」


つまり、誰かがやられれば即座に分かる。

一気に緊張が走る。


ミニクリオ「最後に、この世界は一定時間ごとに縮小します」


空中にマップが映る。

巨大な大都市。

その外側が赤く塗りつぶされている。


ミニクリオ「縮小エリアへ留まり続けた場合、強制的に脱落となります」


ハルト「完全にバトルロイヤルだな……」


ミニクリオ「はい。これでルール説明は終わりです。何かありましたら、私をいつでもお呼びください。では」


ミニクリオは光となって、どこかへ消えてしまった。

ハルトは拳を握る。

1人で戦うな。

自分で言った言葉だ。


ハルト「……行くか」


ハルトは巨大な都市を見る。

果てしなく続く景色。


ハルト『まずは、仲間を探そう』


そう言って、ハルトは走り出した。



高層ビルの隙間。

ネオンの光が、薄暗い地面を照らす。

その中を、1人の女性が静かに歩いていた。

長い髪が風で揺れる。


ユリカ「みんな、どこにいるんだろう?」


ユリカ《思考侵入(マインド・スリップ)


カツン、カツンと足音を鳴らす。


ユリカ「早く誰かと合流しないとね」


周りを見渡す。

だが、どこも薄暗くよく見えない。

その時。


ユリカ「……?」


後ろから何やら気配を感じる。

まるで、何かが振動しているかのように。

ユリカは振り返らない。

ただ、小さく笑う。


ユリカ「ふふっ、大丈夫よ。いきなり襲ったりしないから」


暗闇の中から、1人の少女が現れる。

白いヘッドホン。

その上から、白いフードを被っている。

ヘッドホンからは、ほんの少し音が漏れている。

ユリカは振り返る。

その瞬間、ユリカの視界に赤い文字が表示される。


《接触確認》

カナデ

・属性:音

・ランク:Ⅳ《異常個体(イレギュラー)


ユリカ『音……。ノア君みたいなサポート系かな?』


同時に、カナデの視界にも白い文字が表示される。


《接触確認》

ユリカ

・属性:精神

・ランク:Ⅴ《超越者(オーバー)


カナデ「……」


カナデは何も言わない。

その姿に、ユリカは微笑む。


ユリカ「ねぇ」


少し首を傾げる。


ユリカ「どうして、あの願いにしたの?」


カナデは黙ったまま。

ユリカはヘッドホンで聞こえてないと思った。

もう一度質問しようと言葉を発しようとした瞬間。


カナデ「……シオンだから」


小さく呟く。

その声には、迷いはなかった。


カナデ「シオンには誰も逆らえない。だから、あの願いになった」


仕方ないから、ユリカはそう捉えた。


ユリカ「怖いのね。カナデちゃんはシオンが」


その瞬間、カナデの目つきが変わる。

空気が揺れる。


カナデ「……分かったように言わないで」


空気にノイズが走る。

音――というより“振動”。

周囲のビルのガラスが細かく震え始める。


カナデ「あなた達は、失う怖さを知らない!」


その瞬間、周囲のガラスが割れる。

ガラスの破片が、ユリカを襲う。


ユリカ「……あら」


だが、ユリカに触れる直前に、不自然に軌道が変わる。

無数に降る破片が、全て当たらなかった。


ユリカ「面白いこと言うのね」


カナデは手を向ける。

その時。


ユリカ「っ!」


気づいたら、後方へと飛ばされていた。

開けた道路に出て、ビルへ衝突する。

うっすらと見えたカナデの瞳。

そこには、明確な敵意があった。


カナデ「……私、そういうの嫌い」


今、第二接続(リンク・ベータ)で最初の戦いが始まる。



高層ビルの屋上。

吹き抜ける風。

そのビルの縁に、1人の男が立っていた。


カイ「すげぇな、どこを見てもでっけぇビルばっかりだぞ」


カイ《高速移動(ウィンド・スリップ)


腕を組みながら、街を見下ろしている。


カイ「こんだけ広けりゃ探すのも一苦労だな」


その時。

風が不自然に揺れた。

カイの背後に、誰かが静かに着地する。


カイ「ん?誰だ?」


振り返るとそこには。

鋭い目。

紺色のジャケット。

1人の男が立っていた。

2人の目が合うその瞬間。

視界へ同時に文字列が表示される。


《接触確認》

ナギ

・属性:風

・ランク:Ⅴ《超越者(オーバー)


《接触確認》

カイ

・属性:風

・ランク:IV異常個体(イレギュラー)


カイ「……おいお前、まさか……属性が風なのか?」


ナギは呆れた顔になる。


ナギ「見て分かんねぇのか?そうだよ、俺は風だ」


カイとナギ、どちらも同じ属性だった。


カイ「マジかよ」


カイは少し笑う。

その声には、高揚が混ざっていた。


カイ「やったぜ!!やっと風のやつと会えた!!前から同じ属性と戦ってみたかったんだ!!」


ナギは静かにカイを見る。

呆れた顔は続いていた。


ナギ『なんだこいつは?同じ属性と会っただけでそんな喜ぶもんなのか?』


風がなびく。

まるで、2人に反応しているみたいに。


ナギ「お前、ランクを見て分かんねぇのか?俺はⅤで、お前はIVだ。明らかに力の差が出てるだろ」


その言葉に、カイはニヤッと笑う。


カイ「へっ、だからなんだ。俺は最強に認められた唯一の準最強だぞ。そう簡単には負けねぇ。てか、勝つぞ」


ナギ「くそっ、舐めやがって」


その時、カイの脳内にある言葉を思い出す。


『絶対に、1人で戦うな!』


カイ『あっ、そういやそんなこと言ってたな』


カイは目の前にいるナギを見る。

明らかに戦闘態勢に入っている。


カイ『まぁでも、ここで勝てばまた最強に認められる。ここは約束を破ることになるが……』


カイも足を踏み込む。


カイ「ほら来いよ、どっちが風に適してるか勝負だ!」


ナギ「いいだろう!てめぇに今一度敗北を味わわせてやる!」


空気が揺れる。

2人の間には、目に見えない風圧がぶつかり始めていた。

同じ風を持つ2人が、牙を向け合う。

To be continued…

第41話 音を奏でる

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