第39話 覚悟
その頃、向こう側の部屋。
空気が全く違った。
静かで、冷たい。
願望という言葉が出ても、静寂を保っている。
レン「で?誰が決めるの?その願望ってやつ。誰も言わないなら私が決めるわよ」
カグラ「待って!あたしに決めさせてっすよ!」
ヒョウ「ふっ、君たちの願いなんてろくなものないな。ここはこの僕が決める」
シンマ「僕ちゃんがこの中で一番天才!ということは僕ちゃんに権利がある〜の」
ナギ「てめぇは黙ってろ」
リンネ「……」
好き勝手に言い合う。
まるで、喧嘩のように。
誰もが“自分”のためだった。
その時。
シオン「……腹立たしい」
突然の言葉に静まる。
黒いコートを着た男。
誰もが、自分たちに言っている。
そう思っていた。
しかし、それは違った。
シオンは静かにモニターを見ていた。
そこには、ハルトたちが映っている。
その姿は――笑っていた。
シオン「不愉快……極まりない……」
黒のような圧が高まる。
シオン「俺を……侮辱しやがって……」
その場の空気が凍りつく。
シオンは振り向く。
そこには、リオネ。
シオン「リオネ、相手のチーム全員を現実でも死なせろ」
ティレス「……え?」
カナデ「それは……」
少しだけざわめきが起こる。
リオネ「【相手チームの死を現実にも干渉させる】こちらでよろしいですか」
全員が黙り込む。
だが、否定の空気ではない。
それぞれ、人が死んでしまう。
というのではなく、“自分の願いが消える”。
それが不満だった。
シオン「それでいい」
???「待って!」
その時、セキが前に出る。
セキ「それはダメだよ!そんな願い、おかしいって!」
シオンが視線を向ける。
その瞬間、セキの肩が震える。
その圧倒的な存在感。
誰もが知っていた。
実力差を。
シオン「……なら、お前が勝たせろ」
セキ「え……」
その一言で、セキは動けなくなる。
セキ「そ、それは……」
セキは言葉を失う。
シオンの視線が強くなる。
シオン「腹立たしい……。リオネ、早くしろ」
リオネ「分かりました」
セキ「……っ」
願いが提出された。
《双方の願望ログを共有します》
ラウル「おっ、あっち側の願いも見れるのか」
クロウ「確かに気になるな」
モニターが赤に変わる。
《リオネチームの願望ログを表示》
全員は画面を見る。
ソラ「あっちの人たちも友好的だったらいいな」
ハルト「そうだと楽でいいんだが……」
そして、表示される。
【相手チームの死を現実にも干渉させる】
誰も、言葉を発せなかった。
この空間に、再び静寂が訪れる。
ラウル「……は?」
ミナ「え……」
ガルド「……おい」
アイラの顔が青くなる。
クロウは目を細め、見ている。
レイ「死を現実でも……干渉させる……?」
トア「つまり……」
トアの声が震える。
トア「私たち、負けたら全員死ぬってこと……?」
その瞬間、空気が一気に重くなる。
今までとは違う、本当の死。
ハルト『……は?どういうことだ……、死?死って……なんで……』
本当は、戦うつもりは無かった。
相手を説得し、話し、分かり合い、そして、殺し合わずに終わらせる。
このゲームに負けたって良かった。
だが、ハルトの考えていたことは全て、完全に破壊された。
エルマ「……なによ、それ」
バルク「ふざけんな!誰だこんなふざけた願いにしたのは!」
ゼイン「意味が分からない」
空気がどんどん重くなる。
クロウは口を開く。
クロウ「……もう、向こうはそのつもりだ」
これが、現実だった。
ハルトたちはモニターを見る。
そこには。
明らかに殺意を向けている男が1人、こちらを見ている。
確かに自分たちを殺そうとしている。
ハルト「……」
心臓が重い。
負けたら終わる。
自分だけじゃない。
ここにいる全員が。
ソラ「ハルト……」
ハルトがゆっくり顔を上げる。
その目には、迷いがあった。
それと同時に、覚悟も生まれていた。
別の部屋。
シオンたちはモニターを見ていた。
《クリオチームの願望ログを表示》
文字がゆっくりと浮かび上がる。
【――――――――――――】
その言葉に、全員の動きが止まる。
リンネ「……?」
レン「は?なにそれ、意味わかんないんだけど」
セキ「……!?」
ミオ「……敵、だよね……」
カグラ「ははっ、なにそれ!」
全員の中には、明確な困惑があった。
エデン「……どうして、こんな願いにしたのでしょう?」
まるで、理解できないものを見るように言う。
だが、シオンは違った。
その文字を見た瞬間、瞳が僅かに揺れる。
心の奥に、黒い苛立ちが一気に広がる。
理解できない。
理解したくない。
シオン「……ふざけるな」
シオンの目は睨んでいた。
まるで、ハルトたちを憎むように。
シオン「俺を、そんなもので救えると思っているのか!」
その声には、圧倒的な怒りがあった。
空気が変わっていく。
困惑が消え、代わりに殺意が生える。
シオン「……ぶっ壊す」
シオンはゆっくりと顔を下げる。
その目には、殺意があった。
それと同時に、覚悟も生まれていた。
モニターが赤く点滅する。
《TEAM BATTLE ROYALE》
《START COUNTDOWN》
《10》
ハルト「……!?」
赤い数字がモニターへ映る。
部屋全体が低く振動していた。
空気が重い。
誰も喋らない。
さっきまでの空気とは違う。
これはもう、ゲームなんかじゃない。
《9》
ソラが拳を握る。
ミナは小さく息を飲む。
ラウルでさえ、もう笑っていなかった。
《8》
モニターの向こう。
向こう側の20人。
きっと、今の瞬間も、自分たちを殺す覚悟を決めている。
《7》
怖い。
逃げたい。
帰りたい。
でも、ここで折れたら、全員死ぬ。
《6》
光が床へ広がっていく。
転送をする準備がされていく。
《5》
レイ「もしかしたら、ランダムスポーンの可能性もあるかもしれない」
ミナ「みんな、バラバラになっちゃうってこと……?」
《4》
ハルトは全員を見る。
ここまで一緒に戦ってきた仲間たち。
絶対に、失いたくない。
《3》
その時、ハルトは何かを思い出したかのように。
ハルト「みんな!」
全員の視線が向く。
ハルト「絶対に、1人で戦うな!」
《2》
ハルト「仲間が来るまで持ち堪えるんだ!」
その言葉には、確かな覚悟があった。
ハルト「絶対に、死ぬな」
《1》
ソラが小さく笑う。
ソラ「そっちこそ、無理しないでよ」
ラウル「よし、絶対勝つぞ!」
クロウ「生き残ってやる」
ミナ「うん!」
全員がお互いを見る。
恐怖はある。
でもそれ以上に、仲間がいた。
《0》
《TEAM BATTLE ROYALE》
《START》
その瞬間、赤い光が全員を飲み込んだ。
クリオ「皆さん、幸運を祈ります」
視界が白く染まる。
あの時の浮遊感、ノイズ、崩れる感覚。
そして今。
第二接続が始まった。
To be continued…
第40話 風音




