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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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33/35

第33話 背負う覚悟

ラウルが崩れる。

血が地面に落ちる。

その前に、クロウが立つ。

一歩ずつ、ゆっくりと。

AIの前へ歩む。


クロウ「……そこまでだ」


その一言で、空気が変わる。


《対象変更》


《脅威:クロウ》


光が収束する。

だが、クロウは動かない。

影が広がる。

足元から、静かに。

戦場全体へと。


ハルト「クロウ……?」


ラウル「……おい、なんだこれ……?」


2人は気づく。

影が、“濃すぎる”。

光があるはずなのに、影の方が強い。

間違いなく――触れてはならない。


ハルト「まずいっ!」


2人の元へ影が広がる。

何もかも、飲み込む勢いで。


ハルト「逃げるぞラウル!走れるか!?」


ラウル「あぁ、余裕だぜ」


ラウルは肩を抑えながら立ち上がる。

そして、走り出す。

向かうは――セラの結界の中。


ハルト「セラ!俺たちも入れてくれ!!」


セラは瞬時に反応する。


セラ「分かった!一瞬だけ結界に穴を開けるから、そこから入って!!」


しかし、影の広がる速度が異常。

後ろから徐々に迫っている。


ハルト『くそっ!いくらなんでも速すぎるだろ!!』


結界に着く前に、ほぼ確実に飲み込まれる。

さらにラウルは一歩遅れている。


ハルト『あそこに間に合わせるには……、あれしかない!』


ハルトは振り向く。

そして、ラウルの手を掴む。


ハルト「ラウル!少し我慢してくれ!」


ラウル「……は?」


雷が足に纏う。

その瞬間。

2人は、結界に一直線へと弾ける。


セラ「今だ!」


複数に重なる結界に、一つの穴ができる。

その中へと、雷が突入する。

同時に、穴が閉じる。

ギリギリ間に合った。


ハルト「はぁ……間に合った……」


ミナ「ハルトくん!!大丈夫!?」


ハルトはもう、ボロボロだった。


ハルト「あぁ、俺は大丈夫だ。それよりラウルが……」


ラウル「熱っ!!もっと俺を丁重に扱ってくれよぉ!!」


雷による光速に近い速度。

それにより、ラウルは身体を焼かれていた。

だが。

予想よりもダメージが少ない。


ハルト「お前の属性が炎だったお陰で、怪我が軽く済んだのか」


ラウル「それよりも肩の方が痛えよ……」


肩を軽く抑える。

その時。


セラ「まずい!結界が!!」


そこにあったのは、黒に染まった結界。

外側だけが、影で覆われている。


レイ「情報が遮断された……何も見えない」


ログが届かない。

視覚も見えない。

結界の向かうでは、何が起きているのか分からない。


ハルト「クロウ……大丈夫なのか?」


AIと1人で対面。

いつ死んでもおかしくない。


ラウル「今はあいつに任せるしかない」


ラウルは静かに答える。


ラウル「俺も、心配だな」


その間にも、結界の向かう側では――。



空間が影で埋め尽くされる。

闇の中、クロウはただAIだけを見ている。

その目は、深い闇の色。


クロウ「……お前の罪、償ってみろ」


その瞬間。


クロウ「罪状記録(ギルティ・ログ)


クロウの目が変わる。

まるで、全てを見ているかのように。


《異常検知》


《情報取得不能》


AIが動く。

先程と同じ、無数の光線。

だが。

クロウは、一歩も動かない。

光が迫り、当たる――。

その瞬間。

クロウが消える。

最初からそこにいなかったように。


クロウ「……後ろだ」


もう既に、回り込んでいる。


クロウ「罪刻侵蝕(ギルティ・スティグマ)


影の刃が触れる。

そこに、黒い“刻印”が浮かぶ。

ジュッ――

影が侵食する。


《継続的損傷確認》


クロウ「……罪は消えない」


さらに踏み込む。

二撃、三撃。

全てに刻印。

AIの身体に黒い点が増えていく。

AIが反撃する。

広範囲に光が広がり、全て爆発する。

逃げ場なしの攻撃。

だが。

クロウは既に、影に沈んでいる。


クロウ「……無駄な足掻きだ」


再び現れ、さらに斬る。

刻印が増え、侵食が広がる。


《損傷増加》


AIの動きが鈍くなる。


《再生速度低下》


クロウ「……まだ足りない」


クロウの中で“罪”が溜まる。

罪状記録(ギルティ・ログ)は、三つの観点から記録を得る。

攻撃の『回数』、『威力』、そして――『殺意』。

この三つが高ければ高いほど、罪として蓄積される。

それに応じて、クロウの攻撃のダメージも上がる。

クロウはずっと、見ていたのだ。


AIの光が脈打つ。


《出力大幅上昇》


先程とは違う。

一本一本が鋭い。

さらに、速い。


《排除》


全て放たれる。

一本ではない。

十、百、千。

連続で降る、光の“豪雨”。


クロウ「……」


あの時の、大雨の景色と重なる。

クロウは動かず、ただ待っている。

一本、肩を掠める。

そして、真正面から受ける。

爆発に全てが飲み込まれる。

だが。

その中にあった。

一つの影。


クロウ「……重いな。お前の罪は」


無傷の身体。

クロウの周囲で、影が歪んでいる。

光が当たるたびに、それを記録し吸収する。


《異常事態》


《排除再開》


光がさらに強くなる。

連続する光線。

だが。

クロウは止まらない。

ゆっくりと、歩く。

身体に当たるその瞬間。

影が吸い込む。


クロウ「……もう、逃げ場はないぞ」


一瞬、AIの動きが乱れる。

初めての“違和感”。

クロウは、そのまま光の中を抜ける。

完全に突破する。


クロウ「……もういいだろう」


ゆっくりと手を上げる。


クロウ「これがお前の罪だ」


その瞬間。


クロウ「刑罰準備(ペナルティ・チェイン)


地面、空間。

全ての影から、鎖が伸びる。

腕を。

脚を。

コアを。

完全に拘束。


《拘束確認》


《解除試行》


破壊を試みる。

だが、動けない。

何もできない。


クロウ「一度犯した罪からは逃げられない」


影が、さらに濃くなる。

刻印が共鳴する。

全ての罪が反応する。


クロウ「判決だ」


影が収束する。

一点。

AIの中心、コアへ。


クロウ「断罪(ギルティ・)執行(エグゼキューション)


全ての刻印が光る。

そして。

全ての罪を解放。

内部から。

外部から。

同時に、破壊。

三つの観点である『回数』、『威力』、『殺意』。

これらの罪がそれぞれ最大にまで溜まった場合――相手は“即死”となる。


クロウ「一生、償うんだな」


AIの身体が崩れ始める。

再生が追いつかない。

終わる、はずだった。


クロウ「……。やっぱりか……」


全て消滅しきらない。

なぜか、コアだけが残る。

観点が三つ最大の場合、例外なく即死となる。

だが、コアは消滅しない。

さっきよりも深く、傷が付く程度。

そう。

ただ一つ、最大ではないものがあった。

『殺意』

AIには、殺意が無かった。

人としての、感性が無かった。


《再構築……開始》


光が滲むように、形を作る。

身体が、徐々に現れる。

だが。

明らかに遅い。

今までとは違う。

再生の速度。


《出力……低下》


《再生速度……著しく……低下》


崩れかけながら。

それでも、形を保とうとする。

“限界”。

その言葉が、ふさわしい。


さらに。

クロウの影が、少しずつ引いていく。

セラの結界の影も、消え始める。

その時。

ミシッ――

結界にヒビが入る。


セラ「もう……限界……!」


フィオの植物が絡みつく。

それでも、支えきれない。

パキンッ――

結界が砕ける。


フィオ「もう無理……」


植物も崩れる。

枯れるように、力を失う。

防御が消える。

全員が、完全に無防備になる。


ハルト「クロウ!!生きてるか!?」


焦げた匂い。

壊れた地面。

その中に、二つの存在。

クロウ、そしてAI。

クロウは立っている。

足が震えている。

影が揺れている。

呼吸が、荒い。


クロウ「はぁ……」


今までの疲労が全てのしかかる。

明らかに、余力がない。

だがそれは、AIも同じだった。

形は保っているが、不完全で崩れかけ。

再生が追いつかない。

光が不安定に点滅する。


《……戦闘……継続……可能》


声が途切れ、ノイズが混じる。


ラウル「お前……すげぇよ……。あのAIをここまで追い詰めた」


クロウ「いや……仕留め損ねた……すま――っ、ごほ……げほっ……!」


途切れた声。

咳き込むたびに、血が飛び散る。


ラウル「クロウ!もういいから休め!あとは俺たちに――っ痛って……」


肩からまた血が流れ出す。

激しく動くたびに、傷が痛む。


クロウ「お前も……動くな……傷が悪化する……」


ラウル「それは、お互い様だろ」


ラウルは振り向く。


ラウル「あとは、あいつに任せる」


視線の先。

ゆっくりと、歩く。

血に濡れた身体。

傷だらけの手足。

それでも。

一歩、また一歩と、確実に前へ。


クロウ「……ハルト……」


掠れた声。

ハルトは、止まらない。

そのまま。

クロウの横を通り過ぎる。

ほんの一瞬だけ、視線が交わる。

言葉はない。

それでも。

分かる。

クロウが、ここまで繋いだこと。

その重さ。

その覚悟。


ハルト「……あとは、任せろ」


短く。

それだけ。

クロウの目が、わずかに揺れる。

そして。

小さく頷く。


ハルトはそのまま前へ出る。

AIと向き合う位置までの距離。

ほんの数メートル。

そこにあるのは、これまでの全て。

仲間の傷。

失ったもの。

繋いできた戦い。


ハルト「もうこれ以上、仲間が消えるところを見たくない」


空気が張り詰める。


ラウル「……行け、ハルト」


クロウは、何も言わない。

ただ。

その背中を見ている。


クロウ『頼んだぞ、ハルト』


今度は。

“守る側”ではなく。

“託す側”として。

To be continued…

第34話 託し託され

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