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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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32/35

第32話 取り消せない傷

光の嵐が止まない。

無数の光線。

速さも。

威力も。

精度も。

だんだん上がっていく。

その中を。

ラウルが破壊し、クロウが隙を作り、ハルトが突破する。


ラウル「炎牙追撃(フレイムファング)!!」


火球が枝分かれし、複数箇所にぶつける。

無理やり光を押し返す。


クロウ「影穿(シャドウピアス)


影の刃が隙を作る。

ハルトが反応し、雷で切り開く。


ハルト「何回でもやってやる!」


何度も。

何度も。

コアを狙い続ける。


ハルト「突雷断(アサルトスパーク)!!」


一直線の稲妻。

AIの身体は、二つに別れる。

それでも。

コアには全く効かない。


《無意味》


《あなた達では破壊不可能》


冷たい言葉。

しかし、結果がそう言っている。


ハルト「くそっ……キリがない」


ラウル「このままじゃ押されちまう」


再生が終わり、AIに光が集まっていく。


クロウ「……しょうがねぇ、成功するか分からないが“あれ”をするしかねぇな」


ラウル「…… “あれ”か」


ハルト「おい“あれ”ってなんだよ」


初めて聞く言葉に戸惑う。


ラウル「“あれ”は……あれだよあれ……あーもう!適当に合わせろ!」


ハルト「はぁ!?なんだよ合わせろって!」


クロウ「俺たちの動きに合わせればいい。あとは分かるはずだ」


適当な説明、抽象的な言葉。

何が何だか分からない。

その間にも、AIの光が集まっていく。


ハルト「頼むよ!ちゃんと説明してくれ!」


ラウル「だーかーらー!俺たちに合わせろって!」


クロウ「大丈夫だ、お前なら多分何とかなる」


光線が、襲い始める。


ハルト「ったく……失敗しても俺のせいにすんなよな!」


3人に光線が当たる直前。

同時に飛び出す。


ラウル「おらおら行くぜぇ!!」


熱量が異常な程に上がる。

広範囲な光線をえぐりとる。


クロウ「そこだ」


正確に光線を捉える。

そして。

少しずつ消滅させる。


《同パターン》


ラウルが正面を潰し、クロウが隙を作る。

さっきと同じ行動。

だが。

どこか違う。


ハルト「これでいいんだよな」


絶え間なく浴びせられる光線。

その中を――3人が一緒に進む。

1人も欠けることなく、守り合いながら。


《否》


《脅威度上昇》


AIも、その違和感に気づく。

少しずつ、距離が縮まっていく。


クロウ「皆既留影(エクリプスステイ)


クロウの影が広がる。

逃げ場を消し、光とAIを空間ごと固定。

AIの動きを“縛る”。


ラウル「今だぁ!!」


一時的に動きを失った光線。

軽々と避けながら、AIに近づく。


《行動困難》


《異常事態発生》


もう既に、3人はいた。

三つの力が重なる。

本来混ざらないはずの力。

雷。

炎。

影。

無理やり、一つになる。


《危険度――最大》


初めて。

明確に――“恐れ”に近い反応。

3人の視線が交差する。

言葉はない。

それでも、完全に通じている。


ハルト・ラウル・クロウ「――ッ!!」


力が限界を超える。

世界が歪み、時間が引き伸ばされる。

コアだけがはっきり見える。

その一点に、全てを――叩き込む。


背後では、沢山の思い。

『倒して』『勝って』

それよりももっと強い、一つの想い。


『全員で帰ろう』


心の中で、一つに重なる。


雷が唸る。

炎が咆える。

影が沈む。

限界を超える力が、全て一点へ。


ハルト・ラウル・クロウ「終極雷炎影断(ラスト・トリニティ)!!!」


空間そのものが、裂けながら進む。

一直線にコアへ――。

次の瞬間。

世界が白に塗り潰される。

衝撃波が、全てを吹き飛ばす。

セラの結界が軋み、フィオの植物が弾ける。


セラ「……ぐっ……!!」


フィオ「……耐えて……!!」


何重もの結界が砕け始める。

草木も、生える様子を見せない。

それでも。


セラ「……絶対に……みんなを守るんだ!!」


結界が、壊れたそばから生成される。

壊れて、生成され、壊れて、生成される。

次第に衝撃波が止む。

その中心。

3人は立っていた。

腕が震え、息も荒い。


ハルト「はぁ……はぁ……、どうだ……?」


煙が晴れる。

そこにはあるのは――コア。

だが。

ヒビが入っている。

そこから、少しずつ光が漏れ出している。


《コアの欠損を確認》


《修復不可能》


身体が再生する。

しかし、明らかに遅くなっている。


ハルト「……ははっ」


突然、笑い出す。

そして。


ハルト「やっと効いたかぁ!!」


ラウル「いいぜぇ!!この調子だぁ!!」


さらに出力が上がる。

もう限界のはずなのに。


クロウ「あぁ、トドメをさしてやる」


ただ、1人を除いて――。

その瞬間。

AIの光が再度収束する。

3人に狙いが定まる。

そして。


《再開》


放たれる光線。

だが――明らかに遅くなっている。

絶対に避けられる。

はずだった。


クロウ「……!?」


動こうとする。

だが、全く動けない。

クロウの大技「皆既留影(エクリプスステイ)」。

その後に、限界出力の「終極雷炎影断(ラスト・トリニティ)」。

クロウはもう、体力の限界だった。

光線が迫る。

もう、避けられない。


クロウ『ここで……終わりか……』


静かに死を悟る。

ほんの一瞬、目を閉じかける。


その瞬間。

クロウの影じゃない。

別の影が割り込んだ。

クロウの前に立っている。


ラウル「――ッ!!」


ラウルの肩が貫かれる。

遅れて、血が飛ぶ。


ハルト「ラウル!!」


クロウ「……お前……なにしてる」


視界がぼやけてく。

でも確かに、ラウルの姿は見える。


ラウル「……なんで……だろうな……俺にも……分からねぇ」


肩を抑えながら、静かに答える。

その答えに、身体が動揺する。

さらに、ラウルの背中。

その姿が、なぜか“見覚えがある”。


クロウ「……っ!」


記憶が揺れる。

ラウルの顔が、こちらを向く。

苦しそうに。

それでも。

クロウを見ている。


ラウル「……もう……下がれ……」


その言葉。

その表情。

その目。

クロウの中で、“何か”が繋がる。

ノイズみたいだった記憶。

断片だった過去。

それが、一気に浮かび上がる。


クロウ「……お前……」


息が止まる。

ラウルの顔。

あの時の“誰か”と――完全に重なる。


クロウ「……なんで……」


理解できない。

ここにいるはずがない。

でも。

確かに、“同じ顔”。

ラウルが膝をつく。

炎が抜ける。

血が滴る。

それでも、倒れない。


ラウル「……俺はまだ……終わってねぇ……」


その声が。

クロウの中で、過去と今を完全に繋げる。


クロウ「……っ」


影が揺れる。

初めて。

クロウの感情が、大きく動く。



夕方だった。

大雨で、遠くでは雷も鳴っている。

どこにでもある住宅街。

人の声。

車の音。

全部が普通だった。

その日までは。


クロウは傘をさして歩いていた。

イヤホンをつけて。

無表情で。

何も聞いていないみたいな顔で。

その後ろ。

少し距離を空けて、クロウの兄が歩いていた。

兄は、何度も声をかける。


兄「おい、待てって」


クロウ「……来んな」


振り返らない。

ただ、吐き捨てる。


クロウは、嫌いだった。

何もかもが優遇される兄が。

優秀だからでもなく。

優しいからでもなく。

ただ、兄という肩書きのせいで。

クロウよりも、兄が優先される、

それが、大嫌いだった。


兄「……またそれかよ」


苦笑する声。

でも、諦めない。

歩幅を合わせるように、少しだけ速く歩く。

クロウは舌打ちする。


クロウ「来んなって言ってんだろ。マジでうぜぇんだよ」


その言葉は鋭かった。

わざとだ。

傷つけるために。

兄は一瞬だけ黙る。

でも、すぐに言う。


兄「……帰る方向、一緒だろ」


当たり前のこと。

でも、クロウはそれすら許さない。


クロウ「だから何だよ」


立ち止まり、振り返る。

目が冷たい。


クロウ「勝手についてくんなって言ってんだろ」


兄は言葉を失う。

少しだけ、困った顔をする。

でも。

怒らない。


兄「……分かったよ」


その言葉が、雨の音でかき消される。

一歩下がり、距離を取る。

それでも。

完全には離れない。

同じ道を歩いている。

クロウは、それが気に食わなかった。


クロウ「……クソ兄貴め」


聞こえるように呟く。

兄は少しだけ目を伏せる。

でも、何も言わない。

その沈黙が、余計に腹が立った。


赤信号の横断歩道。

車が、流れている。

クロウは止まる。

イヤホンを外す。

少しだけ、息を吐く。

その横に、兄が並ぶ。

何も言わない。

ただ、同じ方向を見ている。

クロウは苛立つ。


クロウ「……来んなって」


兄は少し笑う。


兄「……分かってるって」


その言い方が、余計に気に食わない。

クロウは、顔を背ける。

そして。

“わざと”言う。


クロウ「クソ兄貴が――」


少しだけ、間を置く。


クロウ「いなくなればいいのに」


沈黙の中。

風の音だけが、通り過ぎる。

兄は何も言わない。

ただ。

ほんの一瞬だけ。

表情が止まる。

それでも、すぐに戻る。


兄「……そっか」


それだけ。

それだけだった。


信号が青に変わる。

人が歩き出す。

クロウも、歩く。

前だけを見て。

何も考えずに。

その瞬間。

横から音がした。

タイヤの擦れる音。

叫び声。

クロウの視界に、何かが飛び込んでくる。

車が――止まらず、突っ込んでくる。


クロウ「……!?」


理解が遅れる。

身体が動かない。

轢かれる。

その時。

背中に衝撃。

視界が回り、地面に叩きつけられる。

何が起きたか分からない。

ただ、目の前に――兄がいた。

道路の上に、倒れている。

血が広がる。

不自然なほど。

静かに。


クロウ「……は?」


周りの音が消える。

誰かが叫んでいる。

誰かが走ってくる。

でも、聞こえない。

クロウは、這うように近づく。

震える手で触れる。

温かい。

まだ、温かい。

兄の目が、少しだけ開く。

クロウを見る。

その目は――。

怒っていない。

責めてもいない。

いつもと同じだった。


兄「……無事……か……」


その一言。

クロウの中で、何かが壊れる。


クロウ「……なんで……」


声が、出ない。


クロウ「……なんでだよ……」


さっき、言った。

『いなくなればいいのに』

その言葉が。

頭の中で、何度も繰り返される。

兄の手が、少しだけ動く。

クロウの服を掴む。


兄「……なんで……だろう……な……」


微かに、笑う。

その笑顔が、消えていく。

力が抜ける。

手が落ちる。

完全に――動かなくなる。


クロウ「……嘘だろ……」


現実が理解できない。

理解したくない。


クロウ「……おい……おい……!」


何度も呼ぶ。

反応は、ない。


クロウ「おい……起きろよ……クソ兄貴……!」


何度も。

何度も。

呼ぶ。

もう、返事はない。

大雨の中。

ただ1人。

叫んでいた。


あの日から。

クロウの中に、“罪”が残った。

あの一言。

『いなくなればいいのに』

それが。

ずっと、消えない。



今。

クロウの前に、ラウルが立っている。

同じように。

自分を庇って。

血を流して。


クロウ「……また……かよ……」


震える声。


クロウ「……俺は……」


あの時と同じか。

何も変わっていないのか。

守られる側のままか。

違う。

違う。


クロウ「……もう……」


影が収束する。

静かに。

そして、確かに。


クロウ「同じ罪は、起こさせない」


覚醒条件(システムコード)


《この罪から、もう逃げない》


――達成(オーソライズ)


制限解除(アンロック)


クロウ「全部、背負ってやる」


To be continued…

第33話 背負う覚悟

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