第31話 三極衝突
静寂の中。
動くのは、3人。
ハルト。
ラウル。
クロウ。
背後には、仲間たちの願い。
セラの結界と、フィオの植物が重なる。
根元から絡み合うように広がり、防壁を形成していく。
ミナ「……無理しないでね」
その声に、ハルトが振り返る。
そして――。
そっと、親指を立てた。
ハルト「無理しなきゃ、やってらんねーよ」
それが答えだった。
セラ「絶対に通さないから!」
フィオ「ここは任せて!」
その言葉を背に。
3人は前へ出る。
結界が完全に閉じる。
その瞬間。
《殲滅》
空気が震える。
AIの全身から、光が溢れ出す。
細く、無数に。
その一本一本が――致命的。
《開始》
一斉に放たれる。
速度。
密度。
殺傷力。
すべてが、異常。
空間そのものが――光で埋まる。
ハルト「最後くらい、楽に戦わせてくれよ」
ラウル「足引っ張んなよ」
クロウ「それはこっちの台詞だ」
ラウル「はっ、お前もな」
ハルト「ははっ……お互い様だな」
光線が目前まで迫る。
当たる――その直前。
3人は、同時に散る。
バラバラに。
だが、無駄はない。
そして。
全員が、光の嵐の中へ踏み込んだ。
ハルト「瞬避!」
雷を纏い、無理やり突っ込む。
光が当たり、焼ける。
だが。
構わない。
ハルト「はぁ!!」
鎌を振るう。
雷が、光を弾く。
ほんの一瞬。
隙間が生まれる。
その隙間に、体をねじ込む。
“回避”じゃない。
“突破”。
ラウル「邪魔だぁ!!」
足を踏み鳴らす。
その度、炎が爆発する。
ラウル「業炎爆砕!!」
光を、正面から焼き潰す。
相殺。
いや、“消滅”させる。
ラウル「まとめてかかって来いよぉ!!」
光線が来るほど。
ピンチになるほど。
楽しい。
炎がさらに広がる。
自分の周囲を、全て焼き尽くす。
クロウ「無駄だぜ」
光が身体を貫く。
だが。
当たってない。
その瞬間だけ、影に隠れる。
クロウ「存在消滅」
次の瞬間。
自分自身を消す。
光の“隙間”。
最も薄い場所。
そこを通る。
完全な最短ルート。
《学習》
光が変わる。
直線じゃない。
曲がり、追尾する。
さらに。
時間差で爆発する。
ハルト「……チッ!」
避けた先で爆発。
AIは対応してくる。
ラウル「ははっ!!いいじゃねぇか!!」
炎で防ぐ。
それでも、ダメージは入る。
クロウ「厄介だな」
影の移動先に、既に光がある。
先読みをされる。
ハルト「ラウル!」
ラウル「分かってる!!」
炎が爆ぜる。
正面の光を消滅させる。
ハルトとクロウがそこを抜ける。
それでも、光は絶え間なく降り注ぐ。
クロウ「おい。お前の雷、全部俺にぶつけろ」
あまりにも突然で驚く。
ハルト「は?どういうことだよ」
クロウ「いいから早く!」
真面目で真剣な顔。
その勢いに、圧倒される。
ハルト「ったく、怪我しても知らねぇからな!」
雷が一点に集中する。
クロウの言う通り、本気でぶつける。
ハルト「雷波斬!」
空間を裂くような、一直線の閃光。
だが。
クロウ「借りるぞ」
その瞬間、雷が影に沈んだ。
一瞬だけ消える。
次の瞬間。
地面、瓦礫、人――あらゆる“影”から、光が滲み出す。
クロウ「影雷分裂」
一本だった雷が、十に、二十に、三十に――。
無数に裂けた。
光を雷で相殺。
まるでこじ開けるように。
ハルト「……なるほど。面白い使い方だな」
クロウ「無駄口はいい、さっさと行け」
ハルト「おう!」
ラウルとクロウが足止めをし、ハルトがAIへと向かう。
離れていても、今は繋がっている。
ハルト「……!そこか!」
光の隙間。
一瞬、AIの姿を見る。
だが。
隙間が小さく、通るのはほぼ不可能。
それでも。
ハルト「雷導・閃!」
被弾覚悟の突っ込み。
次の瞬間には。
もう、AIの目の前までいた。
身体を焼かれながらも。
そこには、いた。
ハルト「迅雷閃断!!」
身体の中心、コアに叩き込む。
直撃の瞬間、光を飲み込むほどの雷がAIを覆う。
《損傷……発生……》
明らかにノイズが混じる。
光線が一瞬だけ止む。
その隙を逃さず。
ラウル「効いてんぞぉ!!」
すかさずに追撃。
白焔の勢いが上がる。
ラウル「獄焔壊界!!」
当たる瞬間に、身体を消滅させる。
AIの再生を上回るほどの威力。
コアが剥き出しになる。
《危険度……上昇……》
再生の速度が上がる。
AIの身体が戻り始める。
クロウ「させねぇ」
背後、完全な死角から。
クロウ「無明断罪!」
光もろとも、影で覆う。
内部から、外部から、同時に蝕む。
コアが露出される。
クロウ「今だぁ!」
ラウル「行けぇハルト!」
ハルトはもう既に構えていた。
狙いはただ一つ。
コアだけ。
ハルト「天雷終焉!!」
雷が走る。
ハルトとコアを、一直線に繋ぐ。
今、この瞬間に出せるすべて。
そのすべてを――叩き込む。
ハルト「おらぁぁぁ!!」
さらに。
放った雷を、自ら吸収する。
あのケイルのように。
不安定でも。
不完全でも。
それでも――構わない。
自分自身が、“雷そのもの”になる。
ハルト「絶対に……帰るんだぁぁ!!」
鎌に雷が収束する。
限界まで。
そして。
AIごと、コアを斬り裂く。
直後。
異常な爆発が、戦場を呑み込んだ。
ハルト「はぁ……はぁ……」
煙が舞う。
視界が閉ざされる。
AIの姿は見えない。
ハルト「やっと……終わったのか……」
煙が、ゆっくりと晴れていく。
だが。
そこにはあった。
真っ黒なコアが。
ハルト「……は?」
AIの姿はない。
ただ静かに、コアだけが浮かんでいる。
ラウル「おい……あのAI、どこ行きやがった!?」
クロウ「待て……あの一撃で、身体だけ崩壊したんじゃねぇのか」
コアを守りきれず、肉体だけが消えた――。
そんな可能性が、脳裏をよぎる。
ハルト「これで……安心、だな……」
張り詰めていた空気が、わずかに緩む。
全員が、息を吐きかけた――その瞬間。
《予想外の出力》
どこからか、あの声。
ハルト「……!?どこからだ!?」
次の瞬間。
コアから、光が溢れ出す。
ゆっくりと。
だが確実に。
“形”が組み上がっていく。
ハルト「まさか……」
そう。
AIの身体が――再構築されていく。
《コアへの損傷無し》
《選別再開》
完全な声。
完全な存在。
AIが、そこに立つ。
再び。
その周囲に光が集まる。
攻撃の準備。
ハルト「……まだ、来るのか」
息は荒い。
身体は限界。
それでも、目は折れていない。
ラウル「上等だぁ!!何度でも消し炭にしてやるぜぇ!!」
クロウ「当たり前だ。次こそ完全に消す」
3人とも、消耗している。
だが――笑っていた。
戦いは、まだ終わらない。
戦場の端。
そこだけが、別の世界みたいだった。
セラの結界が何層にも重なる。
薄いが、確かに守っている。
外では。
光が暴れ。
雷が裂き。
炎が爆ぜれ。
影が混ざる。
その全てを、ここだけが遮断している。
セラ「……っ!」
結界が軋み、ひびが入る。
それでも。
すぐに張り直す。
何度も。
何度も。
フィオ「支えるよ」
足元から植物が伸びる。
結界を絡め取り、補強する。
衝撃を分散させる。
フィオ「まだ、大丈夫」
だが。
限界は近い。
その内側で、仲間たちが立っている。
ラウルを見て。
クロウを見て。
ハルトを見て。
戦えない。
行けない。
それが、分かっている。
ガルド「……ちっ……」
拳を握る。
悔しさで震える。
バルク「……行きてぇ」
前に出ようとする。
だが、止まる。
分かっている。
今行けば、“足手まといになる”。
ソラ「俺も、あの時の力があれば……」
ソラ、ミナ、ユリカ。
この3人はもう、あの力は使えない。
ミナ「ハルト、負けないで」
風が静かに揺れる。
ただ、見てるしかできない。
ユリカ「大丈夫よ」
静かに言う。
その目は離さない。
ユリカ「あの3人なら」
信じている。
完全に。
レイ「……ハルトたち、任せたよ」
目を閉じる。
祈るように。
全員が、同じ方向を見る。
戦場の中心。
ハルト。
ラウル。
クロウ。
誰も言わない。
だが。
同じことを思っている。
『絶対に勝って』
その想いが、結界の中で確かに重なる。
その言葉が、戦場の中心へと届くように。
静かに、響いた。
To be continued…
第32話 取り消せない傷




