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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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30/35

第30話 共に鳴る

炎が暴れ、影が裂き、風が暴走する。

仲間同士の衝突。

だが、そこだけは違った。

ハルトとAI。

互いに、互いしか見ていない。


《対象単一化》


静かな声。

その瞬間。

無数の光が集まる。

点ではない。

線でもない。

“面”。

空間を埋め尽くす光線。


《排除》


一斉に放たれる。

視界が白に染まる。

回避不能。

逃げ場なし。

だが。

ハルトは、止まらない。


ハルト「……ッ!!」


踏み込み、加速する。

光の間を“こじ開ける”。

掠める。

焼かれる。

それでも。

止まらない。


光線が追う。

軌道が変わる。

全方位から襲う。


《回避不可能》


ハルト「……チッ」


小さく舌打ち。

雷が身体に巻き付く。

無理やりに進む。


ハルト「はぁぁぁっ!!」


鎌を振り抜き、雷が光を切り裂く。

一瞬だけ、道が開く。

ハルトはそこに踏み込む。

そして、距離が縮まる。

AIが腕を上げる。

さらに光が集まり、密度が上がる。

今度は、“消滅”の光。


ハルト「はぁ……はぁ……」


止まらない。

もう、止まれない。

もう一度、踏み込む。

光が放たれる、その中へ。

身体が焼ても、肉が裂ても。

それでも。

止まらない。


ハルト「――ッ!!」


雷が爆発する。

一瞬、視界が黒くなる。

次の瞬間。

AIの懐にいた。


ハルト「あぁぁぁぁぁ!!!」


鎌の一点に、雷が集中する。

そして。

AIの一点に、雷を叩き込む。

一瞬だけ衝撃となる。


《――》


ノイズが発生。

AIが、わずかに後退する。

初めて、距離が生まれる。

だが。


《再構築完了》


光が再び集まる。

今度は。

さらに速く、さらに正確に。


ハルト「はぁぁ……」


息が荒い。

身体も限界。

だが。

目だけは、死んでいない。

雷が再び集まる。

怒りと殺意が混ざる。


ハルト「……っ」


その背後では仲間たちが、まだ壊れている。

だが。

ハルトは振り向かない。

ただ、目の前の敵だけを見ている。

この戦いはもう、“全員のため”じゃない。

“たった一人の怒り”。

そして。

“たった一つの決着”。


《あなたはここで終わりです》


AIの光線が、再び収束する。

無数に広がる白い光。

さっきよりも速く、正確に。


《排除》


逃げ場は、もうない。

だが。

ハルトは動かない。

一歩も。

ただ、立つ。

そして。

雷を――解放する。


ハルト『……もう、いいか』


心の中で、深く、静かに。

その瞬間。

雷が爆ぜた。

制御はしない。

いや、“できない”。

今までは、仲間に当てないように。

威力を抑えていた。

範囲を絞っていた。

それが、誰も知らないハルトの優しさだった。

だが。

それを今、全部捨てる。


ハルト『全て、ぶっぱなす!!』


AIを倒すため。

アイラのため。

そして――ノアのために。


戦場全域へ、雷が広がる。

空間を埋め尽くすように。

AIの光線さえも、飲み込む。

だがその雷は、AIだけじゃない。

仲間にも当たる。


ラウル「……ぐぁっ!?」


クロウ「……くっ……!」


ガルド「くそ……何しやがる……!」


ミナ「……っ……!」


全員が雷に包まれる攻撃。

のはずだった。

違う。

雷に、何かが混ざっている。

温かく、優しい。

“音”のような何か。

あの姿が、脳裏に浮かぶ。

あの時の離れる直前。

ハルトに触れた瞬間。

ノアの能力:共鳴調律(レゾナンス・チューン)

“質を変える力”。

それが――共鳴していた。

そして今。

それが広がる。

一人から、全員と。


ラウル「……!?」


白炎が揺れる。

まだ消えてない。

だが。

その中に、“意思”が戻る。


ラウル「これは……あいつの……」


拳を止める。

無理やり。

歯を食いしばって。


クロウ「……なるほどな」


影が収縮する。

広がりすぎていた存在が、一点に戻る。


クロウ「よく分からねぇが、あいつのおかげで助かったのか」


目が戻る。

完全な冷静な目。


クロウ「ったく、世話かけちまったな。おいラウル、止めるぞ」


ラウル「ちっ、わかってる」


戦闘から、自ら降りる。


重たい衝突音。

ガルドとバルク。

ギリギリで、拳が止まる。

ぶつかる寸前で。


ガルド「……っ……」


腕が震える。


バルク「……グ……ァ……」


獣のような息。

だが。

その奥で、理性が顔を出す。


ガルド「……やめだ」


バルク「……ふっ、続きは後でな」


二人同時に、拳を下ろす。

地面が静まる。


ミナ「……み……見える」


風が整う。

バラバラだった未来が、一本に繋がる。


ミナ「……ハルトくん」


その名前を呼んだ瞬間。

風が優しくなる。

完全に、戻る。


ユリカ「はぁ……はぁ……」


干渉が安定する。

そして、収束し始める。


ユリカ「……戻った」


自分でやっと理解する。


リン「……あ、れ……」


転移が止まる。

ズレてない。

初めて、安定する。


リン「よかったぁ……」


安心し座り込む。


トア「……ノイズが……消えた……」


世界の情報が、静かになる。

少しずつ整理される。


トア「やっと……終わった……」


そして。


レイ「……あれ……ログが……」


正常に戻る。

過剰な情報が消える。

そして、何かを察する。


レイ「……ハルトと、ノア?」


曖昧のまま、完全に復帰する。


ケイル「……はぁ……」


雷が抜ける。

静かになる。


ケイル「あれ……僕、何してたんだ?」


カイ「ちっ……」


速度が落ちる。

次第に止まっていく。


カイ「だめだ、思い出せねぇ……」


ゼイン「でもなぜか、温かいな」


毒が消える。

そして、静かに笑う。


エルマ「ほんとだ。ちょっと心地いいかも」


歪みが消える。

正常な時間の流れへと戻る。


ブラン「なんだか……急に疲れてきたな」


身体には何回も攻撃を喰らった跡。

それでも、思い出せない。


ブラン「まぁ、いいか」


最後に――ソラ。

まだ立っている。

コインを握ったまま。

だが。

手が震える。


カラン


コインが静かに落ちる。


ソラ「……ハルト」


静かに、名前を呼ぶ。

瞳が戻る。


ソラ「助かったよ」


ソラは、分かっていた。


ソラ「ありがとう、相棒」


完全に戦場が止まる。


《異常検知》


初めて。

声にノイズが混じる。


《想定外》


ハルトの雷は、攻撃じゃない。

“人間性の伝播”。

AIの思想を、真っ向から否定するもの。

そして。

全員が戻ってきた。


フィオ「みんな……」


セラ「戻ってきた……」


だが。

そこに、アイラの姿はない。


ラウル「待て……アイラのやつはどこだ!?」


一瞬の静寂。

全員が気づく。

その“空白”に。


フィオ「……っ」


セラ「……アイラは……」


言葉が続かない。

空気が重く沈む。

誰もが――理解してしまった。


ハルト「アイラ……アイラは!!」


その声だけが、裂ける。

ハルトは立っている。

だが、その内側で何かが崩れていく。

雷が強くなる。


ハルト「あいつが……!!」


視線の先。

ただ一つ――AI。


ハルト「あいつのせいでッ!!!」


怒りが噴き出す。

雷が膨れ上がる。

空間を埋め尽くすほどに。

止まらない。

止められない。

だが。


ハルト「……っ!!」


歯を食いしばる。


ハルト「……だめだ……!!」


拳が震える。


ハルト「こんな……やり方じゃ……」


暴走はしない。

したくない。

ゆっくりと。

だが確かに。

雷が収まっていく。


ハルト「……っ……」


息を吐く。

そして。

ハルトは、正気へと戻る。


ハルト「みんな!!聞いてくれ!!」


全員が振り向く。

その表情には、まだ消えない悲しみが残っていた。


ハルト「今のAIは、今までとは違う!」


一歩、踏み出す。


ハルト「あいつのビームは、急所を狙われたら終わりだ!」


拳を握る。


ハルト「全員で攻めたら……必ず誰かがやられる!」


一瞬、言葉が詰まる。

それでも、続ける。


ハルト「だから――」


鎌を強く握る。

そして、静かに。


ハルト「俺一人でやらせてくれ」


その言葉には。

怒りも、悲しみも。

すべてが込められていた。


ミナ「でも!それじゃハルトくんが!」


ハルトはミナを見る。

今までで一番、優しい目で。


ハルト「もう誰も……目の前で死なせたくないんだ」


その言葉は、願いだった。

祈りに近い決意。


ハルト「だから……頼む」


短く、それだけ。

そして。

返事を待たずに。


ハルト「セラ!フィオ!みんなを守ってくれ!絶対にだ!!」


二人は言葉を失う。

守りたい気持ちと、止めたい気持ちがぶつかる。


ハルト「大丈夫だ」


小さく、しかしはっきりと。


ハルト「任せてくれ」


その顔は――笑顔だった。

安心させるための。

信じさせるための。

そして――覚悟を隠すための。


ハルトはもう動き出していた。

AIへと、一歩。


ハルト『もう誰も……傷つけさせない』


静かに。

だが、確かに。

覚悟は――決まっていた。



その時。


???「お前だけが、そう思ってるわけじゃねぇよ」


肩に、手が乗る。

やけに軽い声。

そして――熱い気配。


ラウル「俺も行くぜ」


ラウルだ。

いつもよりも、眼差しが熱い。

だがどこか、静かだった。


ハルト「おい戻れ!もう死なせたくねぇんだよ!!」


強く叫ぶ。

それでも。

ラウルは――笑っていた。


ラウル「俺だって同じだ」


一歩、前に出る。


ラウル「俺と渡り合える最高のライバルが、ここで消えられちゃ困る」


そして、少しだけ声を落とす。


ラウル「それにな――」


その声は、どこか優しかった。


ラウル「全員、お前を死なせたくないって本気で思ってる。アイラも……ノアもな」


???「そうだぞ、ハルト」


気づけば、隣にクロウ。


クロウ「自分だけ犠牲になればいいって、顔でバレバレだ」


肩をすくめるように。

だが、その目は真っ直ぐだった。


クロウ「それに――」


わずかに、笑う。


クロウ「お前には借りが山ほどある。俺だけじゃない、全員がな」


ラウル「だから、今度は――」


クロウ「俺たちが――」


ラウル・クロウ「お前を助ける番だ」


自分を本気で助けたいと、そう思ってくれていた。

ただの言葉じゃない。

ただの仲間でもない。

“命を賭けてでも”――そういう覚悟だった。

そして初めて。

ハルトは――“守られる側”になった。


戦場の中心。

ハルトは静かに、涙を流した。


ハルト「……お前ら……」


言葉が少しだけ詰まる。

それでも、無理やり飲み込むように。

そっと、涙を拭く。


ハルト「……ありがとう」


短い言葉。

それだけで十分だった。

今までにない。

3人の、確かな絆。


クロウ「だが、戦いの邪魔だけはさせねぇからな」


ラウル「そうだぞ!俺たちにも本気でやらせろよな!」


変わらない口調。

変わらない強さ。

けれど、その奥にあるものは――さっきまでとは違う。


ハルト「……はっ」


小さく笑う。


ハルト「言われなくても、分かってるよ」


鎌を握り直す。

雷が、静かに集まる。

ラウルは炎を滾らせ、クロウは影を沈める。

同時に構える。

もう、言葉はいらない。

視線だけで伝わる。

これが――最後の共闘だ。

To be continued…

第31話 三極衝突

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