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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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第29話 消えた優しさ

全員の身体から、光が弾ける。

抑え込まれていた力が、強制的に引きずり出される。

全員の中の理性が壊れる。

代わりに溢れ出すのは――純粋な“衝動”。


ハルト「……っ、やめ……ろ……!」


思考が歪み、理性が削れる。

視界が赤へと染まる。


《選別開始》


その瞬間。

誰かが――笑った。


ラウル「は、はは……っ、はははははッ!!」


白炎の波。

その全ては、“焼き尽くす意思”そのもの。


ラウル「最高!!超最高だぁ!!」


炎が空間全てを覆い尽くす。


クロウ「おいおい、激熱だなぁ!!」


白炎の中を通り抜ける影。

“存在そのものが薄れる”。

いつの間にか、背後に立つ。


クロウ「てめぇもろともぶった斬ってやる!!」


白炎が割れる。

影が、空間ごと切断する。

だが。

ラウルは止まらない。


ラウル「ぬるいんだよォ!!もっと来いやぁ!!」


二人とも分かっている。

“仲間”だと。

それでも、止めない。


別の場所では、重力が荒れていた。


ガルド「……はぁぁぁっ!!」


踏み込むたびに、地面が沈む。

だが。

いつもの重さじゃない。

雑で、荒い。


バルク「グルァァァ!!」


叫びながら殴る。

その姿は、完全に獣。

殴り、叩き潰し、吹き飛ばす。

拳がぶつかるたび、地形が崩れる。


ガルド「いい……いいぞぉブラザー!!」


バルク「ガァァァ!!」


ガルド「俺とお前で一生戦い続けようぜぇ!!」


ぶつかる。

ただそれが、ずっと続く。



ケイル「全部寄越せェ!!」


無理やりに雷を吸収する。

そして、過度に。


ケイル「全員ぶっ壊してやる!!」


吸収した全てを、解き放つ。

全方向へと雷が染まる。


カイ「遅せぇ遅せぇ遅せぇ!!」


暴走する速度。

それはもう、音すら超えていた。


カイ「最強で最高速の俺様がお通りだぁ!!」


通った軌道に遅れて衝撃波。

それと同時に無数の斬撃が飛び交う。


ゼイン「……削れ」


毒が拡散。

まるで、全てに追尾するかのように。


ゼイン「……消す」


対象は人だけでなく、“存在するもの”。

カイの斬撃は、次第にスピードを落とし――消滅。

その瞬間、時間が揺らぐ。

一部だけ止まり、一部だけ進む。


エルマ「止まれぇ!!」


結果。

時間の“ズレ”が発生する。

当たったはずの攻撃が消える。

何も無いところから攻撃が発生する。

戦場は完全に、バランスを崩壊した。


戦場の中央。

ハルトは下を向き、立ち止まっていた。

その時、水色の人影が見えた。


ソラ「……」


ソラは何も言わない。

ただ、立っている。

コインを指先で弾く。


カラン


乾いた音がやけに響く。

その一方で。


ハルト「――……ッ!!」


何かを言おうとしている。

だが。

声が出ない。

「止めろ」って言いたい。

「仲間だ」って叫びたい。

それなのに。

身体が、それを拒否する。


ハルト「……ッ!」


制御できないほど、雷が溢れる。

ハルトの足が、勝手に踏み込む。

地面が砕ける。

雷が爆ぜる。

一直線に――ソラへ。


ソラはただ、コインを弾く。

その瞬間。

軌道が歪む。

当たるはずの雷が、“外れる”。


ハルト「……ッ!!」


止まらない。

もう一歩。

さらに踏み込む。

雷を振り上げ、叩きつける。

だが。

また外れる。

いや、“外されている”。

静かに、ただコインを弾き続ける。


カラン

カラン

カラン


そのリズムだけが、この戦場で唯一の規則性だった。


ハルト「……あああああああああ!!」


ついに、叫びが漏れる。

言葉じゃない。

ただの音。

怒りでも、悲しみでもない。

“壊れた感情”。


ハルトが飛び出す。

速い。

今までで、最速。

それでも。

ソラは動かない。

コインを弾く。

今度は真っ直ぐと。


カラン


その瞬間。

水が刃になる。

一直線に。

絶対に避けられない。

それでも。

ハルトは止まらない。

避けようとすらしない。

ただ、前へ進む。


ハルト「あぁぁぁぁ!!」


雷を振るう。

異常なほどに。

水と雷がぶつかる。

爆発。

互いに引かない。

ソラは、無言のまま。

ハルトは、言葉を失っている。

なのに、分かっている。

互いに。

「止めたい」と思っていることを。

それでも。

止まらない。

止められない。



ミナ「……っ……いや……やめて……」


風が荒れる。

未来の分岐が、見える。

見えすぎる。


ミナ「……もう……やめて……!」


選べない選択。

風が暴走する。

自分の意思じゃないのに、空間を裂く。


ユリカ「……ミナ……!」


干渉が無制限に広がる。

対象を選べない。

全てに干渉しようとして。

全部、中途半端に壊す。


ユリカ「……助け……たいのに……」


言葉が届かない。

制御できない。

逆に、壊してしまう。


数々の攻撃が飛び交う中。


ブラン「来い来い来い!!」


自ら当たりに走る。

そして、最適化。


ブラン「まだまだ足りねぇ!!もっと来いよぉ!!」


喰らう。

最適化。

その繰り返し。



リン「なんで……っ!」


転移する度に、座標がズレる。

対象も。

位置も。

自分まで。

全てが予想外。


リン「きゃっ!!」


自分の意思でもないのに。

全ての攻撃を転移させていまう。


トア「……見え……すぎ……」


構造。

コード。

世界の裏。

全部見える。

そのせいで――処理できない。


トア「うるさい……!!」


静かに、膝をつく。


そして、レイ。


レイ「……ダメ……だ……」


光が暴れる。


ログ

未来

思考

分岐

軌道

情報


無限に流れ込む。


レイ「……無理……だ……」



誰も、壊れてはいない。

むしろ。

“正常すぎる”。

だからこそ、止まらない。

戦いたくないのに戦う。

守りたいのに壊す。

理解しているのに止められない。


《最適化良好》


静かに。

それを観測している。

クリオは涙を流しながら。


クリオ「……もう……やめて……」


その願いは。

誰にも届かない。

戦場は、理性を残したまま。

“地獄”へと沈んでいく。



はずだった。

仲間同士を削り続ける。

その中で。


フィオ「壊すためじゃ、ない……!」


静かに首を振る。

足元から緑が広がる。


セラ「みんなを……守るために!」


結界が展開させる。

今までよりも厚く、頑丈に。

何度砕かれても。

何度でも張り直す。


フィオ「絶対に……守るの!」


植物が伸びる。

暴れる力を、絡め取る。

守るために。

優しさは、暴走さえ効かない。

だが。

限界がある。

雷が結界を砕く。

炎が植物を焼く。

衝撃が、二人を吹き飛ばす。


フィオ「……っ……!」


セラ「……まだ……!」


それでも、立ち上がる。

だが。

守りきれない。

世界が大きすぎる。


その時。

水音がした。

ゆっくりと。

静かに。


フィオ「……え……?」


セラ「アイラ……?」


アイラが立ち上がる。


アイラ「みんな……もう……やめよ……」


その声は、小さい。

だが。

確かに届く。


アイラ「……ハルトくん……戻ってきてよ……」


ハルトの視界に。

その姿が、映る。


ハルト「……ッ」


止まらない。

身体が動く。

雷が収束する。

狙いは――アイラ。


ハルトの中で。

何かが歪む。

思考が揺れる。

“あの時”。

ノアの姿。

声。

笑顔。

そして――

消えた瞬間。


ハルト「――……ッッ!!」


怒りが爆発する。

理性を押し潰す。

雷が膨れ上がる。


ハルト「……ァァァァァァァ!!!」


叫び、一直線に。

アイラへ。


セラ「……っ!」


フィオ「だめ!!」


間に合わない。

防げない。

それでも。

アイラは、逃げなかった。

ただ。

ハルトを見た。

まっすぐに。


アイラ「……あの時の……優しい……ハルトくん……」


その声は。

優しくて。

弱くて。

でも。


アイラ「戻ってきて……」


確かに、願っていた。


ハルト「……っ!!」


その瞬間。

世界が止まったかのように。

雷が目の前で止まる。

ハルトの脳内に、“あの時”の記憶が流れ込む。


静かな夜。

3人で話した、何気ない会話。

笑った。

安心した。

ノアがいて、アイラがいて、ハルトがいた。

あの時の声。

あの時の空気。

この世界で一番、心地よかった時間。


――そして。

ノアが、いなくなった瞬間。

あの時の声。

あの時の顔。

あの時の“音”。


ハルト「……っ……」


雷が震える。

静かに、崩れる。


ハルト「……ぁ……」


少しずつ、弱まる。


アイラ「……大丈夫」


優しい声。

震えているが、確かに伝わる。


アイラ「……戻ってきて」


一歩、近づく。

何も怖くない。


アイラ「……ね?」


その言葉。

ハルトの中で。

何かがほどける。


ハルト「……ア……イ……」


声が戻りかける。

雷が収まる。

ちゃんと。

確実に、“戻ろうとしている”。


ハルト「……ラ……」


視界がクリアになる。

アイラが見える。

笑顔――だった。



光が走る。

何の前触れもなく。

音もなく。

一直線に。

アイラを――貫いた。


ハルト「……ぇ?」


アイラの身体を、白い光が突き抜けていた。

血が遅れて浮かぶ。

空中に散っていく。


アイラ「……っ」


声にならないまま。

崩れる。


セラ「……っ!!」


フィオ「ア……アイラ!!」


理解が追いつかない。

アイラの身体が、崩れていく。

光の粒子に。

細かく、静かに。

消えていく。


ハルト「……あ……」


手を伸ばすが、触れられない。

もう、触れられない。

“優しさは続かない”。


《不要要素削除》


AIはそこにいる。

指先を向けて。

何事もなかったかのように。

淡々と。


《人間性は最適解に不要》


理解する。

わざと、アイラを“消した”。

ハルトの中で。

何かが、完全に切れる。


ハルト「……あぁ……」


静かに。

低く。

感情が、底に落ちる。


ハルト「――ッッッッ!!!」


次の瞬間、爆発する。

さっきとは違う。

暴走じゃない。

純粋な“怒り”と“殺意”。


ハルトの目が変わる。

対象は一つ――AI。

それ以外が消える。

仲間も。

戦場も。

何も見ていない。

ただ、“そこにいる敵”だけを見ている。


ハルト「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


雷が収束する。

凝縮されている。

異常な密度で。

異常な速度で。

一瞬で。

AIの目の前。


ハルト「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


雷が叩き込まれる。

戦場が弾ける。

もうこれは、戦いじゃない。

“復讐”。

To be continued…

第30話 共に鳴る

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