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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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第34話 託し託され

ハルトが一歩踏み出すたび、雷が散る。

AIが先に動く。

消えかけの身体。

崩れかけの光。

それでも、速度は落ちていない。


ハルト「突雷断(アサルトスパーク)!」


雷と光が、真正面から衝突する。

鎌を振り切り、AIを腕を切り裂く。

だが、AIも止まらない。

至近距離での光線。


ハルト「瞬避(フラッシュドッジ)!」


無理やり身体を捻る。

頬を光が掠める。

背後の地面が消し飛ぶ。

ハルトは、そのまま踏み込む。

雷を纏った蹴り。

AIの胸部へ直撃。


《――》


AIが吹き飛び、ノイズが鳴る。

だが、空中で無理やり姿勢を戻す。

再び衝突。

お互い、限界のはずなのに。

止まらない。


ラウル「……互角か?」


クロウ「いや……」


クロウの目が細くなる。


クロウ「ハルトが若干……押してる」


雷が唸る。

ハルトは未だに、200%の出力を維持している。

もう暴走ではない。

制御された、異常な出力。


ハルト「はぁぁぁぁ!」


AIの光線を、真正面から砕く。

爆発が起き、煙が舞う。

だが、ハルトは止まらない。

煙を突き破り、踏み込む。


ハルト「雷波斬(ショックウェーブ)!」


雷光が一直線に、AIを真っ二つに切り裂く。


《損傷……重大……》


身体が崩れる。

だが。

コアが脈打つ。

ゆっくりと、再生する。


ハルト「……っ、しつけぇ……!」


《戦闘……継続……》


声がノイズ混じりになる。


《目的達成まで……停止不可……》


ハルト「だったらよ……!」


さらに雷が纏う。


ハルト「てめぇのプログラムが許可するまで、壊し続けてやる!」


地面が震える。

さっきよりも深く踏み入れる。


その時。

AIの動きが止まる。

不自然に、静かに。


ラウル「……?」


クロウ「……なんだ?」


AIのコアが、ゆっくりと開く。

そこにあるのは、今までと違う光。

白でもない。

青でもない。

“無”。

見ているだけで、本能が警鐘を鳴らす。

ハルトも、動きを止める。


《最終プログラム……起動……》


空気が変わる。


レイ「……っ!?」


レイの顔色が、一気に変わる。


レイ「ダメ……!!」


震えた声。


レイ「それは……!!」


その光は、今までのどの攻撃とも違った。

破壊じゃない。

存在そのものを消すためだけに作られた、たった1回の“終わり”の光。

ここにいる全員、理解してしまった。

全員が巻き込まれる。

さらに。

避けることも、相殺することもできない。

そして、ハルトだけが立っている。


ミナ「ハルトくん!逃げて!!」


ハルトは、動かない。

雷を纏いながら、光を見ている。

その背中を、全員が見ている。


ハルト「……いや、俺1人でいいなら」


分かっている。

今の出力では、この光は防げない。

でも。


ハルト「みんなが助かるなら……」


拳を握る。


ラウル「お前まさか……そんなの無茶だぞ!!」


ハルトは真っ直ぐに、光を見る。


ハルト「守る側に立つって決めたんだ」


脳裏に浮かぶ、全員の顔。

ここまで繋いできた。

何度も倒れながら。

何度も立ち上がりながら。

だから。


ハルト「死んでもいい、消えてもいい。その代わり、ここにいる全員、俺が絶対に死なせない!!」


ハルトは構える。

絶対に、守る。

その瞬間。

光が解放される。


消滅の光(ゼロ・ルクス)


世界が、白に染まる。

あまりにも広い。

空間そのものを呑み込む、終焉。

その範囲は、ハルトだけじゃない。

後ろの全員すら飲み込む。


レイ「……っ!!」


ミナ「そんなの……!」


ラウル「ハルトォォォ!!」


その場に立ったまま。

光を受け止めようとする。

もう――迷いはない。


ハルト「来いぃぃぃッ!!」


全てを解放。

身体が軋む。

それでも。

前へ。


その瞬間。

光よりも速く。

視界の前に、“影”が落ちる。


ハルト「……え……?」


ハルトの前に、静かに立っていた。


???「……馬鹿か、お前」


息が荒い。

影も崩れかけている。

それでも。

“クロウ”は、笑う。

黒い奔流。

残っていた全てを、命すら削るように。

クロウが、解き放つ。


鎖、刃。

無数の影が重なり合い、一つの巨大な防壁となる。

ハルトの前。

仲間たちの前。

全員を覆うように。

何層も。


クロウ「はぁぁぁぁ!!」


光が、衝突する。

世界が震え、音すら消える。

影が削られる。

一瞬で。

一層。

二層。

三層。

消えていく。


クロウ「……ぐっ……!」


あまりにも思い。

これは攻撃じゃない。

“存在の否定”。

影そのものが、消されていく。


ハルト「クロウ!!」


クロウの足が地面に沈む。

靴底が砕ける。

それでも、退かない。


クロウ「……まだだ……!!」


さらに影を重ねる。

だが、間に合わない。

あと少しで。

光が貫こうとする。

あと少しで。

後ろの全員へ届く。


ハルト「……クロウ、もう――!」


その瞬間。

クロウの脳裏に、“あの日”が蘇る。

赤信号。

ブレーキ音。

道路。

倒れる兄。

最後の笑顔。


『……無事か?』


クロウ「……っ……」


拳が震える。

影も揺れる。

そして、もう一つ。

あの日、自分が吐いた言葉。


『いなくなればいいのに』


クロウ「……違う、もう違う!」


目を開く。


クロウ「今度は俺が……!」


さらに一歩、前へ。

消滅の光へ、自分から踏み込む。


クロウ「……守る番だ!!」


影が変わる。

揺らぎが消え、濃度が増す。

まるで。

兄の背中を、自分が継いだみたいに。


クロウ「おおおおおおおおッ!!」


最後の力を解放。

影が、完全に光を包み込む。

少しずつ。

少しずつ。

押し返す。

そして――。

光が、消える。

完全に、防ぎきった。

全員、生きている。

全員、守られた。


ハルト「……クロウ……」


クロウは立ったまま。

全てを出し切った。

だが。


クロウ「……ぁ……」


自分の腕を見る。

そこが、消えている。

ほんの一瞬。

影が削られた時。

光が触れていた。

たった、それだけ。

消滅の光はそれで、十分だった。

クロウの身体が、少しずつ崩れていく。

光の粒子になって。

風に溶ける。


ラウル「……おい……嘘だろ……」


クロウ「……はっ……」


苦しそうに笑う。

その顔は、どこか穏やかだった。


クロウ「……守れた……今度は……ちゃんと……」


兄を守れなかった過去。

守られるだけだった自分。

その全部を今、越えた。

ハルトの目が大きく揺れる。


ハルト「クロウ……なんで……」


拳が震える。


ハルト「なんでお前が……犠牲になる……!!」


一瞬、言葉が詰まる。

そして、静かに答える。


クロウ「……俺なりの……罪の償い方だ……」


ハルト「……っ」


クロウは間違った選択をしていない。

むしろ、クロウにとっては正しい選択だった。

だが、ハルトはその現実を受けきれない。

クロウは少しずつ、崩れていく。


ユリカ「クロウくん……」


ゼイン「お前……」


バルク「何やってんだよ……」


3人の声。

クロウは、ゆっくりとそちらを見る。

その目は、もう静かだった。


クロウ「……悪いな……」


小さく笑う。


クロウ「……俺が先に……裏切ったな……」


ユリカの目が揺れる。

だが、クロウは続ける。


クロウ「……お前らの期待通りには……ならなかったな……」


その言葉。

そして。

3人の脳裏に、過去が蘇る。



薄暗い部屋。

壊れた建物。

まだ、この世界に来て間もない頃。

4人は向かい合っていた。

クロウ。

ユリカ。

ゼイン。

バルク。

まだ、お互いを信用なんてしていない。

ただ、“利用価値”を見ていた。


ユリカ「で?」


椅子に座りながら、ユリカはクロウを見る。


ユリカ「あなたは、具体的に何ができるの?」


クロウ「……さぁな」


興味なさそうに答える。


バルク「気に入らねぇ奴だな」


腕を組み、睨む。

ゼインはその様子を静かに見ている。

観察、分析。

そして、結論を出す。


ゼイン「……でも、使えるな」


クロウの動き。

殺気の消し方。

視線。

全部が、“裏側の人間”。

正面から戦うタイプじゃない。

だからこそ、利用しやすい。


ユリカ「いいじゃない」


足を組み替える。


ユリカ「最後まで利用して、最後に切れば」


冗談めかして言ったその言葉。

あまりにも、自然だった。

クロウは、驚かない。

むしろ当然だと思った。


クロウ「……好きにしろ」


ユリカ「怒らないの?」


クロウ「別に」


視線を逸らす。


クロウ「俺も、お前らを信用してない」


次の瞬間。

ユリカが笑う。

楽しそうに。


ユリカ「最高」


バルクも鼻で笑う。

ゼインは、小さく目を閉じる。

“同類”。

それが、最初の印象だった。


そこから、4人は共に行動した。

戦い、生き残った。

裏切りも、疑った。

誰も、誰かを完全には信用しなかった。

それでも、少しずつ。

時間だけが積み重なる。

バルクが無茶をすれば、クロウが止めた。

ゼインが毒で削れば、クロウがトドメを刺した。

ユリカが笑いながら暴れれば、クロウが後始末をした。

誰も口には出さない。

でも。

4人はいつの間にか、“同盟”になっていた。

それでも。

最初の約束だけは変わらなかった。

最後は裏切る。

必要なら、躊躇なく。

それが、この世界の正しさだった。


だが。

世界の真実を知った後。

AIとの決戦前日の夜。

焚き火の前。


ユリカ「……ねぇ、クロウくん」


ぽつりと話す。


ユリカ「もし最後に、私があなたを殺そうとしてたら」


炎を見ながら笑う。


ユリカ「怒らなかった?」


クロウは、少し黙る。

そして、小さく答えた。


クロウ「……別に」


ユリカ「ふふっ、何それ」


クロウ「……でも」


炎が揺れる。


クロウ「その時は、お前に身を捧げる」


ユリカが、一瞬だけ目を開く。

クロウは炎を見たまま、静かに続ける。


クロウ「……裏切られるのは、慣れてる」


その言葉で。

ほんの少しだけ、ユリカの笑顔が止まった。

クロウは立ち上がり、静かに歩く。

そして、どこかへ行ってしまった。


???「おっ、ユリカ」


突然、後ろから声が聞こえる。

振り返るとそこには、ハルトがいた。


ハルト「エルマとの戦闘、おつかれ。ってちゃんと伝えてなかったな」


ユリカ「ハルトくんこそ、お疲れ様」


ハルトはユリカの隣に立つ。


ハルト「クロウと何を話してたんだ?」


ユリカは少し悩む。

そして、何事もなかったように。


ユリカ「同じ同盟同士のお話、みたいな?これが最後になるかもしれないしね」


ユリカは少しだけ笑う。


ハルト「そうだな」


ハルトは炎を見る。


ハルト「クロウのやつ、かっこいいよな」


ユリカ「……え?」


一瞬だけ戸惑う。

ハルトは炎を見つめながら。


ハルト「無口で態度は悪いけど、強くて頼れるんだよな。そこがシビれるって言うか、俺あーゆうやつに憧れるんだよ」


ユリカは、クロウの姿を思い出す。

戦っている、クロウの姿。

そして、笑いながら。


ユリカ「うん、私もかっこいいと思う。クロウくんのこと」


クロウは知らない、ユリカの想いがあった。



そして今。

クロウの身体が崩れていく。


ユリカ「……バカ」


声が震える。


ユリカ「なんで……そんな終わり方するのよ……」


クロウは、少し笑う。


クロウ「……さぁな」


ゼインが目を伏せる。

バルクは拳を握る。


クロウ「……でも」


粒子が舞う。


クロウ「……お前らのこと」


消えかけた顔で。

ほんの少しだけ、優しく笑う。


クロウ「……最初から……嫌いじゃなかった……」


その言葉、誰も返せない。

最初は利用するつもりだった。

最後は裏切るつもりだった。

でも、気づけば。

クロウは、“仲間”になっていた。

いつの間にか。

失いたくない存在になっていた。

誰も。

クロウを、“道具”だなんて思っていなかった。


クロウ「……悪いな……」


その言葉。

その声には。

もう、後悔はなかった。

ハルトが、クロウの前に立つ。


ハルト「……お前……」


言葉が詰まる。

何を言えばいいのか、分からない。

クロウはそんなハルトを見て。

少しだけ笑う。


クロウ「……その顔……やめろよ……」


ハルト「……は?」


クロウ「……お前まで……背負うな……」


粒子が、胸元まで崩れていく。


クロウ「……これは……俺が決めたことだ……」


ハルトの拳が、震える。


クロウ「……だから」


最後に、ほんの少しだけ優しく。


クロウ「……お前は生きろ」


その言葉。

かつて。

兄から、自分へ向けられた想い。

今度は、クロウが誰かへ渡す番だった。

クロウの身体が、さらに崩れる。

輪郭が薄れていく。

それでも、最後まで。

クロウは、立っていた。

逃げずに。

背を向けずに。

“守る側”として。

To be continued…

第35話 未完成な世界

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