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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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第26話 役に立てる

確率が歪む。

空間が揺らぐ。

見えない“分岐”が、無数に走る。


ソラとAI。

互いに“外れる行動”を選び続ける。

当たるはずの攻撃が外れ。

外れるはずの攻撃が当たる。

完全な拮抗。

だが。


《学習率上昇》


わずかに。

ほんのわずかに。

ソラの攻撃が“読まれる”。

コインの反射点。

水刃の出現位置。

わざと当たりに行き、その“未来”を潰す。


ソラ「……そろそろか」


AIが振りかぶる。

“外れる動き”。

だが。

その軌道が、“当たる”。

肩にかすめる。


ハルト「ソラ……!」


ソラは動じない。

ただ、コインを弾く。


だが。

AIが“先に”そこにいる。

初めて。

完全に、読まれる。


ソラ「……」


わずかな沈黙。

そして。

跳ね返るコインを掴む。


ソラ「……もう」


水が静かに沈む。

今まで広がっていた“確率の海”が。

一点へ、収束する。


レイ「これは……まずい……」


空間が軋む。

数値が消える。

0%も100%も、意味を失う。

ソラがゆっくりと構える。


ソラ「終わらせる」


コインを弾く。

今度は――真っ直ぐに。

その回転が、世界を切り裂く。


ソラ「絶対低確定(アブソリュート)因果反転(ロウ)


次の瞬間。

“結果だけが、先に存在する”。

AIの中心に――既に斬撃が入っている。


遅れて。

空間が裂ける。

全ての“ありえない可能性”が、同時に成立する。


0.0000001%


ありえない確率。

それが、強制的に“成功”へ固定される。


《……》


《損傷致命》


《機能停止――》


身体が崩れる。

光が消える。

静寂。


ハルト「……終わった……?」


誰も動かない。

ソラも、動かない。

コインが地面に落ちる。


カラン――


その音だけが響く。


《……否》


空気が凍る。


全員「……っ!?」


崩れたはずの中心。

そこが、“再構築”される。


《因果干渉》


《学習完了》


ソラの目が開く。


ソラ「……は?」


“結果を書き換えられた”。

ありえない。


AIが、動く。

いや。

“膨張する”。

ヒビが走る。

身体が歪む。


圧縮。

膨張。

再構築。


人の形を、維持できない。


ラウル「おいおいおい……嘘だろ……!」


地面が震える。

空間が悲鳴を上げる。


《段階移行》


《完全学習形態》


《解放》


光が爆ぜる。

その場にいた全員が、吹き飛ばされる。


重力が狂う。

空間がねじれる。

そして――それは立ち上がる。

人ではない。

構造でもない。

“存在そのもの”が巨大化した何か。


天井すら突き破る質量。

無数の光。

歪んだ輪郭。


ソラは落ちたコインを拾い上げる。

だが、その時。


ソラ「うっ……」


強烈な頭痛に襲われる。

因果に触れた代償として。


ハルト「ソラ!」


倒れ込むソラ。

すぐさま抱え込む。


ソラ「……ハ……ル……ト……」


ハルト「ソラ……ありがとう……」


抱えたまま、セラとフィオの元へ向かう。


ハルト「ソラも一緒に頼む」


セラ「うん!」


フィオ「任せて!」


2人はアイラとソラを結界と共に守る。

その時。


レイ「ハルト!」


振り向く。

そこには、巨大化したAIの姿も。


レイ「今のAIはもう完全に私たちを学習している!」


AIは深く脈打つ。


レイ「もう攻撃が通用しないかもしれない!」


空間が震える。


レイ「でも!」


ほんの僅かに息が止まる。


レイ「絶対に諦めないで!!」


その一言が、戦う意思となる。


AIが一歩踏み出す。

それだけで、衝撃。

質量。

出力。

存在。

全てが桁違い。


《最適殲滅開始》


ノイズ混じりの声。

同時に、腕が振り下ろされる。

空気が裂ける。

だが――回避。


ラウル「ははっ!巨大化した分動きが鈍くなってんなぁ!」


隙を見逃さない。

炎を撃ち込む。


ラウル「業炎爆砕(ヘルバースト)!!」


直撃。

そして、“効いている”。

装甲が焼ける。

肉が抉れる。


だが、その瞬間。

焼けた部分が、“その場で再生する”。


ラウル「くそっ……再生が速すぎる!」


レイが目を見開く。


レイ「違う……!“受けた瞬間から再生してる”……!」


トア「ダメージが“蓄積されてない”……!」


つまり。

どれだけ攻撃しても――削れない。


ガルド「なら叩き続けるだけだ!!」


バルク「砕けるまでなぁ!!」


二人が突っ込む。


ガルド「重力破砕(グラビティクラッシュ)!!」


バルク「流星打撃(リュウセイスマッシュ)!!」


直撃。

肉が砕ける音。

だが。

砕けた部分が、即座に繋がる。

まるで、“壊れていないかのように”。


ケイル「くっ……キリがない!」


エルマ「でも、止まるわけにいかないわよ!」


時間を遅延させる。


エルマ「時間擦過(タイムスクラッチ)!」


さらに。


ユリカ「思考侵入(マインドスリップ)!」


AIの動きがさらに鈍る。

一瞬にも過ぎない時間。

だが、それを見逃さない。


ハルト「今だ!合わせろ!!」


合図と同時に、全員が動く。


ケイル「交差奔流(クロスサージ)!」


カイ「絶空断界(ゼックウダンカイ)!!」


ゼイン「遅効侵蝕(ポイズンコード)!」


クロウ「影穿(シャドウピアス)!」


ハルト「突雷断(アサルトスパーク)!!」


全てが叩き込まれる連撃。

確かに“通っている”。

だが。

全部、消える。


レイ『このままじゃ“削り勝てない”……!』


その瞬間。

AIが腕を振る。

決して速くない攻撃。

だが。

“重い”。


ハルト「みんな!避けろ!!」


ギリギリ回避。

だが、その先には――衝撃波が。


ミナ「きゃっ!!」


レイ「ミナ!」


吹き飛ばされ、地面を転がる。


ミナ「……っ!」


息が詰まる。

だが、立ち上がる。


ミナ「まだ……!」


視界を繋ぐ。


ミナ「視覚共有(ヴィジョン・リンク)!」


全員の目が一つになる。

軌道が読める。

それでも、AIは止まらない。

力任せに振るう。

予測できても、“受けきれない二重の攻撃”。


バルク「ぐあっ……!」


ゼイン「くそっ……!」


一撃一撃が致命級。

再生される、押される。

それでも。

誰も引かない。


バルク「……まだだ……諦めてたまるか!!」


ガルド「そうだ!当たり前だ!!」


ラウル「ここで止まる理由なんてねぇ!!」


クロウ「絶対に……!」


ハルト「ここまで……全員で繋いできたんだ!!」


微かに残るノアの姿を脳裏に焼き尽くして。

その瞬間。

AIが動く。

“単純な踏み込み”。

だが。

一瞬で距離を詰める。

狙いは、ハルトでもソラでもない――ミナ。


ミナ「……!?」


目の前。

巨大な腕。

逃げ場はない。

ただ、その一撃が――振り下ろされる。


――


音が消える。

視界が揺れる。


ハルト「……ミナ?」


少し遅れて。

ミナが、地面に落ちる。

赤い血が広がる。

誰も、声を出せない。


ハルト「……ミナ……?」


動くことができない。

まだ微かに、息があった。


ハルト「……おい……ミナ……」


その目が、ゆっくりと開く。

ハルトを見つめる。

何かを言おうとして。

声にならない。

視界が、滲む。



決戦前日の夜。

静かな風。

焚き火の火が小さく揺れている。

周りには誰もいない。


ミナ「……ねぇ、ハルト」


少しだけ不安そうな声。


ハルト「ん?どうした?」


ミナは、火を見つめたまま。


ミナ「……私ってさ」


一度、言葉を切る。


ミナ「ちゃんと、役に立ててるのかな」


ハルトは、少しだけ驚いた顔をする。


ミナ「みんな、すごいじゃん。前に出て戦って……守って……倒して……」


視線を落とす。


ミナ「でも、私……」


少しだけ笑う。


ミナ「ただ見てるだけな気がしてさ」


その笑顔は、弱かった。


ミナ「視界を繋ぐだけで本当に必要なのかなって……」


ぎゅっと手を握る。


ミナ「いなくても、変わらないんじゃないかって……」


その言葉は、ほとんど消えそうだった。

少しの沈黙。

ハルトは、すぐに答えなかった。

ちゃんと伝えるために。

そして。


ハルト「……違う」


短く、はっきりと。

ミナが顔を上げる。

ハルトは、まっすぐ見ていた。


ハルト「ミナがいなかったら」


少しだけ笑う。


ハルト「俺、ここまで来れてない」


ミナ「……え?」


ハルト「敵の位置を全部見せたのも、危ないって教えてくれたのも、逃げるタイミングを作ってくれたのも」


一歩近づく。


ハルト「全部、ミナのおかげだろ」


ハルトは少しだけ笑う。


ハルト「俺さ」


空を見上げる。


ハルト「一人でやるの、最初から慣れると思ってた」


少しだけ、苦い顔。


ハルト「でも違った」


視線を戻す。


ハルト「ミナがいたから、ここまで来れた。ミナがいたから、“今の俺”がいる」


ミナの目に涙が溜まる。


ハルト「だから」


少しだけ、優しく。


ハルト「いなくていいなんて、絶対ない。むしろ――」


少しだけ照れながら。


ハルト「俺のそばにいてくれて、ありがとう」


ミナの頬を涙が伝う。

でも、笑う。

今までで一番自然に。


ミナ「……そっか」


小さく。

でも、確かに。


ミナ「よかった……」


少しだけ、間を置いて。


ミナ「……じゃあさ」


ハルトを見る。


ミナ「もっと、役に立てるように頑張るね」


その言葉は、弱さじゃない。

“覚悟”だった。


ハルトは少しだけ笑う。


ハルト「無理するなよ」


ミナ「ハルト君もね」


焚き火の光が二人を照らす。

その時間は静かで。

でも、確かに温かかった。


ミナ「……ハルト君、その……」


ラウル「おいハルト!見張り番交代だ!」


ハルト「あっ!もうそんな時間かよ」


静かに立ち上がる。


ハルト「じゃ、行ってくる」


ラウルの所へと歩く。

その背中を、ミナは見守っていた。


ミナ「ハルト君、ありがとう」




視界が戻る。

血の匂い。

崩れた戦場。

かすかに、ミナの口が動く。

AIの巨大な影。

ゆっくりと、腕を上げる。


ハルト「やめろ……やめろぉ!!」


誰も、間に合わない。

振り下ろされる腕。

それでも。

その目は、ハルトを見ている。

そして、かすかな声で。


ミナ「……役に……」


息が、途切れそうになる。

それでも。


ミナ「……立てた……かな」


風が止まる。

誰も、間に合わない。

To be continued…

第27話 指先の記憶

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