↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
World cuisine おいしい世界  作者: SAI
第二章
72/226

28.アーリアの街と調合料理

アーリアは森林公園のような雰囲気の街だ。街全体が森のようになっており、至る所に木が生えている。街の中心部には池があり、ここにいると外の砂漠を忘れてしまいそうになる。


「今日はここに泊ります。」


グショウ隊長は池のほとりにあるコテージを指さした。


「食事はライファさんとトトさんが作ってくれますので、厨房と屋根がある家ならいいかと思いまして。そうそう、部屋は一部屋にしました。大きな一部屋。変に別れるよりもみんなで一緒の方が安全かと。むさ苦しいでしょうが、ライファさんも我慢してくださいね。」


「はい、大丈夫です。」


私とトトはコテージに荷物を置くと食材を買いに出かけた。

目指すは街の市場だ。道行く人に市場の場所を聞けば、ここから500mほど歩いた先にあるらしい。思っていたよりも遠くないことにホッとした。


「ライファさん、お昼ご飯はどんなものにしますか?」


「そうですねぇ、疲労回復効果は欲しいですよね。あとは体を冷やす効果とか、水分補給とかですかね?ト

トさんはどう思います?」


「アーリアは砂漠とは言え夜は涼しくなるらしいので、体を冷やす効果は無くてもいいかもしれませんね。」


「そうなんですね。トトさんがいてくれて良かった。私ひとりじゃ知らないことばかりで。」


私が肩を竦めると、トトが、とんでもない!と首をふるふるさせた。


「私なんて足手まといで・・・。」


「そんなことないですよ。すごく助かっています。トトさんはしっかりしているから。」


私の言葉を聞いて、トトがホッとしたように微笑んだ。


「お役に立てているなら良かったです。」


市場に行くと屋根だけのテントがたくさんあり、その下に野菜、果物、木の実が置かれている。そして少し離れたところに檻があり、肉として生きたままの動物たちが売られていた。ベルは初めて見る食材に興味津々で、果物に顔を寄せては匂いを嗅いでいる。

私は市場を見ながらメニューを考えてゆく。ふと目に入ったのは、お店の隅に置かれていた細長いものだ。


これ、麺っぽい。


「これ、なんですか?」


「これはね、スーといってガラの実を潰して練って、細くしてから乾かしたものさ。茹でてつるっと食べるんだよ。昔からこの国にあって暑い日には最高なのさ。」


説明を聞けば聞くほど麺っぽい。私が悩んでいるとおばさんが少しだけ茹でてくれた。


これは・・・そうめんだ。この瞬間、今日のお昼のメニューが決まった。そうめんにする!


あとは食材だ。

夜の分も考えて、鳥を3羽購入する。その場を借りて血抜きをしている間に買い物を続けた。買い物が終わった時には血抜きが完了しているようにとトトに頼んで時短魔方陣を設置してもらう。


木の実売り場に行き、疲労回復効果のある食材を探す。調味料的な使い方が出来るものだといいなと思いながら探していると、回復効果2の木の実を見つけた。お店の人に味を聞いてみるも、首を傾げるだけだ。とりあえず購入してすこしだけ食べてみる。んー、これといって特徴のないモヤッとした味だ。熱に強いだろうか?この土地のことを考えると、熱には強そうだけど・・・。

それから、油と卵といくつか野菜と香辛料、翌朝用にパンも買った。肉屋に戻り血抜きが完了した鳥のうち、一羽に手早く下味をつけると、買ったものを全て持ってコテージに戻った。



コテージに戻ると、早速料理開始だ。

荷物番ということでお留守番していたリュンが興味津々で近づいてくる。


「何を作るんですか?」


その目が期待に揺れている。


「熱いから、つるっとして食べやすい物、だけどしっかりお腹にもたまるように、ガッツリしているものにする。」


「よくわからないけど、楽しみです。騎士団で旅に出て、食事が楽しみだなんて初めてです。」


リュンの期待に満ちた眼差しに見つめられながら手早く料理を始めた。

麺のタレを作って放置。トトには乾燥サワンヤを卸してもらう。卵と水と少しのお酢、サワンヤの粉をざっくり混ぜて野菜につけ、揚げていけば野菜の天ぷらのできあがり。疲労効果のある木の実はトトに揚げてもらう。やはり暑い国の木の実だからか熱に強く、油で揚げても効力が削がれることはなかった。揚げた木の実の効力をトトが一生懸命に測って、効果2あります!と嬉しそうに言った。最後に下味をつけた鶏肉に衣をつけて揚げ、スーを茹でれば、天ぷらとそうめんの出来上がりだ。

一人前ずつ盛って、テーブルに並べ皆を呼んだ。


「「「おぉっ!!」」」


肉体派メンバー(グショウ隊長、ダン、ジョン)が同時に声を上げる。


「これは、美味しそうですね。」


キースも驚いたように微笑んだ。クオン王子は無表情にしか見えない。


「揚げた野菜とお肉はスーのタレにつけて食べてくださいね。」


「いただきます。」


皆が手を合わせる姿を見ながら、全ての食事の効力をスキルで確認した。盛り方で効力に差が出るかもしれないからだ。最初に食事に手をつけたのはキースだ。クオン王子のお皿の食べ物をほんの少しずつかじり、なるべく見た目を損なわないように注意しながら食す。


「大丈夫です。」


キースに言われてクオン王子がそうめんに手をつけた。


「これは・・・初めて食べる味だ。さっぱりとしていて食べやすいな。」


王子のその言葉を聞き、他の皆が一斉に食べ始めた。

うまい!と一言だけ叫んでから黙々とがっつくジョン、グショウ隊長は育ちが良いのか箸の持ち方も綺麗な優雅な食べ方だ。リュイはハムハムしているし、ダンは一口食べた後、おかわりはあるか?と聞いてきた。トトも食べやすくて美味しですね、と目を輝かせている。この中ではトトが一番、そうめんの有り難さを感じていることだろう。ベルは一番トトを一番やさしい人と認識したようで、トトの側に行っては食べ物をおねだりしていた。

キースもそうめんを食べ、同意するように頷く。


「この揚げてある野菜が絶品です。これは何という料理なのですか?」


私は少し悩んだが、誰も知らないのだからいいか、と夢の中の名前をそのまま教えた。


「天ぷらです。サクサクの衣が美味しいでしょう?」


私はキースに対して言ったつもりだったが、全員が頷いた。クオン王子もだ。

その姿に思わず笑みがこぼれた。


「なんだか疲労感がなくなった気がしますね。美味しさに心を奪われてすっかり忘れていたのですが、これが調合料理なんですか?」


グショウ隊長の言葉にリュンもハッとしたようにこちらを見た。


「はい、疲労回復効果が2あります。美味しくて役立つ、それが調合料理ですから!」


私はトトと顔を見合わせてドヤ顔をした。


「ほぅ、これはいいな。」


クオン王子がポソッと呟く。


「他にも調合料理はあるのか?どんな効果だ?」


興味津々のようだ。話していいのだろうか、クオン王子は他国の人間だ。トトの顔を見ると、ぎゅっと口を噤んでいる。


「そうか、お前たちは研究所の人間だったな。大事な研究内容をそうやすやすとは話せないか。まぁ、いい。」


クオン王子がすんなり退いてくれたことに安堵する。


「この様な食事が出れば、騎士団の士気も上がるだろうな。いい研究だ。この先の料理が楽しみだな。」


おぉぉぉぉぉ。私は心の中で叫んだ。

クロッカさん、調合料理はオーヴェルの王子の心は掴んだようですよ!



午後からは明日の移動分の水と乗り物を手に入れるべくグショウ隊長とダンが出かけた。

私は夜ご飯用にいくつかのスパイスを調合。鶏肉は下ごしらえをして置いておく。


「トトさん、明日の休憩用にゼリーを作りたいのですがどう思いますか?柔らかめに作って飲むこともできるようにしたいのです。」


「それはいい考えですね。この灼熱の中、コオリーンを連れていくことは出来ないので、夜のうちに冷やしてもらい保管魔法をかけておけば冷たいまま保存もできるでしょう。」


「はい。」


トトのOKサインをもらうと安心して作ることが出来る。ゼリーは疲労回復効果のあるあの実と、ひんやり効果のある果物を組み合わせ、味を調える為に酸味のある果物の味をベースにした。総合効果としては疲労回復効果3になるようだ。

トトはまたもや効果と効力を測っている。

あぁ、私の持つスキルのことを打ち明けられたらどんなに楽だろう。

何度となく思っては、スキルに関しては黙っておけと言う師匠たちの言葉を思い出し踏みとどまった。


次回は【夕食と疑惑】です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。