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World cuisine おいしい世界  作者: SAI
第一章
20/226

20.夕食と花火

2020.4.28修正しました。

大叔父× 曽祖父○

日も傾き残り僅かな夕焼けが部屋を染めた頃、ソファに座ってウトウトしているとコンコンとドアをノックする音が聞こえた。

はい、と返事をすると「失礼してもよろしいでしょうかっ!!」っと大きな声が聞こえた。


「どうぞ。」


了承するとドアからにゅっと小さな顔が現れた。お家小人である。


「わたくしはジェンダーソン侯爵家に仕える小人のズンでございますっ!!以後お見知りおきをっ!!

奥様より夕食が出来ましたのでお呼びするよう申しつかって参りましたっ!!」


お父さん小人のズンは緊張と気合が入り交ざった状態なのか、やたら大きな声で挨拶をした。


「どうもありがとう。すぐに参ります。」



ダイニングへ向かうと皆が席についていた。

私たちはエリックにエスコートされ席に着く。

長いテーブルの中央には花が生けられており、各席の前にはナイフとフォーク、グラスが並べられていた。

最初の一皿目はトーニャをよく煮て甘みを出したものに柑橘系のさわやかなソースがかかった前菜だ。甘みと酸味のバランスがちょうどよく、食欲が増進される。


「おいしい。」


私が呟くと、「これはうちの庭で採れたトーニャなのよ。」とフローレンスが教えてくれた。


「ここには畑もあるのですか?」


「畑、なんて大げさなものでもないのだけれど、いくつか野菜を育てているの。料理人がこだわっていてね、収穫したての野菜を使う方が香りも味も良いからと言って、彼らが育てているのよ。」


「それは素敵ですね。」


どうりで美味しいはずだと感心した。

続いて素材の味が十分に引き出されている根菜のスープと自家製パンが出てきた。

パンを一口いただいてスープを飲む。

スープは丁度良い温度になっていて、お腹がほんのりと暖かくなるようだ。

次の魚料理が楽しかった!

お皿に白身の魚の切り身が乗っていて、エリックがパチンと指を鳴らすと5cmくらいの炎がチョンと現れ、魚の皮目をジリジリ焼いたのだ。

本当に食べる直前に焼くことで、温かさとカリッとした食感を最高の状態で味わえる。


すごい、美味しく食べてもらおうとする熱意を感じる。

隣を見れば師匠がうっとり目を細めて魚を口に運んでいた。


その後の料理も素晴らしいものだった。

熟成させローストしたお肉は肉の旨みがギュッと詰まっていたし、野菜は甘さと苦味のあるものを混ぜたサラダでお肉の重さを払しょくするような一品だった。


その後の甘味は、ふわっとして優しい食感の食べたことのないもので。

あとで作り方を教えてほしいとすら思った。


食後のお茶をいただく。


「ごちそうさまでした。とても美味しかったです。」


どこか夢心地のまま伝える。


「喜んでいただけて料理人も誇らしいでしょう。」


エレンが優しく微笑んだ。


「そういえばライファ、明後日は王宮へ招待されているのよね?ドレスはお持ちかしら?」


ええっ!?と師匠を見る。

王宮へ行くんだ。当たり前だろう?

師匠の表情がそう言っていた。ハッとまたエレンの方を見れば


「そうよね。なんだかそんな気がしたのよ。大丈夫よ。エリック、明日、トッドを呼んで頂戴。ライファの姿を送って彼女にぴったりのドレスを持ってきてもらいましょう。

洋服はぜひ、プレゼントさせてちょうだい。息子の命の恩人ですもの。私しだってお礼をしたいですわ。」


「わたしも洋服選びを手伝いますわ!こんなに美人さんなのに黒ポンチョじゃ勿体ないもの!」


助かった・・・。

洋服のことをすっかり忘れていた。


「ありがとうございます。」


「カーラントさんはドレスはお持ちで?」


「私は王宮には参りませんのでドレスは必要ないのです。でも、ライファのドレス選びにはぜひご一緒させてください。王都でどんなドレスが人気なのか興味がありますの。」


「じゃぁ、女性みんなで洋服選びね。楽しみだわっ。」



玄関の中央、踊り場に乗りみんな思い思いの場所を描く。

すると階段はそれぞれの行先へと別れ、まるで噴水のように皆を部屋へと届けた。


「そういえば、お風呂は好きな時間に入ってよいと言っていたな。」


師匠はそう言うとソワソワお風呂の準備を始めた。


「決戦は夜!ここまでの道のりの間に良さそうなバーは見つけてある。

あとは石鹸の香りがふわっと漂う清楚系美女に変身だ!」


屋敷を抜け出す気が満々の師匠はさっさとお風呂へ行った。


師匠が出て行ってしばらく後、レイが訪ねてきた。


「ライファ、ちょっといいかな。」


「どうした?」


「もうすぐ祭りの初日を祝う花火が上がるんだ。もしよかったら一緒に観に行かないか?」


「花火か。王都の花火なら豪華そうだな。」


私はそういうと黒いポンチョを手に取った。


部屋の前、レイと並んで扉の前の踊り場に立つ。

すると踊り場がにゅうううっと垂直に伸びて屋敷の一番高いところへ私たちを運んだ。


「ここ、掃除する時に使う扉なんだけど、花火が良く見える場所に行くにはここが一番なんだ。」


レイは扉を開けると先に外へでて、私を引っ張り上げた。

風がびゅうっとひとつだけ吹いて髪の毛をさらう。立った場所は屋敷の屋根の上だった。

レイが指を鳴らすとソファが現れた。ソファは4つの脚を伸ばしたり縮めたりバランスをとろうと必死である。ソファが落ち着いたのを見て、「どうぞ。」とレイが言った。


「寒くない?」


「ちょっとだけ寒い、かな。」


レイはまたパチンと指をならしてブランケットを出してくれた。

並んでソファに座るとなんだか秘密基地にでもいるような気分になる。


「レイはここで育ったんだな。」


上から見ると屋敷の全体像が良くわかる。

長方形型の敷地の中央に屋敷があり屋敷の表側に庭や馬小屋がある。

家の裏側、厨房側にあるのは夕食時にフローレンスが教えてくれた畑に違いない。


「ほら、あそこ。」


レイが指さしたのは畑の隣のスペースだった。短く草が刈り取られ、無造作に丸太が立ててある。


「あそこがうちのトレーニング場所。小さい頃は一日のほとんどをあの場所で過ごしたんだ。」


「トレーニング三昧ってこと?」


「そう。うちは昔、ユーリスアの南西に位置するアーラーを治めていたんだ。

もともとジェンダーソン家は代々武術に長けていたんだけど、曽祖父が国王に認められてナイトの称号を頂いてね。国王の側でお守りしたいとアーラーを人に任せてここに引っ越してきたんだよ。

そんな経緯もあって、ジェンダーソン家に生まれたからには強くなければいけない。と、小さい頃からせっせと特訓するんだ。」


レイは困ったように笑った。


「絵にかいたような体育会系一家だな。」


「確かに。」


私の言葉にぷぷぷっとレイが笑った。




ひゅ~ドーーン!

上空に大きな花が咲いた。


「きれい・・・。」


花はみるみる形を崩していき光の粒となって落ちてゆく。

空に残る光の残像が次の花火の光にかき消され、その花火の残像も次の花火がかき消してゆく。


「圧巻だな。」


レイを見るとレイは花火を見つめたまま


「こんなにゆっくり花火をみるのはいつぶりだろう。」と呟いた。




「ライファは誰か想う人はいるのか?」


花火の煙を逃がすためのちょっとした空白の時間に、レイは空から視線を逸らさずに聞いてきた。


「想う人?好きな人ってことか?」


「うん、そう。」


「いないかな。なんだかそういうのはよくわからん。」


むぅっとした顔をしていると、レイがようやくこっちを見た。


「師匠もさ、17歳なんだから色恋めいたものがあるだろうってちょいちょい言ってくるんだが、正直、本当によくわからん。可愛いもかっこいいも男にも女にも同じように思うし、会いたいとかも同じように思う。何をもって好きってことになるのか、さっぱりだ。」


お手上げだ、というように両手を上げると、レイは「そうか。」とだけ言った。


「レイにはそういう相手はいるのか?」


「えっ・・・。」


レイにされた質問を返しただけなのに、なぜかレイは動揺したように言葉を詰まらせた。

そうしているうちに花火がまた再開され、


視線を花火に持っていかれたことでその会話は終了になった。




次回は【3種類のクッキー】です。

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