9 応援のお誘い
いつもの学校の帰り道。
いつも通り、目の前に来た年配の方に席を譲っていると、声をかけられた。
「小春ちゃん!」
「伊藤くん」
最近よく会う、桜のクラスメイトの伊藤くんだった。
いつも一緒にいるお友だちの渡辺くんはおらず、今日は一人みたいだ。
「部活帰り? ずいぶん遅いね」
「うん。今日は練習に熱が入っちゃって、少し遅くなっちゃって」
人見知りの私でも話しやすいように、話題を振ってくれる。
私は弦楽部、伊藤くんは陸上部の練習で遅くなり、この時間の電車になったみたいだ。
「最寄り駅、三つ先の駅だよね? 俺は四つ先なんだ。実は、知り合う前にも小春ちゃんを見かけたことあるんだよね」
「そうなの?」
「うん。見るたびに誰かに席を譲ってるから、優しい子なんだなって」
「うちの学校の最寄り駅、始発のことが多くて座れるから、それでだよ。お年寄りの方や妊婦さんに席を譲るのは普通だと思うけど…」
「疲れてると、その普通がなかなかできないんだって」
などと世間話をしながら、次で降りなきゃと思っていると、思わぬ提案をされた。
「そうだ! 小春ちゃん、次の土曜日空いてる?」
「え? 次の土曜は、午前中に桜と好きなアイドルのコラボカフェに行く予定だけど…」
「それって午後は空いてないかな? 実は、近くの競技場で、陸上の地区大会があって、小春ちゃんが来てくれたら、もっと力が出るかもなーなんて。湊も一緒に出る予定だよ! 田中も誘ってどうかな?」
「ええっと、午後は行けるかもだけど、桜と相談してみるね!」
「うん! 田中の連絡先は知ってるから、俺も田中に聞いてみるわ。前向きに検討をお願いします!」
「ははは、うん、またね」
バイバイと手を振って電車を降りる。
話の種がなかったから、社交辞令で誘ってくれただけかな?
とりあえず、帰ったら桜に相談してみよう。
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「あー、伊藤から私も連絡きたよー! あいつは本気で小春に来てほしいみたい。どうする? 時間的には行けるけど、小春が乗り気じゃないなら断るよ?」
夜、桜と電話していると、そう言われた。
「ううん、運動部の競技大会もどんなのかちょっと気になるし、桜が良かったら行ってみない?」
「ま、コラボカフェからもそんなに遠くないし、応援に行ってやるかー。時間とか詳細は私が伊藤に聞いておくね」
「ところで、カフェでどのグッズ買うか決めた? お金が足りないよー」と話は夜更けまで続き、寝不足になってしまったのは、よくある話。
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土曜日の午前10時。
桜と待ち合わせ、私たちの推しのアイドルOctaveのコラボカフェにやってきた。
店内のいたるところに、メンバーのポスターやパネルが並び、BGMはもちろんOctaveの曲。
モニターでは、メンバーからの限定メッセージが流れている。
夢のような空間だ。
コラボメニューのランダムカードを桜と見せ合い、グッズを買い漁り、楽しいひとときを過ごす。
「あー楽しかった! また開催されますようにー!」
と次への期待を語り、伊藤くんたちの応援に向かうべく、近くの競技場へ移動する。
「何か差し入れ買っていったほうがいいよね?」ということで、コンビニでゼリー飲料と、通りかかったお菓子屋さんで個包装のマドレーヌをいくつか購入した。
陸上部の競技大会、どんな雰囲気なんだろう?




