10 地区予選、観戦
「田中、こっちこっち!」
桜の案内で競技場の中をうろうろしていると、伊藤くんが私たちを見つけてくれた。
「今日は来てくれてありがとう! あっちがうちの学校の場所で、あの辺に座れると思うから、座ってみてて! 俺と向こうにいる湊も、午後は100メートルの決勝と、リレーの予選に出るから、応援よろしく!」
「伊藤くん、頑張ってね!」
「伊藤がんばれー」と桜も適当に応援している。
「ありがとう、すぐまた競技だから、行ってくる!」
ファイティン! と言って、競技に向かう伊藤くんを見送る。
競技場では、各所で円陣が組まれていたり、個人でウォーミングアップをしている子がいたり、運動部独特の緊張感漂う雰囲気だ。
「小春、この辺の席に座ってもいいみたい。今日は夕方、にわか雨がありそうだから、うーん、この辺がいいかな」
一階席のスタンドは、二階席が屋根代わりになっているから、どこでも雨はしのげそうだが、席によって違うのだろうか?
桜の案内で、スタンドの空いている席に座る。
しばらくすると、グラウンドに伊藤くんと渡辺くんが出てきた。
伊藤くんは、きょろきょろして、私たちを見つけると手を振ってくれた。
渡辺くんも、ぺこりと頭をさげてくれる。
「伊藤くんたち、勝てるかな?」
「上位六位くらいまでが、県大会に進めるみたいだけど、どうかねー?」
あれ、なんだか、渡辺くんがずっと桜のほうを見ているような…。
っと、いよいよ伊藤くんが走る順番のようだ。
私まで緊張してきた。
パンッ
スタートのピストルがなる。
すごい、100メートルが、一瞬だった。
あっという間に終わってしまい、伊藤くんは今回の組では2位だったみたいだが、肉眼ではよく分からなかった。
このあと、渡辺くんも走り、なんと、伊藤くん5位、渡辺くんは3位入賞で、二人とも県大会に出場が決まった。
「やったね、すごいね二人とも!」
「おー、なかなかやるねー」
桜と二人の活躍を見ていると、今度はリレーに出場する二人が出てきた。
「次々競技があるんだね。休む暇もなくて大変だね」
二人とも、またこちらを見てくれる。
頑張って! とジェスチャーで応援する。桜も申し訳程度に手を振っている。
伊藤くんは手を振り返してくれているが、やっぱり、渡辺くんは桜のほうをじっと見ているような。
これは、もしかして…?
別々の学校だが、伊藤くんと渡辺くん、二人の学校はどちらもリレーも決勝に進めたようだ。
大会は明日もあり、リレーの決勝は明日だと桜に聞いた。
大きい大会になると、一日に何度も予選と決勝をやったり、何日かに分けて予選と決勝をやったりするそうで、コンディションの調整が大変そうだ。
ちょうど競技が終わったとき。
雲行きが怪しくなってきたと思ったら、雨が降ってきた。
選手やスタッフたちも急いで屋根のあるところに入っている。
周りの席も雨に濡れてしまっているが、あれ、そういえば私たちの席の周りだけ、ぜんぜん雨に濡れていない。
屋根などの条件は周りの席と同じはずなのに、なぜだろう?




