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小春と桜の事件ノート  作者: Ryo Hishida


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10/16

10 地区予選、観戦

「田中、こっちこっち!」


桜の案内で競技場の中をうろうろしていると、伊藤くんが私たちを見つけてくれた。


「今日は来てくれてありがとう! あっちがうちの学校の場所で、あの辺に座れると思うから、座ってみてて! 俺と向こうにいる湊も、午後は100メートルの決勝と、リレーの予選に出るから、応援よろしく!」


「伊藤くん、頑張ってね!」


「伊藤がんばれー」と桜も適当に応援している。


「ありがとう、すぐまた競技だから、行ってくる!」


ファイティン! と言って、競技に向かう伊藤くんを見送る。


競技場では、各所で円陣が組まれていたり、個人でウォーミングアップをしている子がいたり、運動部独特の緊張感漂う雰囲気だ。


「小春、この辺の席に座ってもいいみたい。今日は夕方、にわか雨がありそうだから、うーん、この辺がいいかな」


一階席のスタンドは、二階席が屋根代わりになっているから、どこでも雨はしのげそうだが、席によって違うのだろうか?

桜の案内で、スタンドの空いている席に座る。


しばらくすると、グラウンドに伊藤くんと渡辺くんが出てきた。

伊藤くんは、きょろきょろして、私たちを見つけると手を振ってくれた。

渡辺くんも、ぺこりと頭をさげてくれる。


「伊藤くんたち、勝てるかな?」


「上位六位くらいまでが、県大会に進めるみたいだけど、どうかねー?」


あれ、なんだか、渡辺くんがずっと桜のほうを見ているような…。

っと、いよいよ伊藤くんが走る順番のようだ。

私まで緊張してきた。


パンッ


スタートのピストルがなる。

すごい、100メートルが、一瞬だった。

あっという間に終わってしまい、伊藤くんは今回の組では2位だったみたいだが、肉眼ではよく分からなかった。

このあと、渡辺くんも走り、なんと、伊藤くん5位、渡辺くんは3位入賞で、二人とも県大会に出場が決まった。


「やったね、すごいね二人とも!」


「おー、なかなかやるねー」


桜と二人の活躍を見ていると、今度はリレーに出場する二人が出てきた。


「次々競技があるんだね。休む暇もなくて大変だね」


二人とも、またこちらを見てくれる。

頑張って! とジェスチャーで応援する。桜も申し訳程度に手を振っている。

伊藤くんは手を振り返してくれているが、やっぱり、渡辺くんは桜のほうをじっと見ているような。

これは、もしかして…?


別々の学校だが、伊藤くんと渡辺くん、二人の学校はどちらもリレーも決勝に進めたようだ。

大会は明日もあり、リレーの決勝は明日だと桜に聞いた。


大きい大会になると、一日に何度も予選と決勝をやったり、何日かに分けて予選と決勝をやったりするそうで、コンディションの調整が大変そうだ。


ちょうど競技が終わったとき。

雲行きが怪しくなってきたと思ったら、雨が降ってきた。

選手やスタッフたちも急いで屋根のあるところに入っている。


周りの席も雨に濡れてしまっているが、あれ、そういえば私たちの席の周りだけ、ぜんぜん雨に濡れていない。

屋根などの条件は周りの席と同じはずなのに、なぜだろう?

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