11 雨の秘密と恋の予感
「ねぇ桜。なんで私たち濡れてないんだろう? 周りの席は雨に打たれてるのに」
「あぁ、あれのおかげよ、あれ!」
桜が競技場の二階から垂れ下がっている、横断幕を指さす。
何枚か垂れ下がっているが、よく見ると少しだけ大きさの大きい横断幕があった。
それが、ちょうど私たちの席の周りだけ、雨よけの役割になっているようだ。
「あれがあるから、この席にしたの? よく気がついたね
、さすが桜!」
「ふふん、当たり前でしょー」といつもの得意顔を見せる。
そこへ、競技と部の反省会諸々が終わった伊藤くんと渡辺くんが合流した。
「小春ちゃん! やったよー、俺も湊も、県大会進出と決勝進出!」
褒めて褒めてと尻尾を振っている犬のようだ、と思いながら、感想を伝える。
「おめでとう! 臨場感があって、見ててもすごく楽しかった! 県大会と決勝も頑張ってね!!」
「こいつ、小春が応援したら、県の新記録とか出しちゃうんじゃない?」と桜が小声でからかってくる。
「そうだ、差し入れ持ってきたよ、これ。渡辺くんもどうぞ」
と、買ってきたものを差し出す。
「ありがとー」「うす」と、それぞれ伊藤くんと渡辺くんが受け取るが、渡辺くんの視線は桜で固定されている。
これはいよいよ…。
「じゃ、帰ろー」
桜の先導で駅に向かって歩きだす。
前に桜と渡辺くん。
桜たちと距離が出たところで、隣の伊藤くんにこっそりと聞いてみる。
「伊藤くん、もしかして、もしかしてだけど、渡辺くんって桜のこと…」
「小春ちゃん、良く分かったね! そうそう、どうも本人は気づいてないみたいなんだけど、湊は田中が気になってるみたいなんだよ」
「あんなに見つめてるのに、自覚なしなんだ!」
「うん、しばらく見守ってるつもり。小春ちゃんもよかったら、そうしてやって!」
「うん。…でも、どうなっても、私は桜の味方しかできないから、それはよろしく…」
「うんうん、それでこそ俺の…もにょもにょ…小春ちゃん!」
「ん?」よく聞こえなかった気がして聞き返したが、「ううん、俺も湊も、青春だなー!」と伊藤くんが笑う。
恋の予感にドキドキしながら帰る。
「小春、早く早くー! あ、虹だ!」
桜の声に私も振り向いて空を見上げると、夕焼け空には虹がかかっていた。
「ホントだ!」
「おーキレイだねー」
「みんなで写真撮ろうよ!」
「いいねー」
「はいはい、チーズ!」
この先、桜と渡辺くんの関係がどうなっても、私たち四人が今後会わなくなることがあっても。
絶対に忘れないであろう、高校二年生の思い出の一つになることを確信して、みんなで写真を撮って帰った。




