6 ドッペルゲンガーの謎
「ねぇ小春。ドッペルゲンガーって知ってる?」
いつもの水曜日の放課後。
二人でファストフード店でおやつを食べながら話していると、突然、桜がそんなことを言ってきた。
「ドッペルゲンガーって、あの都市伝説とかによくあるやつ?」
ドッペルゲンガーとは、もう一人の自分を自分で見ることで、不吉なことが起こる前兆だったり死期が近いだったり、とにかく良くない現象だったはず。
「最近、私のドッペルゲンガーがいるの」
桜はニヤニヤ笑いながら話を続ける。
「えぇ!? 桜、実際に会ったの? 大丈夫!?」
「いや、まだ会ってないんだけど、最近、私が行ってない場所で私を見かけたっていう話をよく聞くのー」
どうやら、桜の学校の人たちが、「〇〇で桜を見かけたよ」みたいな話をよくしているらしいのだが、桜には身に覚えのないことばかりらしい。
「良く似た別人じゃない? ほら、世界には同じ顔の人が三人いるって言うし…」
「見た人がみんな、制服も背格好もメイクも、まったく私だったって」
「ドッペルゲンガーって本人が会ったら良くないことが起こるっていうよね…?」
「私のドッペルゲンガーは大丈夫だよー! ふふふ、早く会いたいなー」
桜は全く危機を感じていないようだ。
これは、私の出番かもしれない!
━━━━━
さっそく次の日の放課後、桜のドッペルゲンガーがよく目撃されているという、駅ビルに来てみた。
主に、桜が実際に行きそうな化粧品売り場や雑貨屋に出没するらしい。
まさかと思いつつ、実際に桜が会ってしまったら、桜の身に危険が及ぶかもしれない。
ここは、私が見つけて真相を突き止めねば、という謎の使命感が芽生え、人混みを探していく。
桜は髪色も明るいし、すぐに見つかるはず…とキョロキョロしていると、
「小春ちゃん!」
若い男性に知り合いはいないがナンパか!?…と警戒しながら振り向くと、そこには桜の文化祭で会った、伊藤なんちゃらさんとやらが、笑顔で立っていた。
後ろには、連れのなんとかさんもいる。
「ええっと、桜のクラスメイトの…」
「伊藤蓮! 田中の幼なじみということは、同い年だよね? 蓮でいいよー。こっちの無口なのは渡辺湊ね」
「伊藤くんと渡辺くん…」
相変わらず慣れない馴れ馴れしさに困惑しながら、名前を反復する。
「一人? 何してるの? って、あぁ、田中が向こうにいるのか」
「え?」
言われた先の雑貨屋を見てみると、確かに桜と同じ制服で、桜と同じ明るい髪色で、桜と同じ背格好の女子高生の後ろ姿があった。
しかし、生まれたときから一緒にいるといっても過言ではない幼なじみの私には分かる。
あれは桜に良く似た別人だ。何がとは言えないが、なんだか違う。
他の人なら騙せるかもしれないが、私のことは騙せないぞ!
「あれ、田中さんじゃないね」
ボソッと、渡辺くんがささやく。
桜とはこの前の文化祭のときが初対面だったはず。
ほほう、こやつ、なかなかやるな、と感心している場合ではない。
どうしよう、桜のドッペルゲンガーさんに話しかけるべきだろうか?




