14 こぼれ話 桜との電話
「━━っていうことが今日、あったの。怖い事件じゃなくて本当に良かったよー」
犬の散歩をする怪しい人を見かけた話とその顛末を、その日の夜、電話で桜にしているところだ。
「えー! そんなことあったの!? 危ない事件じゃなくてよかったよー。小春は気になったらすぐに動いちゃうからね。今日は伊藤に感謝だね」
「そうだね、伊藤くんがいてくれてよかったかも。
桜は? 今日は何してたの?」
「ふふふー、それがね! 図書館で勉強してたら、湊に会って。盗撮犯を捕まえたんだよねー」
「えぇ!? どういうこと!?」
金髪でメイクばっちり、ミニスカートに長い爪でオシャレも完璧な桜だが、実は勉強家で、将来はご両親のあとを継いでお医者さんになるという立派な夢がある。
仕事についたら好きにできないだろうからと、今は思う存分ギャルメイクやオシャレを楽しんでいるところもあるらしい。
濃いメイクの奥に、整った綺麗な顔立ちと聡明な顔が隠れているのを私は知っている。
そんな桜が、図書館で勉強というのは分かる。
だが、「湊」って伊藤くんの友だちの渡辺湊くんだよね!?
いつの間に呼び捨てにする仲に?
それに、盗撮犯を捕まえた!?
「湊も勉強しに来ててー。不審な男を二人で見張ってたら、そいつが盗撮犯だって分かって! 図書館の人に話して、警察呼んでもらって、大変だったんだよー」
とは桜の話。
たまたま図書館で会った渡辺くんと、桜たちは本当に事件を解決したようだ。
「前々から思ってたけど、湊は口数は少ないけど、なかなか見どころがあるやつでさ! 誘われてお昼も一緒に食べたよー」
その流れで、連絡先も交換したとのこと。
渡辺くんも桜のことが気になってるみたいだったし、桜も好印象のようだ。
これはいよいよ、どうなるかは分からないなと、親友の恋の予感に内心嬉しくなるが、ここでからかうと良くないのは想像できる。
しばらく温かく見守って、もし桜が悩んでいたら相談に乗ろうと決意する。
「桜、私は何があっても桜の味方だからね!!」
「何、突然! 当たり前じゃん! うちらの友情の前に立ちはだかれるものなんてないって!」
改めて友情を確認して、そこからはまたいつもの推しトークをして夜は更けていった。




