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落第ギルドの創王師(キングメーカー)  作者: 結城 からく


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第3話

●白い空間


剣を構えたマキ、威勢よく突進する。


マキ「やあああぁぁっ!!」


対峙するシャルロット、魔術で氷の矢を飛ばす。

マキ、僅かな動きで回避し、減速せずに接近する。


シャルロット「くっ……!」

シャルロットM「早く防御魔術を!」


焦るシャルロット。

マキ、彼女の胸に剣の切っ先を突き付ける。

シャルロット、ぐっと悔しそうに歯噛みする。


シャルロット「……くそ」

ウィリアム「これでマキの八十連勝だ。順調だね」

マキ「ありがとうございます!」


マキ、ぺこりと頭を下げる。

ウィリアム、マキに指示を出す。


ウィリアム「彼女と話がある。君は少し休憩したまえ」

マキ「まだ元気なので素振りの続きをしてもいいですか!」

ウィリアム「ああ、構わないよ」


マキ、元気よく走り去る。

ウィリアム、座り込んだシャルロットに話しかける。


ウィリアム「マキはどうだね」

シャルロット「今まで私が戦った中で最強の剣士です。一万五千年の鍛錬……伊達ではありませんね」


シャルロット、悔しそうにマキの素振りを眺める。

ウィリアム、同じように素振りを観察する。


ウィリアム「あれでもまだ発展途上なんだ。つい最近、百の課題を乗り越えたところでね。今は千の課題に挑戦している。いずれSランクを超越した強さに届くだろう」

シャルロット「…………」


シャルロット、難しい顔で黙り込む。

その表情を見たウィリアム、微笑んで指摘する。


ウィリアム「どのような育成をすれば、落ちこぼれを英雄に仕立てられるのか。気になるかな」

シャルロット「……はい。どうにも信じられなくて」

ウィリアム「では試しに見せてあげよう」


ウィリアム、指を鳴らす。

その瞬間、マキの背後に禍々しい悪魔のような化け物が出現する。

シャルロット、驚愕する。


シャルロットM「あれは……!?」


化け物、爪でマキを攻撃する。

マキ、脇腹を切り裂かれて負傷する。


ウィリアム「育成の基本は単純だ。本人の技量や資質に合わせて課題を設定する。現時点の力では僅かに敵わない程度が望ましい」


ウィリアムの解説中、マキは化け物の攻撃を受け続ける。

剣で捌いているが、対処し切れていない。

その様子に焦るシャルロット。


シャルロット「あの、このままじゃ……!」

ウィリアム「大丈夫さ。黙って見ていたまえ」


化け物の攻撃が、マキの腹部を貫く。

その瞬間、マキが大きく剣を振りかぶる。


ウィリアム(off)「私は達成不可能な課題を与えない」

ウィリアム(off)「人間は己の限界を容易く飛び越えてみせる」


マキ、渾身の斬撃で化け物の首を刎ねる。

マキ、腹に穴が開いた状態で歓喜する。


マキ「先生ー! やりましたっ!」

ウィリアム「ご苦労」


ウィリアム、指を鳴らす

マキの腹部の傷が瞬時に再生して塞がる。


マキ「ありがとうございますっ!」


マキ、素振りを再開する。

ウィリアム、真面目に語る。


ウィリアム「短期間で一気に強くなれるような都合の良い方法はない。地道に泥臭く這い上がるしかないのだよ」

シャルロット「……私にも、可能性はありますか」

ウィリアム「もちろん。私は指導しないがね」

シャルロット「そこは頑なですね」

ウィリアム「一貫性があると言ってほしいな」


ウィリアム、不敵に笑う。

その後、彼はそっぽを向いて語り出す。


ウィリアム「ところでこれは独り言だが」

シャルロット「?」

ウィリアム「模範的な魔術師は、心臓を中心に魔力を右回転で巡らせる。これを左回転に反転させて螺旋の動きを加えると、術の出力が三倍、速度は十倍になる」


ウィリアムの言葉にシャルロットは驚愕する。


シャルロット「本当ですか!? 聞いたことのない理論です」

ウィリアム「左回転と螺旋の魔力制御は極めて困難だ。一般的な魔術師の技量ではまず再現できない。もっとも、時間の流れが極端に遅いこの空間なら、飽きるほど修練できるだろうが」


ウィリアム、流暢に語る。

シャルロット、遠慮がちに確認する。


シャルロット「……いいのですか?」

ウィリアム「何がだね。私は独り言を洩らしただけだよ」


ウィリアム、肩をすくめてとぼけてみせる。

シャルロット、嬉しそうに微笑んで礼を言う。


シャルロット「ありがとうございます。お気遣いに感謝します」


シャルロット、その場で胡坐をかいて鍛錬を開始する。

一方、ウィリアムはマキに指示を出す。


ウィリアム「彼女は自己鍛錬に集中するらしい。百連勝は後回しにして、別の課題を与えてもいいかな」

マキ「お願いします!」


●白い空間

N「七百時間後……」


白い空間で素振りをするマキ。

緊張した様子のシャルロットが話しかける。


シャルロット「マキさん」

マキ「はい!」

シャルロット「お待たせしました。課題の続きをお願いします」

マキ「了解ですっ!」


二人は一定の距離を取って向かい合う。

マキ、まっすぐ突進を仕掛ける。


マキ「ハァッ!」

シャルロットM「左回転と螺旋……魔力を淀みなく巡らせて……」


シャルロット、己の魔力を制御する。

全身から仄かに魔力のオーラが滲み出す。


シャルロットM「今!」


シャルロット、杖を振る。

地面から生えた氷の刃が、突進してきたマキの首に突き付けられる。

マキ、急停止して驚く。


マキ「わっ!?」


戦闘を見守っていたウィリアム、手を叩いて通達する。


ウィリアム「残念、八十一戦目で連勝ストップだ」

マキ「やられちゃいました……」

ウィリアム「まだまだ詰めが甘い。精進したまえ」

マキ「了解です! 次は負けないように頑張ります!」


マキ、やる気満々で素振りを始める。

シャルロット、ウィリアムに礼を述べる。


シャルロット「ありがとうございます。あなたのおかげです」

ウィリアム「それは違う。変わったとすれば君の努力の結果さ」

シャルロット「……優しいですね」

ウィリアム「人間を何億年も幽閉する人間に使う表現ではないな」


ウィリアム、愉快そうに笑う。

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