第2話
●白い空間
白い空間で少女マキが剣の素振りを行う。
そばに立つウィリアム、腕を組みつつ助言をする。
ウィリアム「振りが僅かに速い。焦らず体重移動を意識するように」
マキ「はい、先生!」
マキ、素直に頷いて素振りを行う。
その時、ウィリアムが何かを察知し、指を鳴らす。
地殻の扉が出現する。
ウィリアム「来客だ。このまま続けておくように」
マキ「了解です!」
ウィリアム、扉から外に出る。
そこは廃墟同然の冒険者ギルドの建物の前だった。
ウィリアムの前には、ローブを纏う美女が立っている。
美女、緊張した面持ちでウィリアムを見つめる。
ウィリアム「何者だ」
シャルロット「王国の宮廷魔術師シャルロット・アライルです」
ウィリアム「ほう、上級貴族すら一目を置く女傑じゃないか」
シャルロット「あなたの前では無意味な権力ですよ」
シャルロット、自嘲気味に笑う。
シャルロット「創王師ウィリアム……神代から生きる万能の賢者と聞いております。気まぐれに人間を育成し、歴史に名を残す存在を輩出している……と」
ウィリアム「そうだね。間違っていない」
シャルロット「魔王ソイルもあなたの教え子だったとか」
ウィリアム「詳しいね。そこまで記録が残っているとは思わなかった」
ウィリアム、意外そうにする。
シャルロット、胸に手を当てて語る。
シャルロット「私は剣王ミラの子孫です」
ウィリアム「ほう」
シャルロット「私に剣の才はありませんでしたが、代わりに魔術の腕を磨き、人類最高峰と呼ばれるに至りました。あなたから見れば児戯に等しいでしょうが……」
ウィリアム「二つ勘違いをしている」
ウィリアムが指を立てて述べる。
ウィリアム「まず君の先祖のミラだが、彼女も剣の才能は皆無だった。六億年の鍛錬で人並み以上になっただけさ」
シャルロット「六億……?」
シャルロット、戸惑う。
ウィリアム、そのまま話を進める。
ウィリアム「そして、私は君の技量を児戯だとは思っていない。血の滲むような鍛錬で得た力なのは一目で分かる。私はあらゆる努力を侮辱しない。故に君にも敬意を抱いているよ」
シャルロット「ありがとう……ございます……光栄です」
シャルロット、恐縮しながら頭を下げる。
ウィリアム「それで用件は?」
シャルロット「己の限界を感じたので、どうか私を鍛えてほしいのです!」
ウィリアム「断る」
シャルロット「!?」
即答されて驚くシャルロット。
シャルロット「な、なぜですか……?」
ウィリアム「強者を育ててもつまらん。弱者の魔改造こそ至高だろう」
シャルロット「そこをなんとか……」
ウィリアム「ふむ……」
ウィリアム、少し考え込んでから何かを閃く。
ウィリアム「ではこうしよう」
ウィリアム、指を鳴らす。
周囲が白い空間になる。
そばではマキが素振りをしている。
マキ「先生、その方は……?」
シャルロット「私は……」
シャルロット、名乗ろうとする。
ウィリアム、それを手で制して答える。
ウィリアム「彼女はシャルロット。見学希望の魔術師だ。まだ見習いだから仲良くしてやってくれ」
マキ「なるほど! よろしくお願いしますっ!」
シャルロット「こ、こちらこそ……」
ぺこりと頭を下げるマキ。
シャルロット、戸惑う。
ウィリアム「シャルロットに百連勝するのが次の課題だ。一度でも負けたらやり直しとする。できるかね?」
マキ「頑張ります!」
マキ、さっそく弦を構えてシャルロットと対峙する。
シャルロット、慌てて杖を構える。
シャルロット「相手はウィリアム様の教え子……くれぐれも怪我させないように……」
次の瞬間、マキの姿が消える。
一瞬で距離を詰めたマキ、シャルロットの背後から首に剣を添える。
マキ「先生、これで一勝になりますか」
シャルロット「!?」
ウィリアム「ああ、問題ない。では二戦目に移ろう」
狼狽するシャルロット。
マキ、駆け足で離れて位置につく。
その間、ウィリアムは小声でシャルロットに告げる。
ウィリアム「私は君の育成を断ったが、訓練相手として勝手に学ぶのは止めない」
シャルロット「は、はい……」
ウィリアム「マキはたった一万五千年しか鍛えていないが、君の不覚を突くことはできそうだね」
シャルロット「……ッ」
シャルロット、息を呑む。
ウィリアム、愉快そうに彼女の肩を叩く。
ウィリアム「まあ、死なないように頑張りたまえ」
次の瞬間、マキがシャルロットに斬りかかってくる。




