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益徳叔父上の訃報の直後に、三人目発覚でございますか?

劉明珠でございます。


肇から、益徳叔父上の訃報が届きました。

自分の部下に殺されたそうです。

雲長叔父上に続いて、益徳叔父上まで……


さすがに堪えたのでしょう。

食事も喉を通らず、身体まで重くなりました。

文烈様が医者を呼びました。


結果――

三人目だそうです。


益徳叔父上――

こんな時に発覚しなくてもよいのではございませんか?


しかも洛陽の玉珠からも、

『姉上。わたしも子供ができたそうです』

と文が届きました。

おめでとうございます。


その次に、

『お腹と鼻は離れていますよね?』

と書くのはおやめなさい。


今日は、人が亡くなったり増えたり、たいへん忙しゅうございます。

肇から届いた文を、私は途中までしか読めませんでした。

『母上、張飛将軍が、帳下の将である張達と范彊に殺害されたとの報せが入りました』

そこから先へ、目が動かなかったのです。

張飛将軍。

そう書いてあります。

けれど、私にとっては違いました。

益徳叔父上です。

父上のそばにいて、雲長叔父上とともに何度も戦場を駆け、私たちが幼い頃から当たり前のようにそこにいた方です。

その方が、自分の部下に殺された。

「……明珠」

文烈様に呼ばれ、ようやく顔を上げました。

「これは、本当なのでしょうか?」

「肇が確かめて送ったのなら、まず間違いないだろう」

分かっております。

それでも最近の私は、訃報というものを素直に信じたくありません。

山陽公など、生きているのに一度亡くなったことになりましたからね。

益徳叔父上についても、

『間違いでした』

と次の文が届いてくれればよいのです。

ですが、続きを読むと、もっと嫌なことが書いてありました。

張達と范彊は益徳叔父上の首を取り、それを携えて孫仲謀殿のもとへ逃れたというのです。

私は文を閉じました。

「もう結構です」

「最後まで読まなくていいのか?」

「読んだところで、益徳叔父上が戻ってこられるわけではございません」

自分でも、ひどく冷たい言い方だと思いました。

そうでも言わなければ、声が震えそうだったのです。

益徳叔父上は、優しいだけの方ではありませんでした。

戦場では恐ろしく強く、気性も激しく、部下への当たりもきつい方でした。

父上が以前から、その扱いではいつか身を滅ぼすのではないかと心配しておられたことも知っています。

だからといって、殺されてよいという話にはならないでしょう?

「雲長叔父上が亡くなられて、今度は益徳叔父上ですか」

文烈様は何も言いません。

「魏王様も亡くなられました。元譲様も亡くなられました。父上は皇帝になったばかりなのに、どうして周りから人がいなくなっていくのでしょうね」

そこまで言ったところで、急に胃のあたりがむかつきました。

私は立ち上がろうとして、机へ手をつきます。

「明珠?」

「大丈夫です」

「顔色が悪い」

「益徳叔父上のことを聞いたばかりなのですよ?」

それ以外に何があるのでしょう?

その日は夕餉もほとんど喉を通りませんでした。

翌朝になっても身体は重く、食べ物の匂いを嗅いだだけで胃がひっくり返りそうになります。

文烈様はすぐに医者を呼ぼうとしました。

「必要ございません」

「必要だ」

「少し参っているだけです」

「二日続いている」

「私は意外と繊細なのでございます」

「知っている」

そこは少しくらい疑ってくださいませ。

怒る元気くらい出たかもしれません。

そう思いながら朝餉から顔を背けた時、妙な既視感がありました。

食べ物の匂いが嫌になる。

身体が重い。

朝から気分が悪い。

この感じを、私は知っています。

寧珠の時も。

環珠の時も。

「……文烈様」

「何だ?」

「いえ、まだ何も申しません」

「何だ、それは」

「違っていたら恥ずかしいではございませんか」

文烈様が私をじっと見ました。

どうやら、この方も気づいたようです。

二人とも何も言わないまま、結局、医者が呼ばれました。

脈を診てもらっている間、部屋が妙に静かです。

しばらくして、医者が顔を上げました。

「奥方様、ご懐妊でございます」

私は目を閉じました。

やはり――

「三人目でございますか……」

「はい」

隣で文烈様が息を吐きました。

「気づいていたのか?」

「二人も産んでおりますので、さすがに少しは」

「なら最初から言え」

「益徳叔父上のことで身体を壊した可能性もあったでしょう?」

それも本当です。

胸は今でも痛んでおります。

ただ、その痛みとは別に、私の身体はもう新しい命を抱えていたらしいのです。

世の中というものは、もう少し順番を考えてくれませんか?

一人が亡くなった知らせを受けた直後に、三人目ができていると教えられても、こちらはどの顔をすればよいのか分かりません。

「嬉しくないのか?」

文烈様が尋ねました。

「嬉しいですよ」

寧珠と環珠に続く三人目。

私たちの子です。

嬉しくないはずがありません。

「ただ、今日でなくてもよかったと思っております」

「それは俺にもどうにもできん」

「そこは存じております」

できたら怖いです。

医者が帰ったあと、私はしばらく腹へ手を当てていました。

三人目。

そう考えてから、ふと寧珠と環珠へ目を向けます。

二人とも近くで遊んでおります。

今さらですが。

……よく似ておりますね。

文烈様に……

目元も、鼻筋も、表情が静かな時の雰囲気まで、かなり父親寄りです。

私に似ているところを探せば、輪郭くらいでしょうか?

しかも、その私の顔は母上――糜夫人寄りです。

私は寧珠を見ました。

次に環珠。

もう一度、文烈様。

「……文烈様」

「今度は何だ?」

「この二人、改めて見ると、あなた様にそっくりですね」

「今さらか?」

「今さらです」

だって三人目と言われたのです。

二人産んだ結果を確認しておきたくもなるでしょう。

私は寧珠の頬を見て、環珠の顔を眺めました。

父上――

先日、とうとう皇帝になられましたね。

たいへんおめでとうございます。

ですが、孫娘二人の顔には、あなた様の面影がほとんど見当たりません。

私に似ているのは輪郭くらい。

その輪郭も、たどれば母上寄り。

つまり今のところ、父上の見た目の遺伝はほぼ行方不明でございます。

「何を考えている?」

「父上が、見た目では文烈様に負けているなと思いまして」

「何の勝負だ」

私にも分かりません。

ですが現状、二対〇です。

三人目まで文烈様そっくりだったら、父上はどうなるのでしょうね。

皇帝になっても、孫娘の顔面では全敗。

たいへんどうでもよい敗北ですが、少し面白くなってまいりました。

その日の夕方、寧珠と環珠にも話しました。

寧珠は私のお腹をじっと見たあと、

「ここにいるの?」

と尋ねました。

「いるそうですよ」

「いつ出てくるの?」

「まだ先です」

「いま出てきたら?」

「困ります」

寧珠は真剣な顔で頷きました。

何に納得したのでしょう。

環珠は私の腹へ顔を近づけました。

「きこえる?」

「まだ聞こえないと思いますよ」

そう答えた直後、環珠の右手が鼻へ上がります。

私は反射的につかみました。

「なぜ今です?」

「かゆい」

「考え事をすると鼻へ行くのをおやめなさい」

「まだ、はいってない」

またそれですか……

顔は文烈様で、言うことは私に似ているのに、右手だけはどういうわけか玉珠です。

この子の中では、いったい誰が勝っているのでしょうね。

そう思った数日後。

本物の玉珠から文が届きました。

私はいつものように開きます。

『姉上、わたしも子供ができたそうです』

私は文を閉じました。

もう一度開きました。

同じことが書いてあります。

「文烈様」

「今度は何だ?」

「玉珠も懐妊したそうです」

文烈様が黙りました。

そうですよね。

私も同じことをしました。

続きを読みます。

『最近、ご飯を見ると気持ち悪くなるので、食べすぎたのかと思いました。夫に、何日も続くなら食べすぎではないと言われました』

玉珠……

そこは夫君が正しいです。

『診てもらったら、お腹に子供がいるそうです。びっくりしました』

そうでしょうね。

玉珠にとっては初めてです。

私のように、寧珠や環珠の時と同じだと気づくこともできません。

ところが、その次の一文で、私は額を押さえました。

『夫が、これを機会に鼻をほじるのを完全にやめろと言います。お腹と鼻は離れていると思うのですが、関係がありますか?』

益徳叔父上が亡くなられた直後に、私は三人目を懐妊し、玉珠は初めての子を授かりました。

それで、その締めが鼻ですか……

本当に、世の中には順番というものがございませんね。

私は玉珠へ返事を書きました。

『お腹と鼻が直接つながっているわけではないと思いますが、この機会におやめなさい』

少し考えて、もう一行足します。

『元譲様とのお約束もお忘れなく』

これなら効くでしょう。

たぶん……

それからしばらくして届いた返事には、

『分かりました。できるだけ頑張ります』

とありました。

できるだけでは困るのですが。

さらに、

『子供が生まれたら、鼻をほじるところを見せない方がよいでしょうか?』

と続いております。

当たり前です。

真似をしたらどうするのですか?

そう返そうとして、私は筆を止めました。

長坂で荷車に残された娘が二人。

十三歳だった私と、まだ幼かった玉珠です。

あの時は、二人とも自分が明日どうなるのかさえ分かりませんでした。

それが今では、それぞれ夫がおり、子供がおり、そのうえ同じ年にまた子供が増えようとしております。

父上――

あなた様が置いていった娘たちは、どうやら勝手に家族を増やしておりますよ。

片方は三人目。

もう片方は初めてです。

そしてその初めての母親は、まだ鼻をほじるかどうかで夫と争っております。

人生というものは、本当に分かりませんね。

益徳叔父上のことを思えば、胸はまだ痛みます。

もう一度会えることはありません。

雲長叔父上と同じです。

けれど私の腹には、新しい命がいます。

洛陽の玉珠の腹にも。

誰かがいなくなったからといって、残された者の時間まで止まるわけではないのでしょう。

それなら、私は生きます。

この子を産んで、文烈様と寧珠と環珠と、また騒がしい日々を続けます。

益徳叔父上にも、その方がよいと言っていただきたいところです。

そう思えるようになった頃でした。

肇から、また文が届きました。

今度こそ、しばらく静かな話であってほしいものです。

私はそう願いながら開きました。

『母上、玄徳殿が諸軍を率い、呉へ向かわれました』

手が止まりました。

父上は雲長叔父上を失い、益徳叔父上まで失って――それでも行かれるのですね。

孫仲謀殿のもとへ。

今度こそ、ちゃんと帰ってこられるのでしょうね?

劉玉珠です。


わたしにも、子供ができたそうです。

最近、ご飯を見ると気持ち悪くなるので、食べすぎたのかと思っておりましたが――


違いました。

夫には、

「これを機会に鼻をほじるのをやめろ」

と言われました。

お腹と鼻は離れておりますよね?


姉上に聞いたら、

『離れていても、やめなさい』

と返ってきました。

たいへん厳しいです。


でも、義父上とも約束しましたので頑張ります。


ところで、姉上にも三人目ができたそうです。

同じ年に姉妹で子供が増えるのですね。

少し嬉しいです。


ただ――

父上が、呉へ向かわれたと聞きました。


姉上……

父上は、ちゃんと帰ってこられますよね?

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