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環珠、気になることが多すぎませんか?

劉明珠でございます。


近頃、環珠が何やら考え込んでおります。


呼べばすぐ返事をしますし、食事も普段どおりですが、用もないのに衣の袖を整えているのを見ると、母親としては気にならないわけがございません。


「姉上、そんなに気になるのでしたら、本人に尋ねればよいのでは?」


玉珠がもっともらしく申しました。


「聞いて答えてくれることばかりではありませんよ」

「難しいものですね。私は気になったら、すぐ確かめますけれど」


そう言いながら、妹の右手が鼻へ向かったので、私は手巾を差し出しました。


「それはこちらで確かめなさい」

「姉上、私はまだ何も言っておりません!」

「言う前に分かることもあるのです」

「では、環珠のことも分かるのでは?」


……時々、この妹は痛いところを突いてきます。

鼻をほじろうとしてさえいなければ、もう少し感心できるのですが。


さて、娘に尋ねるべきか、見守るべきか。


……どうやら私まで、考えごとが増えてしまったようです。

肇は、陛下から「縁談を纏めろ」と命じられても、顔色ひとつ変えませんでした。

その息子が、妹のたった一言で返事に詰まっているのですから、母親というものは何年生きても退屈しません。

「兄上! 次はいつ、子文様とお会いできますか?」

環珠はごく真面目な顔で尋ねました。

つい先ほどまで「止めなくていいです」と答えるのにあれほど時間をかけていた娘が、今度は自分から次の対面を望んでいるのですから、肇も予想していなかったのでしょう。

卓の端に置いた茶碗へ手を伸ばしかけたものの、そのまま持ち上げることも忘れて妹を見つめていました。

「……まだ日取りまでは決めていない。先方にも都合があるからな」

「そうでしたね。急がせるつもりはありません」

「いや、お前が急かしているとは思っていないが」

そう言う肇の方が、急に日取りを決めなくてはならないと思い始めたようです。

環珠は小さく頷いて席に戻り、何事もなかったかのように茶を飲みました。

ただ、碗の縁に口を寄せるまでが、いつもより少し長いように見えます。

「兄上、今、困ったお顔をなさいましたね」

和珠が見逃しませんでした。

娘の中でいちばん小さいこの子は、人の顔を観察することにかけては、たいへん熱心です。

「困ってはいない。考えているんだ」

「環珠姉上がお会いしたいのに、いつか分からないからですか?」

「和珠、それは……まあ、そうだな」

息子は妹を叱ることもできず、私の方へ視線を寄越しました。

助けを求められても困ります。

そもそも私には、陛下を相手に縁談の話をしてきた人を、九つになる娘から救い出す自信などございません。

「では、いつになるか分かりましたら、環珠に真っ先に知らせてあげてください」

「母上まで……」

玉珠が何やら感心した様子で頷きました。

「肇殿は大変ですね。姉上も和珠も、逃がしてくれません」

「あなたもでしょう、玉珠」

「私は逃がして差し上げますよ。鼻の先にまで迫った話を、追い回しても仕方ありませんから」

そこで妹は自分の鼻先を指し示しましたが、説明を終えても指を離そうとしません。

仕方がないので、私は手近にあった団扇を渡しました。

「それで風でも送っていなさい」

「まだ暑くはありませんよ?」

「あなたの手が暇になるより、ずっとよろしいのです」

理由が分からないまま団扇を受け取った玉珠は、ひとまず大人しく扇ぎ始めました。

こんなことで平穏が保てるなら、我が家にはもっと団扇を備えておくべきでしたね……

そこへ、子供の寝具を整えていた幼姫が奥から出てきました。

肇の様子がいつもと違うことに気づいたらしく、戸口で不思議そうに首を傾げます。

「あなた、何かございました?」

「環珠が子文殿にもう一度会いたいそうだ」

「あら! それはよろしいことではありませんか」

幼姫は夫の困惑など意に介さず、当たり前のことのように答えました。

「これまで環珠様のお考えを一番に、とおっしゃっていたのはあなたでしょう。ご本人から希望が出たのなら、先方に伺えば済むお話です」

「分かっている。分かっているが、あまりに突然でな」

「突然ではございませんよ。今日、子文殿とお話しして、もう一度お会いしたいと思われたのでしょう?」

この小さな嫁は、時々、夫が何日も抱えていた難題を、子供の袖のほつれでも繕うように片づけてしまいます。

楽文謙殿の一族の娘らしく、見かけによらず肝が据わっているのです。

もっとも、楽文謙殿も、一族の娘が曹家に嫁ぎ、夫が妹の縁談に戸惑うのを諭すことになろうとは、想像もしなかったでしょう。

幼姫が環珠の隣に腰を下ろすと、二人の背丈の違いがいっそう目立ちました。

七尺二寸もある環珠の方が、顔つきまでずっと大人びているというのに、実際には幼姫こそ肇の妻であり、すでに子供を育てている母親なのです。

初めて会った人が二人の続柄を言い当てられるとは、とても思えません。

「環珠様。今度お会いするなら、何をお聞きになりたいですか?」

「まだ決めておりません。ただ、任城でどのように暮らしておられるのかは、伺いたいと思います」

「よいことです。お屋敷のことだけでなく、普段はどんなふうに一日を過ごされるのかも聞いてみるとよろしいですよ。夫婦になりますと、立派なお言葉より毎日の習慣の方が、ずっと身近になりますから」

私は思わず幼姫を見ました。

息子の普段の習慣について、何か言いたいことでもあるのでしょうか?

肇も同じことを考えたらしく、妻の顔をじっと見つめています。

「……幼姫。私に何か不満でもあるのか?」

「まあ! まだ何も申し上げておりませんのに」

まだ、という言葉が気になりますね。

肇も気になったようですが、それ以上は追及しませんでした。

勇敢な判断だと思います。

ところが環珠は、いつの間にか幼姫の話よりも、義姉の姿そのものが気になり始めたようです。

幼姫の胸元をちらりと見てから自分の方へ目を落とし、何を思ったのか、そっと背筋を伸ばしました。

七尺二寸もある娘が、あんなに小柄な義姉を相手に何を張り合っているのでしょう?

背筋を伸ばしたくらいで変わるものでもありませんのに……

「環珠……幼姫のお話は、そちらには書いてありませんよ」

「……母上、何をおっしゃっているのですか?」

「では、こちらを向いてお聞きなさい」

娘は耳まで赤くして顔を上げました。

縁談相手にはあれほど堂々と尋ねたのに、こういうことには弱いのですね。

幼姫は環珠と私を交互に見て、何かを察したようです。

それでも笑ったりはせず、膝の上で手を重ねました。

「環珠様! 私がこちらへ嫁いだ頃も、知らないことばかりでございました。初めてのお家で戸惑うのは誰でも同じです。困ったら、まず一つずつ尋ねればよろしいのですよ」

環珠は少し驚いてから、ようやく肩の力を抜きました。

「……ありがとうございます、幼姫姉上」

幼く見える義姉の方が、やはりずっと頼もしい。

女の貫禄というものを背丈で量れないのは、我が家では特に徹底しているようです。

翌朝、肇は早くから文机に向かっておりました。

まず寿春の纂へ、陛下との話と環珠自身の返事を知らせなければなりません。

呂氏側との調整もありますし、子文殿との次の対面についても話を進める必要があります。

昨日は環珠から次の対面を申し出られて面食らっていた息子が、今日はその約束を取りつけようと忙しくしているのですから、随分な変わりようです。

「母上、文面をご覧になりますか?」

「結構です。環珠の気持ちは、もうあなたが直接聞いているでしょう?」

「……そうですね」

息子は一度だけ頷き、筆を執り直しました。

文烈様がご存命でしたら、書状を出す前に自分でも確認なさったかもしれません。

そう思うと少し寂しくもありますが、今さら亡き夫の真似をして、息子の肩越しに一字一句を覗き込むつもりはございません。

その日の午後、肇は子文殿と会ってきました。

呂氏の人々との話を整える前に、まず本人がどう考えているのか、確かめたかったそうです。

帰ってきた息子は、居間にいた私たちへ向かって、開口一番こう申しました。

「子文殿は、こちらの申し出を聞くと『是非にお願い致します』と」

環珠はすぐには返事をしませんでした。

膝の上で握り合わせた手に力を込め、兄の顔を見上げます。

「……本当に、そうおっしゃったのですか?」

「ああ。私も驚いたが、はっきりとそう答えられた」

「そうですか」

それきり環珠は黙ってしまいましたが、握り合わせていた手からは、いつの間にか力が抜けていました。

口元こそ引き締めているものの、目元には先ほどまでなかった柔らかさが浮かんでいます。

本人が気づいていないのなら、今は教えないでおきましょう。

「それで、子文殿はお前ともう一度話したいと望んでいる。ただし、日取りは呂氏の方とも合わせる。纂にも報告の書状は出した。正式な話は、それからだな」

「はい、承知いたしました」

肇は肝心なところで、妙な気を利かせませんでした。

妹が喜んでいるからといって、その場で婚姻を決めるようなことはしない。

息子がそういう男に育ってくれたことを、今日ほどありがたく思ったことはありません。

玉珠が扇を膝に置き、環珠へ身を寄せました。

「環珠。是非に、というのは随分と熱心なお返事ですね。あなたは何とお返しするのです?」

「……次にお会いした時、お礼を申し上げようと思います」

「それでは、お互いにお願いして、お礼を申して、なかなか話が先へ進みませんねえ」

珍しく筋の通ったことを言うので感心しかけた……その時です。

妹は空いた右手で、何のためらいもなく鼻をほじり始めました。

「玉珠、団扇はどうしたのです?」

「お話の邪魔になりますので、置きました」

「では、もう一度お持ちなさい」

「姉上は、どうして私だけにそんなに風を送らせたがるのです?」

幼姫が笑いをこらえながら団扇を渡すと、玉珠はたいへん親切にされたと思ったらしく、嬉しそうにお礼を言いました。

その様子は、子供が手放した玩具を拾ってもらった時と、さほど変わりません。

妹が再びせっせと扇ぎ始めたところで、私は環珠を誘い、庭の見える廊へ出ました。

屋敷の奥からは、肇が人を呼び、次の対面についてあれこれ指示する声が聞こえてきます。

以前なら文烈様が真っ先に動いていたのでしょうが、今では息子が代わりに家のことを取り仕切っているのです。

あの方がいなくなっても、こうして家は動いていくのですね。

「母上」

「何でしょう?」

「幼姫姉上は、あのように小さくていらっしゃるのに、何でもご存じなのですね」

「何でも、ではありませんよ。知らないことを、怖がらずに確かめられるのでしょう」

「……私にも、できるでしょうか?」

娘の横顔は文烈様によく似ており、特に、自分で何かを決めようとしている時の目元など、懐かしくなるほどです。

ただ、あの方は一度決心すると、周囲に問いかけるより先に動いてしまう人でしたから、環珠にはそのあたりを少しばかり控えてもらいたいところですね。

「できますよ。昨日は子文様ご本人に尋ねたのでしょう。今度は、任城のお暮らしについてお尋ねなさい。答えが気に入らなければ、また考えればよろしいのです」

「嫌なら、止めてもよいのですね」

「もちろん。ですが、今のあなたは、止めるより先に聞きたいことがありそうですね」

環珠は庭へ目を向けたまま、控えめに笑いました。

これまで自分の婚姻について話す時、こんな笑い方をしたことがあったでしょうか。

「私、聞いてみたいことを書いておきます。お会いした時に忘れてしまいそうですから」

「それはよい考えです。ただし、尋問の書き付けにはしないでくださいね」

「母上、そこまでいたしません」

少なくとも、十項目も用意してきたら相手は驚くでしょう、と申し上げかけてやめました。

書くこと自体を止めてしまっては、何のために本人の意思を尊重してきたのか分かりません。

夕刻、幼姫が子供をあやしながら、私のところへやってきました。

手の空いている方で戸を閉める様子まで手慣れていて、頼もしい限りです。

「母上、環珠様から、次のお席についてお願いがあるそうです」

「まあ、もう何か決めたのですか?」

「はい、私にも先ほど相談してくださいました。お話しする内容はご自分で考えたいので、私は近くで控えるだけにしてほしい、と」

幼姫がいてくれるなら、私があれこれ口を挟むこともありません。

娘が自分から話そうとしているのは、喜ぶべきことです。

「それで、私には何を?」

幼姫はなぜか言いにくそうに微笑みました。

「環珠様が、直接申し上げるとおっしゃっています」

ちょうどそこへ環珠が姿を見せました。

私の前まで来た娘は、何か言いかけて一度口を閉じましたが、幼姫に促されることもなく、改めて私を見つめてきます。

「母上、次に子文様とお会いする時は――」

「何でしょう?」

「母上には、席を外していただけませんか?」

劉玉珠でございます。


最近、姉上が私の右手ばかり気になさるので、少々考えました。

右手がいけないのでしたら、左手を使えばよいのではないでしょうか?

我ながら名案です。


さっそく試してみたところ、姉上がこちらを向きました。


「玉珠、何をなさっているのです?」

「姉上! 今日は右手を使っておりませんよ!」


私は得意になって、膝の上に置いた右手を見せました。


「ええ、見れば分かります。それで、左手は何をしているのです?」

「こちらでございます」


鼻から指を離して見せると、姉上は額に手を当ててしまいました。


「……あなたは、何と戦っているのですか?」

「姉上でございます」

「私を敵にしないでください!」


おかしいですね……

いつも私の邪魔をなさるのは姉上なのですが?


それにしても、左右の手を両方見張るなんて、姉上もお忙しいことです。


……ですが、私はもっとよい方法を思いつきました。


今度こそ、姉上にも止められないはずです。

ふふふ……次こそ勝ってみせますよ!


さて、何を使うかは、まだ内緒でございます。

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