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導くカードは正解を知らない  作者: さんご
第一章 導くカード

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8/19

◯の中の例外

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

薬草採取をしばらく続けた。

順調すぎて逆に怖い。


「……順調すぎて怖いな」


(効率がいいだけだ)


「いや、“今のところ”って枕詞がつくだろ」


軽口を叩きつつ、新たな◯へ向かう。


だが、空気が揺れた。

葉の擦れる音ではない。


――金属。


「……戦ってる?」


(そのようだな)


「おいおい……◯だぞここ」


(通常は価値がある地点だ)


「安全とは言ってないもんな。くそっ、言い返せねえ」


木々の隙間から見えた。

若い女の冒険者。

装備は軽装。動きが荒い。


三体の魔物に囲まれていた。


「まずいな」


(時間の問題だ)


ベルは舌打ち。


「チッ……面倒なことに」


(行くのか)


「当たり前だろ。見捨てるほど割り切れねぇ」


カードがわずかに沈黙。


(……そうか)


ベルは率直に聞く。


「勝てるか?」


(……微妙だな)


「おい」


(“普通にやれば”の話だ。だが“道筋”はある)


視界に戦場が重なる。

魔物の位置、動線、冒険者の隙。


(右の個体、反応が遅い。最初に落とせ)


「了解!」


(次に奥。ただし直行するな。左へ一歩フェイント)


「細かいな!」


(生き残りたいなら黙って従え)


「言うようになったな、相棒!」


(言語理解の成果だ)


ベルは飛び出した。


「おい! 伏せろ!!」


女冒険者が反射的に身を屈める。

その頭上をベルの剣が走る。


一体目、撃破。


(いいぞ。次)


二体目の攻撃をフェイントで空振りさせ、懐へ。

突き刺す。


残り一体。


女冒険者が狙われる。

間に合わない。


(間に合う。走るな。投げろ)


「は?」


(剣を)


「任せた!」


ベルは剣を投げた。

回転する刃。

頭の中で“線”が引かれる。


剣は――魔物の喉を正確に貫いた。


静寂。

森が静けさを取り戻す。


「無茶言うなよ……!」


(成功したから問題ない)


「結果論だろそれ!」


女冒険者が震える声で言う。


「助けて、くれて……ありがとうございます……!」


ベルは手を振った。


「気にすんな。通りすがりだ」


(嘘だな。“◯”に導かれた)


「うるせえ」


ベルはカードに意識を向ける。


「なあ。なんでここ、◯だったんだ?」


カードは少し考える。


(結果的に“利益”があった。薬草も取れた。経験も積んだ。そして――“助けた”)


「……利益って、人助けも入るのかよ」


(価値の一つだろう)


ベルは小さく笑った。


「じゃあ◯は“安全”じゃなくて、“価値がある場所”なんだな」


(ああ。安全とは限らない)


「面倒くせえけど、冒険っぽいな」


二人は歩き出す。

◯と✕の意味は、少しずつ深まっていく。

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