値段と謝罪のあいだ
数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。
この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。
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なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。
言語が通じるようになると、逃げ場がなくなる。
誤魔化しが効かない。
ベルは机の上のカードを見つめた。
「なあ、相棒……さっきのギルドの件なんだけど」
(“いくらになるか”ってやつか)
「うっ……!」
(どういうつもりだった)
「違うんだ! いや違くはないけど違うんだ!」
(どっちだよ)
ベルは頭を抱える。
「売るつもりじゃなかった! 価値を知りたかっただけ!」
(価値、ね)
「ごめん!」
(別に怒ってない)
「怒ってるって!」
(怒ってない。評価してる)
「評価!?」
(“ああ、こいつはそういうやつか”って)
「うわあああ!! ごめん!!」
ベルは必死に本音を絞り出す。
「怖かったんだよ。こんなすごいもん持ってていいのかって」
「俺、弱いし……知られたら奪われるかもしれねぇ」
「だから、“金に変えられるなら安全かも”って一瞬だけ思った」
カードは少し黙って。
(……合理的だな)
「だろ? でも、嫌だった」
「お前を“物”として見てるみたいで」
ベルは深く頭を下げた。
「本当に、ごめん」
沈黙。
(顔を上げろ)
ベルが顔を上げる。
(別に薄情だとは思ってない。人は価値を測る)
「……」
(重要なのは、そのあとだ。“それでもどうするか”)
「……俺は売らなかった」
(それで十分だ)
ベルは息を吐いた。
「これからは、ちゃんと聞く。お前の意見」
(……なら遠慮はしない)
「おう、どんと来い」
(まず無計画な突撃癖を直せ)
「いきなり説教かよ!?」
(命に関わるからな)
「ぐっ……」
笑いがこぼれる。
“価値”と“関係”が、ここで線引きされた。




