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導くカードは正解を知らない  作者: さんご
第一章 導くカード

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19/21

少女と光る箱

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

「……料理だけじゃ足りないわね」

朝食の席で、エリナは唐突にそう言った。


公爵は危うく紅茶を吹きそうになった。


「足りないとは……?」


「料理は人を幸せにできる。でも、もっと直接的に生活を変えられるものが必要だと思うの」


「直接的……」


「例えば、夜でも明るい灯りとか。水を楽に汲める仕組みとか。重い荷物を運ぶ道具とか」


公爵は眉をひそめる。


「……職人の領分では?」


「そう。でも職人は“今あるもの”を作るでしょう?」


「私は、“まだないもの”を作りたいの」


(ろくな予感がしない)


その日の午後。

エリナは屋敷の倉庫にいた。

机の上には古い魔石、鉄片、銅線、ガラス瓶、木箱、革紐。

完全に怪しい。


「……で、何を作るの?」


(まずは簡単なものからだ。“持ち運べる灯り”を作る)


「ランタン?」


(もっと明るくて、火を使わない)


「そんなのあるの?」


(ある)


「……カードって、本当に何者なの」


(知らん)


「知らんで済ませることじゃないのよ」


カードは気にせず説明を始めた。

魔石の性質。術式。制御。


「……待って。“制御回路”って何?」


(魔力の流れを決める道筋だ。水路みたいなものだと思え)


「魔法ってもっと感覚でやるものじゃないの?」


(感覚でやるから事故るんだ)


(魔法も現象だ。現象なら再現できる。再現できるなら道具に落とし込める)


エリナはぽかんとした。


「……日本出身なのに?」


(日本にも技術者はいる)


「いや、でも魔法ないでしょ」


(ないからこそ“仕組み”で考える癖がある)


エリナは妙に納得した。


数時間後。

小さな木箱が完成した。

中央に透明な魔石。側面に細い金属線。蓋に小さなスイッチ。


「……本当に点くの?」


(やれ)


エリナはスイッチを押した。


ぱっ、と。

部屋が白く照らされた。


「――っ!」


蝋燭より明るい。

煙も出ない。

熱くもない。


「すごい……!」


使用人たちが集まる。


「うおっ、まぶしっ!」

「なんですかこれ!?」


公爵もやってきて固まった。


「……戦争が変わるな」


エリナは少し黙った。


(技術は善でも悪でもない。使う人間が決める)


白い光は静かで、綺麗だった。


「……もっと作ろう」


「今度は水を運ぶ道具。その次は冬でも暖かい服」


(やれやれ。料理で世界制覇の次は、発明王か)


「いいじゃない」


「ベルが助けた命なんだから。せっかくなら、世界を変えるくらいしてみせるわ」

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