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導くカードは正解を知らない  作者: さんご
第一章 導くカード

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20/20

与えられた領地

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

公爵は執務室で一枚の報告書を見ていた。

厨房の使用食材の変化。

保存食の効率向上。

夜間灯具の試作品。

作業時間の短縮。

商人からの問い合わせ。


すべて、エリナが始めたことだった。


「……信じられん」


ついこの前まで部屋に閉じこもっていた娘が、今では厨房と倉庫を走り回り、何かを作り続けている。

しかも成果は確かだった。


執事が報告する。


「灯りの箱、夜警隊から正式に欲しいと話が来ています」

「保存食も、冬越え用に欲しいと」


「……そうか」


公爵は窓の外を見た。

庭の向こうで、エリナが職人たちに何かを説明している。

真剣な顔。

時々、笑う。


「……私は、間違っていたのかもしれんな」


公爵は自嘲気味に笑った。


「危険から遠ざければそれで良いと思っていた」


だが違った。

エリナは退屈していた。

外へ出たい。誰かの役に立ちたい。

その気持ちを持て余していた。


だから森へ飛び出した。

そしてベルと出会った。


「……あの青年には感謝せねばならんな」


数日後。

エリナは公爵に呼び出された。


「……何かやらかしました?」


「なぜそうなる」


「最近、倉庫の壁を一回だけ爆発させたので」


「一回でも十分だ」


公爵は地図を広げた。

川、畑、森、小さな村。


「北西の外れにある小さな領地だ」


「……領地?」


「お前に任せる」


「……え?」


「村が三つ。農地と林業が中心だ。大きくはないが好きに使え」


「いや、待って。私、まだ子供ですよ?」


「知っている」


「失敗するかもしれませんよ?」


「するだろうな」


「税とか政治とか、全然分かりませんよ?」


「だから学べ」


公爵は静かに言った。


「お前は、役に立ちたいのだろう」


エリナの肩が小さく揺れる。

見抜かれていた。


公爵はゆっくり立ち上がり、エリナの頭に手を置いた。


「家に閉じ込めておけば守れると思っていた。だが、お前は違った」


「失敗してもいい。泣いてもいい。困ったら戻ってこい」


「だが、一度やってみろ」


その言葉は不器用だった。

優しさに慣れていない人間の、精一杯の愛情。


エリナは目を伏せ、そして。


「……やります」


小さく、だがはっきり。


「私、やります」


公爵は少しだけ笑った。


「そうか」


その日の夜。

エリナは自室で地図を広げていた。

考えることは山ほどある。

不安もある。

怖さもある。


だが、あの日の森で止まっていた自分とは、もう違う。


(領主ごっこか)


「違うわ」


「これは、世界征服の第一歩よ」


(やっぱり発想が侵略者なんだよな)


エリナは久しぶりに声を上げて笑った。

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