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導くカードは正解を知らない  作者: さんご
第一章 導くカード

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17/20

小さな台所の革命

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

「……料理?」

エリナは机の上のカードを見た。

数日ぶりに少しだけ部屋を出て、中庭に面した小さな食堂へ来ていた。


(気分転換だ)


「なんで料理なの」


(人間は食う生き物だからな。精神が沈んでいる時は、身体から立て直すのが早い)


「……」


(あと、お前の屋敷の料理、正直あまり面白くない)


「それは言っちゃ駄目でしょ……」

公爵家の料理人が聞いたら泣く。


カードは続ける。


(焼く、煮る、蒸す、揚げる。香辛料。発酵。保存。人間は戦争より長く料理をしてきた)


「なんでそんなことまで知ってるの……」


(知らん。知っている)


本当に謎だった。


「……じゃあ、本当に美味しいもの作れるの?」


(作れる。少なくとも、屋敷の“茹でて塩を振るだけ”よりは遥かにましだ)


「ひどい言い方……」


だが、興味は湧いた。

エリナは厨房へ向かった。


料理人たちはぎょっとする。

普段ほとんど厨房に来ないお嬢様が、突然エプロンをつけて立っている。


「エ、エリナ様……?」


「今日は、私が作ります」


「え?」


「少しだけ、台所貸してください」


ざわつく空気。

誰もが不安そう。


だがエリナはカードを机に置き、袖をまくった。


「で、何作るの?」


(肉と卵とパンはあるか)


「あるけど」


(よし。“挟む”)


「……挟む?」


薄く切った肉に塩と香草。

小麦粉、卵、砕いた乾燥パン。


「え、揚げるの?」


(揚げる)


油に入れた瞬間、じゅわ、と音。

香りが広がる。

厨房の空気が一瞬で変わった。


料理人たちが振り返る。


「……なんだ、この匂い」


揚がった肉は黄金色。

パンを切り、葉野菜、果実酢のソース、揚げた肉、さらに野菜。

最後に少し辛味のある粒を混ぜた白いソース。


「……できた」


(挟め)


エリナは恐る恐るかぶりついた。


「……!」


衣はさくり。

肉は柔らかい。

酸味が重さを消し、野菜が爽やか。


「おいしい……!」


料理人たちも恐る恐る食べる。


「……っ!」

「な、なんだこれ!」


一気に厨房が騒がしくなる。


カードは少し得意げだった。


(料理とは、味だけじゃない。食べやすさ、温度、香り、手間、保存性。全部だ)


エリナは久しぶりに笑った。

ほんの少しだけ。


「……変なの」


(何がだ)


「こんな時に、料理で笑うなんて」


カードは少しだけ黙った。


(生きている限り、人は腹が減る)


(だから食う。食って少し元気になる。元気になったら、また少し前を向ける)


夕日が沈みかけていた。


「……これ、名前は?」


(“サンドイッチ”でいいだろ)


「サンドイッチ……」


聞いたことのない名前。

だが、不思議と嫌いではなかった。

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