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導くカードは正解を知らない  作者: さんご
第一章 導くカード

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14/19

箱入り娘、刃を持つ

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

城下町は、どこか整いすぎていた。

石畳は欠け一つなく、露店の配置すら美しい。

警備兵の巡回は正確で、空気に“管理”の匂いがある。


「……なんだこの安心感」

ベルジュールは宿の窓から通りを眺めながら呟いた。


(領主の統治が行き届いている証拠だな)

「行き届きすぎだろ」

(過保護とも言う)

「だな」


――バンッ!

扉が勢いよく開いた。


「ベル!準備できました!」


現れたのはエリナ。

軽装の鎧。腰には剣。


「……雰囲気、変わったな」

ベルは目を細めた。

立ち方、視線、重心。

すべてが“整っている”。


「ふふ、分かりますか?」

「帰ってから、ちゃんと修行しましたから!」


(ほう)


「……あの短期間で?」


「はい!」


「……あの親父、過保護すぎるだろ」


(“安全な範囲で最大効率”を叩き込んだな)


「教育ってレベルじゃねえぞ」


エリナは首をかしげる。


「?普通ですよ?」


「どこがだよ!」


――森。

前回と同じ場所。


「行きます!」

エリナが先に踏み出す。


「おい、待て――」


止める間もなく魔物が現れる。

二体。


前回なら危険な数。

だが。


「はっ!」

一閃。

正確な軌道。

無駄のない踏み込み。


一体が崩れる。


「なっ……」


回避、反撃。

もう一体も沈む。


静寂。


「……え?」

ベルは素で間抜けな声を出した。


「終わりです!」

エリナはにこっと笑う。

息一つ乱れていない。


(……完成度が高いな)


「強くなりすぎだろ!」


「そうですか?」


(短期間でここまで仕上げるのは異常だ)


「だよな!?」


「あ、でも。先生が“実戦ではまだまだ”って言ってました」


「その先生連れてこい」


(基準がバグってるな)


さらに進む。

魔物が三体。


ベルも動こうとするが――


「任せてください!」


エリナが前に出る。

連撃。

流れるような動き。

一体、二体。

残り一体も時間の問題。


「……マジかよ」

ベルは完全に観戦モードだった。


「どうですか!」

エリナが振り返る。

期待に満ちた目。


「……すげえよ。この辺りじゃ敵なしだな」


「本当ですか!」

顔がぱあっと明るくなる。


(事実だな)


「……ほんと、何されたんだよあの数日で」


「えっとですね。朝から基礎訓練で、昼は対人戦で、夜は反省と座学で――」


「やめろ、聞いてるだけで疲れる」


(軍隊か何かか?)


だが、ふとベルは気づく。


「……なあ。それ、楽しかったか?」


エリナは一瞬だけ考えて。


「……ちょっと大変でした」


「だろうな」


「でも」

笑う。


「ベルとまた冒険できるって思ったら、頑張れました」


(また来たな、“純粋”)

「刺さるんだよな、これ……」


森の奥へ。


今度はベルが前に出る。


「よし、次は俺の番だ」


(カードは使うか?)


ベルは剣を握り直す。


「……最低限でいい」


(了解)


ベルは自分の感覚で踏み込む。

遅い。荒い。

だが――確実に“自分の動き”だった。


(右、少し甘い)


「分かってる!」


最小限の補助。

それだけで戦いは変わる。


撃破。


「……よし」


エリナが目を輝かせている。


「すごいです!」


「……いや、お前の方がすげえよ」


「そんなことないです!」


ベルは苦笑した。


「……いいな、それ」


(依存もしていない。無理もしていない)


「バランスってやつだな」

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