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導くカードは正解を知らない  作者: さんご
第一章 導くカード

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12/19

純粋という刃

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

屋敷の庭園は静かだった。

整えられた芝生。風に揺れる花々。

その中央に――


「ベルー!」

元気な声が響く。

駆け寄ってくる少女。

ルーデンハイム公爵家次女――エリナ。


「まあな」

ベルは少しだけ気まずそうに笑った。

「呼ばれたから来ただけだ」


「ふふ、言い訳ですね」

無邪気に笑う。

打算がない。

ただ“嬉しい”が、そのまま出ている。


(……分かりやすいな)

「お前な……」


ベルは小さく息を吐く。

「その距離感、普通じゃねえぞ」


「そうですか?」

首をかしげる。

「助けてもらったんですから、当然です」


あまりにもまっすぐ。


「ベルは、すごいです」


「……何がだよ」


「団長にも勝ったじゃないですか!」

きらきらとした目。

疑いなど一片もない。


「本当に、強いんですね!」


その一言が妙に重かった。


「……いや」

ベルは言葉に詰まる。

「……あれは」

続かない。


(言うのか?)


「……」

ベルは黙る。

言えない。

“全部が自分の力じゃない”なんて。


この純粋な視線に、どう向き合えばいいのか分からない。


「……すげえな、お前」

代わりに出たのは別の言葉だった。

「こんな俺を、そこまで信じられるの」


エリナはきょとんとする。


「変なこと言いますね」

そして微笑む。


「だって、目の前で見たんです」


一歩、近づく。


「助けてくれた時も、団長との戦いも」


「嘘じゃないです」


その距離の近さに、ベルはわずかにたじろぐ。


「ベルは、ベルです」

言い切る。迷いなく。


「それで十分です」


――その言葉が胸に刺さる。


「……っ」

ベルは拳を握った。


(……効いてるな)

「うるせえ……」


エリナは気づかない。

ただ嬉しそうに笑っている。

その姿が、余計に苦しい。


「……ちょっと、外す」

ベルは背を向けた。


「え?もう行っちゃうんですか?」


「すぐ戻る」

足早にその場を離れる。


庭園の外。

人気のない回廊。


「……はぁ」

深く息を吐く。

壁にもたれる。


「……ダメだな、俺」


(何がだ)


「分かってんだろ」

ベルは目を閉じる。


「俺が勝ったの、半分以上お前のおかげだ」


(半分どころじゃないな)


「やめろ」

苦笑する余裕もない。


「なのにさ」

声が少し低くなる。


「全部、自分の力みたいに思われてる」


(事実としては違うな)


「だろ?」

拳がわずかに震える。


「なのに……訂正できねえ」


(なぜだ)


「……怖いからだよ」

短い答え。


「“違う”って言ったら、どうなるか分かんねえ」

「今の立場も評価も、全部崩れるかもしれねえ」

「……それが怖い」


沈黙。

カードはすぐには答えなかった。


やがて。


(それが“依存”だ)


ベルは小さく笑った。


「……だろうな」


(慣れるな。言い訳になる)


「……分かってる」


(使われるな。“使え”)


「……難しいこと言うな」


(事実だ)


ベルは少しだけ頷く。


「次は、もうちょい自分で戦ってみる」


(……ほう)


「全部頼るのは、なんか違う」


(いい判断だ)


ベルは少しだけ笑う。


「……相棒、だからな」


(ああ)


依存ではない。

共存へ向かうための線が引かれた。

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