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導くカードは正解を知らない  作者: さんご
第一章 導くカード

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10/19

礼という名の鎖

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

数日が経った。

薬草採取は順調。

収入も安定し、ベルの生活は穏やかだった。


「……こういうのでいいんだよな、本来は」


(生き延びるには最適だ)


「夢がねえな」


(現実的と言え)


――その時。


コツ、コツ。

覚えのある足音。


ベルは振り返る。


「……またかよ」


黒衣の執事。


「ベルジュール様。再びお目にかかります」


「どうも……」


執事は静かに言った。


「先日の謝礼について、不備がございます」


「不備? 金貨もらったけど?」


「はい。しかしあの形では“個人的な謝礼”に過ぎません」


「それでいいだろ」


「いいえ」


きっぱり否定。


「世間体が悪い」


「……は?」


(来た、“面倒なやつ”)


「他の貴族、冒険者、領民に対し“示し”がつきません」


「俺は別に気にしてねえよ?」


「問題はベルジュール様ではございません。“周囲がどう見るか”でございます」


ベルは天井を仰いだ。


「……めんどくせえ」


(同感だ)


執事は淡々と続ける。


「つきましては、改めて正式な謝礼を。屋敷にお越しいただきたく」


「もういいって!」


「お越しいただきたく」


「聞けよ!?」


執事は、逃がさない微笑みを浮かべた。


(断れると思うか?)


「理屈上は可能。現実は?」


(ほぼ不可能だな)


「だよなあ……」


――後日。


ベルは屋敷の前に立っていた。

巨大な門、整えられた庭園、無駄のない美しさ。


「……帰りてえ」


(今さらだな)


通された広間。

そこに座っていたのは、威厳と静けさを纏う男。


ルーデンハイム公爵。


「娘を救ってくれたそうだな」


「……たまたまです」


「たまたまで、人は救えん」


短い断言。

言葉に重みがある。


「礼を言う」


執事が小箱を運び、ベルの前に置く。


「正式な謝礼だ。開けていい」


ベルが蓋を開けると――金貨。

しかも先日の比ではない。


「……いや、多すぎるだろ」


(桁が違う)


「これ、もらっていいのか?」


「それでも足りぬくらいだ」


ベルは頭をかく。


「なんか、すげえことになってんな」


(◯の延長線だ。礼には鎖がつく)


「礼という名の鎖……やめろ、かっこいいけど怖い」


ベルは箱を閉じる。

重みが手に残る。


それはただの金ではない。

責任。

関係。

そして――世界との接点。


「なあ、相棒」


(なんだ)


「冒険ってさ。思ってたより、でかいな」


(ああ。だから面白い)


ベルは小さく笑った。


「……上等だ」


――しかし、その“英雄扱い”は屋敷の中にも波紋を広げていた。

護衛騎士団に話が入る。


そして、団長が言う。


『本当に君が娘を救ったのか? 実力を示してもらおう。模擬戦だ』


ベルは固まった。


「……え、待って。俺、実力じゃなくて運で生きてるタイプなんだけど」


(運も実力、と言い張れ)


「無理があるわ!」

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