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【第18話:南国の海が荒れている? ちょっと波の「お片付け」をしてまいりますわ】


レイヴン様にお姫様抱っこで寝室へと連れ込まれ、じっくりと熱い朝のご挨拶をされてから数日。

私はガウンをしっかりと羽織ることを条件に、ようやくプライベートビーチへ出ることを許されていた。


「やっぱり、南国の海はとっても気持ちが良いですわね!」


白い砂浜に裸足を浸し、私が満面の笑みを浮かべていた、その時だった。


ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!


突如として、穏やかだった海の水平線が真っ黒に染まり、天を突くような超巨大な魔導津波が巻き起こった。

見れば、海の向こうから大砲を並べた物々しい密輸船――他国の不届きな海賊ギルドが、このリゾート地を襲撃しようと攻め寄せてきている。


「ヒャーッハッハ! 帝国の皇帝夫妻がバカンスに来ていると聞いてな! この禁忌の複合魔導術式で作った大津波で、何もかも海の藻屑にして身代金をふんだくってやるわ!」


拡声の魔導具から、海賊たちの下品な高笑いが響き渡る。

しかし、大波の裏側に流れる術式の構成を見た私は、ふふっと楽しげに両手を叩いた。


(まあ。海の真ん中に、あんなに埃っぽくて不格好な術式のゴミが浮いているなんて。せっかくの綺麗な景色が台無しですわ。ちょっとお片付けしてしまいましょう!)


私は砂浜から一歩進み、寄せる波打ち際にそっと手のひらを浸した。

ちょっとしたお掃除の時間だ。


大津波を維持していた不届きな術式を一瞬で綺麗さっぱり初期化デリートする。

ついでに、海の向こうにいる海賊船の動力源(魔力コア)も「お掃除」して、ただの木屑に変えてあげた。


ザパァァァン……。


さっきまでの世界滅亡級の大津波が、まるで嘘のように。

ただの心地よい、さざ波となって私の足元を優しく濡らした。


「は……? え? 大津波がただの打ち水に……!? しかも船の魔力が完全に空っぽになって動かねえぞ!?」


「バ、バカな! 術式干渉の形跡すらねえ! おい、手漕ぎだ! 手漕ぎボートを出して必死に漕いで逃げろ!!」


動力の魔力を私にすべて吸い取られた海賊たちは、水すら出ない元の国のエドワード様たちと同じように、南国の炎天下の中、二人乗りの小さな手漕ぎボートで「お前の漕ぎ方が遅いんだよ!」と醜い泥仕合を繰り広げながら、必死に波間に消えていった。


「……さすがはエルサ様、本日も素晴らしいお片付けです」


砂浜の隅に設置した遠隔通信の魔導具から、キース様の死んだ魚のような声が響く。


「海賊ギルドが数十年かけて構築した禁忌の複合術式を、砂浜で涼みながら一瞬でデリートするとは、相変わらず世界の常識への冒涜が過ぎます。ただいま、海賊たちの全資産を帝国で完全買収(奴隷化)する手続きをしてまいりました。胃がキリキリ痛むので、私はこれで胃薬をボリボリと噛み砕く作業に戻ります」


通信が切れた瞬間、背後からもの凄い勢いで抱きすくめられた。


「エルサ……っ!! 無事か!?」


銀髪を激しく乱し、美しい紫の瞳を鋭く尖らせたレイヴン様が、息を切らして私を背後からホールドしていた。


完璧な冷徹皇帝の鉄仮面ポーカーフェイス

唇をきゅっと引き結び、表向きは一言も喋っていない。

だが、彼の頭上に浮かぶ【好感度:∞】のメーターは、主の沈黙を無視して真っ赤に燃え上がり、パチパチと激しい火花を散らしている。


((((((あああっ、無事でよかった……! 本当に無事でよかった!! だが待て、海を一瞬で片付けるなんて我が妻ながらどれだけ規格外なんだ!? 砂浜にちょこんと佇む姿も、ガウンの隙間からチラリと覗く濡れた生足も、全部が凶器レベルに可愛すぎる!! 尊い……尊すぎて心臓が破裂しそうだ!! 恐怖と愛おしさで頭がどうにかなりそうだし、こんなに煽情的で可愛いお前を今すぐ誰の目にも触れない場所へ閉じ込めて、骨の髄まで愛し尽くさねば俺の理性が完全に大決壊してしまう……っ!!!))))))


(まあ! レイヴン様ったら、一言も喋らないけれど、メーターの光り方がもの凄い勢いで荒ぶっていますわ! 海賊をそんなに怖がっていらしたのかしら?)


「レイヴン様? ご心配なく! ほら、ゴミ拾いをしただけですから、とっても元気ですよ?」


私が満面の笑みで振り返ると、レイヴン様は形の良い男らしい喉仏をごくりと激しく上下させ、ハァ、ハァ、と熱い吐息を私の首筋に吹きかけた。


「……いや。お前がそんなに優しく笑うから、俺の理性が完全に狂った。海などもうどうでもいい。今夜は、お前をコテージの寝室から一歩も出さない」


どこまでも低く、スマートで高貴なテノール声。

しかし、ガウン越しに私を抱きしめる逞しい腕 of 力は、骨が軋むほどに強く、一生私を逃がさないという凄まじい執着に満ちていた。


((((((エルサ、エルサ、エルサ……! お前の柔らかい体温と甘い香りが肌に伝わるたびに、俺の頭の中はもうお前をどうやって愛し抜くかで埋め尽くされているんだ! 一生この腕から離さん、今夜はベッドの上でお前がふえぇと泣くまで何度も何度も激しく、とろけるほどに愛し尽くしてやる……っ!))))))


(まあ、抱きしめる力がもの凄いですわ……。メーターも真っ赤なまま激しく点滅していますし、本当に過保護で愛おしい旦那様ですわ!)


熱すぎる彼の体温と、肌に触れる逞しい腕の熱量に、私の胸の奥もトクトクと甘く激しく高鳴ってしいく。

私が真っ赤な顔で、彼の広い胸板に大人しくしがみつくと、レイヴン様は愛おしさに耐えかねたように深く息を漏らし、私の濡れた髪を愛おしそうに掻き揚げ、耳元や首筋に、頭の芯まで痺れるような深くて濃厚なキスを何度も落とした。


その頭上の【∞】のマークは幸福のあまりドカンと大爆発を起こし、南国の砂浜を眩い黄金の光で満たし続けたのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!



不定期に18時更新予定です。毎日更新出来るように頑張ります!お楽しみに!



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