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【第16話:新婚旅行は南国の楽園へ! 陛下の鉄仮面がまぶしさに耐えかねて震えています】


後宮の不穏分子(ルドル侯爵家)を物理的にも経済的にも完全買収した、その翌週。

私たちは、帝国南方にある最高級のリゾート地へ向かう馬車の中にいた。


「エルサ様を狙う不届き者を一掃したのは良いですが、お二人が四六時中、執務室で熱烈な行為に励まれては私の心臓が保ちません。新婚旅行と称して、今すぐ帝都から出て行ってください」


そう言って、ひどいクマを作ったキース様から胃薬の空き箱と共に強制休暇を渡されたのだ。


「海のお掃除ができるなんて、とっても楽しみですわ!」


私は馬車の窓から見える青い空に、満面の笑みを浮かべていた。

しかし、帝国の超高級馬車はふかふかで快適なのだが、少しだけ問題があった。


(……なんだか、いつもより密室が狭く感じますわ。それに、ドレスの胸元が相変わらず窮屈で……)


私がドレスの飾り紐を少し緩め、胸元をパタパタと煽りながら、ふぅ、と息を吐き出した、その瞬間だった。


ガタガタガタガタッ!!!


突然、対面に座っていたレイヴン様の手が、まるで強敵と対峙した騎士のように激しく震え出した。

見上げると、彼の美しい銀髪の下の耳の尖端が、隠しきれずに真っ赤に染まっている。


表情自体は、いつも通りの冷徹で美しい皇帝の鉄仮面ポーカーフェイス

唇をきゅっと引き結び、一言も喋っていない。


だが、彼の頭上に浮かぶメーターは、主のポーカーフェイスを完全に裏切って大暴走していた。


【好感度:∞(測定不能)】


いつもなら黄金に輝いている【∞】のマークが何故か見たこともないほど真っ赤に染まっている。


外に向けては完璧な無言のレイヴンだが、その内心の二重かっこ内では、狂おしいほどの熱い激情が渦巻いていた。


((((((おい待てエルサ、そんな無防備にドレスの胸元を緩めるな……っ! この狭い密室で、お前の甘い香りと、ドレスから解放されようとする膨らみをこれ以上見せつけられたら、俺の理性が皇帝としての誇りごと今すぐ跡形もなく消し飛んでしまう! 眩しい、尊い、可愛すぎる……!! 今すぐその細い身体を押し倒して貪り尽くしたいのを、どれほどの執念で堪えているか分かってくれ……っ!!!))))))


(まあ! レイヴン様ったら、一言も喋らないけれど、メーターの光り方がもの凄い勢いで赤くなって荒ぶっていますわ! 旅の興奮で魔導の数値が昂ってしまわれたのかしら?)


「レイヴン様、ご心配なく! 少し窮屈なだけですから。……それより、お疲れのようですわね? 手がもの凄く震えておりますよ」


「……いや。お前が、あまりにも……眩しいだけだ」


レイヴン様は形の良い男らしい喉仏をごくりと激しく上下させた。


完璧な鉄仮面を保とうとしているが、その紫の瞳は、エルサの緩んだ胸元から必死に視線を逸らそうと泳いでいる。


圧倒的な愛おしさに打ちのめされているのが、その限界寸前の佇まいから痛いほど伝わってきた。

レイヴン様はスマートな動作で席を立つと、私の隣へ移動してきた。


驚く間もなく、彼の逞しい両腕が私の腰をすくい上げ、そのまま彼の太ももの上へと引き上げられた。

いわゆる、膝上抱っこの姿勢である。


「ひゃんっ、レイヴン様……っ!?」


「大人しくしていろ。……こうして、俺の胸に顔を埋めていれば、窮屈さも和らぐだろう」


どこまでも低く、スマートで高貴な声。

しかし、私を抱きしめる逞しい腕の力は、骨が軋むほどに強く、一生私を逃がさないという執着に満ちている。


((((((お前の柔らかい体温と甘い香りが肌に伝わるたびに、俺の頭の中はもうお前をどうやって愛し抜くかで埋め尽くされているんだ! ふえぇ、とか可愛い声を出すな理性のタガが完全に消し飛ぶ……っ! 一生このまま馬車から降ろしたくない、俺だけの宝物として今すぐ閉じ込めてしまいたい……っ!))))))


冷徹な仮面の下で、エルサの体温に頭がどうにかなりそうなほど悶え、歓喜しているのがその強い抱擁から伝わってくる。


頭上の【∞】は、さらに見たこともないほどの勢いで真っ赤な火花を爆発させていた。


(まあ、抱きしめる力が凄まじいですわ……。メーターも真っ赤なまま激しく点滅していますし、レイヴン様、心の中では私をよっぽど大切に想ってくださっているのね。本当に愛おしい旦那様ですわ!)


言葉遣いはどこまでも冷徹でスマートなのに、態度とメーターが映し出す熱量が激しすぎる。


熱すぎる彼の体温と、メーターから伝わる凄まじい「∞の感情」に、次第に私の胸の奥もトクトクと甘く激しく高鳴ってきた。


私が真っ赤な顔で、彼の広い胸板に大人しく寄り添うと。

レイヴン様は愛おしさに耐えかねたように深く息を漏らし、私の髪にじっくりと、頭の芯まで痺れるような深いキスを落とした。


その頭上の【∞】のマークは、幸福のあまりドカンと大爆発を起こし、狭い馬車の中を眩い黄金の光で満たし続けたのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!



不定期に18時更新予定です。毎日更新出来るように頑張ります!お楽しみに!



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