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【第10話:世界のバグと、不滅の誓い】


プロスタニア王国が我がガルディニア帝国に完全買収され、地図から消え去って数日。


私はレイヴン様の執務室のふかふかのソファに座り、新しく開発した『自動魔力清浄機』の最終チェックをしていた。


「……エルサ。少し、いいか」


書類へのサインを終えたレイヴン様が、大きな机から立ち上がり、私の隣へと歩いてきた。

見たこともないほど険しいお顔――だけど、その紫の瞳には、私への底知れない愛おしさが揺らめいている。


頭上を見上げれば、そこにはもはや数字の表記すらバグり、白く眩い光だけを放ち続ける【好感度:測定不能(∞)】のメーターが鎮座していた。


レイヴン様は私の隣に腰を下ろすと、私の細い腰を引き寄せ、壊れ物を扱うような優しい手つきで、だけど力強く私を抱きしめた。


「レイヴン様……?」


「前の国のバカどもが消えても、私はまだ安心できない。お前をこの手で完全に守り切るために……私の妻に、この国の皇妃になってほしい。……受けてくれるか?」


耳の裏を真っ赤に染めながら、低い声で紡がれる至高のプロポーズ。


私の小さな手を包み込む彼の大きな手が、またガタガタと激しく震えている。


「はい! 喜んでお受けいたします、レイヴン様!」

私が満面の笑みで胸元をぴったりと密着させて抱きつくと、彼の呼吸が一瞬にして止まった。


その時、私の頭の中に、直接奇妙な『声』が響き渡ったのだ。



【――警告。重要エラー。悪役令嬢エルサの処刑シナリオが消失しました。世界の強制システムを再起動します。周囲の人間への『洗脳ヘイト』を最大値へ強制書き換え――】



(え……? 何、今の声……?)


驚いて身を固くした私だったけれど、次の瞬間、レイヴン様の頭上のメーターから、パキィィィン!という凄まじい硝子の割れるような音が響いた。


赤黒い『世界からの洗脳魔力』が彼の頭上を襲った瞬間、彼の放つ【測定不能】の圧倒的な愛の業火が、その洗脳を跡形もなく焼き尽くしたのだ。


「……エルサ? どうした、急に身体を震わせて」


レイヴン様は何事もなかったかのように、心配そうに私の顔を覗き込んできた。

どうやら彼には今の声は聞こえていないらしい。


(なるほど……。前の国のエドワードやパパたちの好感度が【マイナス500】なんておかしな数字になっていたのは、この『世界の声』とやらが、私を悪女に仕立て上げるために洗脳をかけていたからなのね)


だけど、そんな世界のシステムすら、レイヴン様の私への【5億超えの愛】の前には、1ミリも通用しなかったみたいだ。


「ううん、なんでもありません! レイヴン様が大好きです!」


「っ……、これ以上私を狂わせるな。今すぐ寝室へ連れて行きたくなる」


レイヴン様は必死にポーカーフェイスを保とうと顔を強張らせながらも、私の首筋に深く顔を埋めて、熱い吐息を漏らした。


(世界のシステムさん、バグだらけで非効率な洗脳なんてやめて、私の魔導技術で綺麗に書き換えてあげましょうか?)


世界そのものへの『お片付け』のアイデアを思いつき、私はレイヴン様の腕の中で、クスクスと楽しそうに笑うのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!



不定期に18時更新予定です。毎日更新出来るように頑張ります!お楽しみに!



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