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【第二部開始】初心者マスターとポンコツコアの迷宮運営記 〜なんでもありの外道ダンジョンでも独立国家になれますか?〜  作者: 綴木春遥
第二部 北部奪還戦争と黒の手配書<上> Shapeshifter 編

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094.The Deluge


 シスターはなんとか無事に落とし穴から這い上がって来てアスティに引っ張り上げられて事なきを得た……はずなのだが、何故か正座をしながら存在もしない神か何かに祈りを捧げながらしくしくと泣いていた。


「シスター、ロールプレイして遊ぶのは後にしてちょっと仕事頼みたいんだけど」

「誰がロールプレイよっ! 言われた通りにやってるだけなのにっ! うぅ……しくしく」

「コアちゃんが意地悪するから泣いちゃったじゃん」

「どう考えてもシノミヤの言い方が悪いでしょ」


 確かに俺が言ったことだけど仕事は仕事で頑張って欲しい。


「現状、北部を襲撃しようにも本来運搬の要だったフェルがリスポーンしていない。だから、シスターには先に南に向かって貰ってヒナトとかいう街が本当に壊滅しているのかっていうのと、そのもっと南にある領都ってのの様子を見て来て欲しいんだ。空が飛べるならいけるよね?」


 シスターは一度しっかり九階層に落ちたあとは自力で飛んで戻って来た。予想通り背中に翼が生えていて修道服の肩甲骨周辺に穴が空いていて少しエロい。


「それって偵察ってこと? この私が?」

「別に嫌ならアスティに頼むけどさ、せっかく悪魔らしい翼生えてるのにそこで役に立てないと本当にシスターになっちゃうよ」

「……やるわよ」


 ちょっと煽ったら乗って来た。シスターは割とちょろいのかもしれない。


「シスターが行くならアスティはお留守番なのです?」

「うん。アスティは俺の護衛ね。もう少ししたらグレイスが帰ってくるだろうから俺に噛みつかないようにして」

「了解なのですっ!」

「ガーディアンの使い方が間違ってるわ」


 コアちゃんからは冷たいツッコミが来たけど、実際グレイスに噛みつかれてると地味に邪魔なんだ。フェルはフェルで力は借りたいけど匂いがきついのに人懐っこいし早く遠くに追いやりたい。


「そういう訳だから、イビルアイも何匹か連れて行っていいから頼まれてくれない? 働いてくれたら今夜はお祈りしなくてもいいから」

「本当!? 何にも祈ってないのに哀愁を漂わせながら無意味な正座しなくてもいいの!?」

「いいよ、なんなら今夜はベッドで寝てもいい」

「フフン! 侯爵令嬢のことをよくわかってきたみたいね! 偵察くらい簡単な仕事パパッと終わらせてくるわよ!」


 そう言って得意げな顔でコアちゃんにイビルアイとセットでシスターはダンジョンの外に転移していった。

 ベッドって我が家には一個しかないんだけど意味わかってるかな? まあいいか。


「あ、オークたちとゴーレムの模擬戦が終わったわよ」

「お、どうなった?」


 シスターがふざけてる間にゴーレムの戦力調査は進んでいたらしい。


「武器と防具をしっかり揃えたオークを五体送ったけどゴーレムはピンピンしてるわね。物理攻撃耐性は良さそうよ」

「なるほど、じゃあ弱点は魔法になるのかな?」

「ゴーレムが土属性だし、そもそも魔法生物みたいなものだからそっちもある程度の使い手じゃないとEとかDとかの冒険者には難しいかもねー」

「そりゃいいね。D級までの足切りゾーンか。てことは五階層あたりまでがそれ以下の足切りゾーンだな。単純で分かりやすい」


 五階層までは単純に個で強いのはオークだけ。その代わり多様なモンスターを配置しているし、四階層から上はミミックを筆頭に擬態モンスターやトラップも用意してある。

 こちらから教えることはないけれど、冒険者ギルドみたいなのがあるならゆくゆくは自分たちで適正階層を見つけていくことだろう。


「ところでコアちゃんさ」

「んーどしたん?」

「フェルが死んだ後のボウルってどうなってるの?」


 コアちゃんのバカ過ぎるアイデアで創り出されたボウルはそこそこでかいし、DPの無駄遣いだ。使い道がないならさっさと溶かしてモンスターの装備に回した方がマシ。


「ダメよ! 一回くらいは走らせてみないと結果なんてわからないじゃない!」

「どう考えても途中でひっくり返るでしょあんなもん。あれにモンスター入れて運んだら村に着く頃には好み焼きになってるよ」

「お好み焼きってなーに?」

「えーと、それは大阪……いや広島? 京都だっけ? なんかそこら辺の——別にそれはいいんだよ。地味な地雷を踏ませようとするのやめてよ。せめて燃えるならもっと派手なのがいいよ」

「Abyssal Infinite Overlap Spell みたいな?」

「その話は二度とするんじゃあないよ」


 黒歴史を掘り返していいのは一度目までだ。擦りすぎたら笑えないんだから。


「でもさー、いざとなった時のためにちゃんとした魔法の詠唱を録音しておいたら便利じゃない? あの変なオトコオンナが来た時とか」

「ラグネルな。だとしてもまたあんな思いはしたくないから今は無し。それよりボウルの話でしょ」

「違うわよ。七階層をどうするかの話でしょ?」

「……あれ? そうだったっけ?」

「そうよ。戦争の準備してるのにボウルなんて気にしてる場合じゃないでしょ」

「確かにそうかも」


 これは正論だけど良い正論。誰だよボウルとか言い出したやつ。例の無限詠唱だって気持ちとしては拒絶したいけど、この前みたいなことを考えたらぶっちゃけ本気でヤバい時用に準備するのは有りだし、ボウルなんてどうでも……あれ?

 なんか騙されてる気がするけどまあいっか。


「それでコアちゃんや、そう言うってことはもしや七階層のアイデアがあるの?」


 俺は森を作るつもりで居たけど、コアちゃんに案があるなら別にそれでもいい。


「そうなの! すっごいアイデアがあるのよ! シノミヤを喜ばせる為の女型のモンスターをたくさん呼べるフロアにするの!」

「うおお! マジか! そんなのあるなら早く言ってよ! それ作ろうすぐ作ろう!」

「オッケー! じゃあ七階層……水没!」

「え?」


 スクリーンに映し出された、何もない第七階層の広い空間の壁や天井から滝のように水が流れ、床からは水が湧き、あっという間に第七階層が水で満たされて——第六階層へ続く穴へと吐き出されていく。源泉掛け流しにも程がある。


「コアちゃん、六階層が天空の積乱雲の中にある浮遊島みたいになってるんだけど」

「あれぇ?」

「お空から滝が流れていて荘厳なのです」


 六階層の構造の関係で天空螺旋階段になっていたために、七階層の床には穴が空いている。そこから滝のように水が流れ、水は山を削り、フロアの外周はまるでビーチのよう。

 六階層の難易度が爆上がりして七階層と繋がる階段はもはやどう登るのか。登ったとて、風呂の栓が抜けたように激しい水流が待ち構えている。

 もはや足切りゾーンとは。


「と、とりあえず七階層のために温めてた新モンスターを紹介するわね?」


 何故かボディカラーをブルーに変えたコアちゃんがピカピカ光る。それは何の感情なの?

 今、六階層に新たに仲間に加わったばかりのゴーレムたちがめっちゃアワアワしながらどんぶらこされてるのにどんな気持ちなの?


「コアちゃん、今からでも遅くないから水を止め……」

「サモン! 超激カワきゅんきゅんマーメイド!!」

「ちょ、超激カワきゅんきゅん人魚(マーメイド)!?」


 本物の人魚!?

 何それ超見たい!

 シスターと違ってガチのモンスター娘ちゃんじゃないですか! それを早く言ってくださいよ!

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