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【第二部開始】初心者マスターとポンコツコアの迷宮運営記 〜なんでもありの外道ダンジョンでも独立国家になれますか?〜  作者: 綴木春遥
第二部 北部奪還戦争と黒の手配書<上> Shapeshifter 編

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088.スキ・キライ


 アスティの闘い方は基本的には大型のハルバードを用いての近接戦闘。重く力強い一撃をミノタウロスの膂力で繰り出す。得物の重量を物ともしない筋力は当然のように全ての動作にも人外の速度を齎している。

 通常形態なら細身のグレイスのスピードに平気でついていくどころか、グレイスの伸びる爪を斧で薙ぎ払ってから蹴りを加えるなど格闘術にも秀でている。

 そこに、中距離攻撃魔法と近距離範囲攻撃魔法の組み合わせ。とても一対一で近接戦闘を挑むような相手ではない。


 そしてグレイス。近距離戦闘型ではあるし、グレイスもまた人外の膂力を有しているが、グレイスはどちらかと言えば機動力を活かし、変形する人体を武器にトリッキーな戦法で翻弄するタイプだ。

 グレイスはグールらしく基本的な攻撃方法は伸びる爪や牙、口のように開く腹から生えた肋骨を顎のようにガチガチと動かし串刺しにするアイアンメイデン。

 他にもグレイスを見ていてこれまでに判明している能力は"貪食再生"グレイスは人肉を喰らうと肉体の損傷を回復する。そうでなくともグールなので肉体の再生能力は高く軽い傷はすぐに塞がる。というか、屍なので傷が致命傷になることはない。そもそもが死んでいる。

 それから、恐らくはグレイスの見た目にそぐわない速度や剛力も何かしらの能力なのだと予想している。何せ、グレイスの元になった肉体はそういう力を持っていた。

 最後に、グレイスはこれまた予想に過ぎないが、確率か何か他に理由があるのかは知らないが、食った人間の天賦とかいう能力を獲得している。イアンの"存在希釈"は何度も見た。偽ラグネルとアスティとの戦闘で見せた"陰影"とかいう影を移動する能力もきっとたくさん食べた人間の中に持ち主がいたのだろう。

 そして——


「ガァルルゥ……ナンドモ、シツコイ」

「グレイス様が相手とはいえ、飼い主様と母さまの前で負けることはできないのですっ!」


 グレイスの骨格がぐちゃりと歪む。関節の無いはずの場所が曲がり、手足が伸びて蜘蛛や水馬のような格好になり、壁に手足の爪で張り付き、走る。


「アステロペテス!」


 アスティの詠唱。ハルバードが青い雷を纏い、それが壁に向かって放出される。上から落とすだけでなく直線でも撃てるのか。


「アタラ……ナ、イ」


 器用に壁を飛び跳ねながら雷撃を躱していくグレイスの存在が薄くなる。雷撃が弾ける瞬間に合わせて気配を消している。確かにあれだけ派手な魔法なら着弾地点が炸裂する瞬間に目はそちらに捉われ易い。能力の使い方に工夫がされている。

 これだけでもアスティと闘ってみた意味はあるだろう。


「どれだけ避けても——網を張れ! ルナボルト!」


 アスティの二つ目の魔法攻撃。前方に扇状に広がる雷撃の網。雷らしく凄まじい速度で構築された網がばちばちと爆ぜる。直撃すれば人間なんて丸焼けになりそうだ。

 グレイスもまた、雷撃網に捕まりそうになって、地面に潜る。


「それはもう見たのですよ!」


 アスティに一番最初に見せた"陰影"で攻撃魔法の範囲外、背後に回り込むが、影から飛び出したところをハルバードの分厚い刃に顎が割られ、首も胸も腹も割られて、肋骨が全て両断される。


「——シネ」


 血の代わりに吹き出したのは黒の靄。アイアンメイデンに封じられていたグレイスが嫌い閉じ込めていた深淵が溢れ出す。


「はーい、そこでストップ! グレイス! 我慢できたら今日は肉多めに食っていいぞ、アスティは何が何だかわからんだろうからとりあえず離れてろ」


 ——思った通りの結末に苦笑い。

 大声で二人を止めて、痛い体で二人の間に割って入る。アスティを突き飛ばし、グレイスを抱きしめる。


「我慢しろグレイス。その焔は本当にアスティを殺してしまう。それに耐えられるのは俺たちだけだ」

「アグゥァァ……シノミ、ヤ……トマラナイ」

「しゃーない。一旦出せ、俺が受け止めてやる」

「オゲロオロロロロ……」

「熱っついなぁこれ……鎮まれ鎮まれ、深淵の灼焔よ、今この場に滅すべきものはいない。来るその時まで闇の底で眠れ」


 グレイスの背中を摩って中身をさっさと吐き出させる。

 黒い靄——黒紫の焔とともに立ち昇るそれを見て予想が当たったのを確信した。

 グレイスは俺の腕を食っている。何ならさっき治療前に余った腕も盗み食いしていた。

 だからこいつは俺の深淵灼焔を身につけているんじゃないかとは思っていた。


 黒紫の焔がグレイスと俺を焼くことなく、俺の体の中へと入り込んでくる。急激に体温が上がって少しくらっとする。

 その代わりに体の傷がだいぶ良くなったのは、俺にとってこの力は回復にも使えるということなのだろうか。新しい発見だ。


「さあ、グレイス。よく頑張ったな。素晴らしい結果だったぞ。飯を出してやるからな」


 適当に余っている死体を二体ほど出してやる。


「ぐるるるる!」


 グレイスはすぐに飛びつきいつも通りハツから食い始め、ふと一度こちらを見る。


「俺の分はいいから、全部食べて回復しろよ」

「がじがじ」


 何故か俺の足首を軽く噛んだ後グレイスは食事に戻った。今のひと噛みはなんだよ。


「アスティ、邪魔して悪かったな。魔法と武術は素晴らしい物だった。これからは是非俺の護衛としてそばに居て欲しい」

「ほ、本当ですかっ!? で、でも最後の攻撃を止めて貰えなかったら……」

「気にするな。グレイスに本気を出させた初めての相手だぞ。過去にどんな敵にもできなかったことだ。味方のお前がそれをやってみせてくれたのは心強いよ。ね、コアちゃん」

「そうねぇ。グレイスにはさっき酷いことを言ってしまったから私も謝らないと。アスティも良くやったわ。アスティのおかげで私も知らなかった仲間の強さを知れたもの。それに、あの魔法を無しにしたらグレイスをあそこまで追い込んだのは実際に素晴らしいことだわ。誇りなさい、アスティ」

「飼い主様……! 母上……! 嬉しくて、ミルクが出てきちゃいました……」


 何言ってんだこいつと思っておっぱいを見たら白シャツが濡れシャツになっていた。

 ガチでミルクでてるじゃないですか!


「まあ、六顔層は今はまだ何もできないし、シノミヤはアスティと一緒に城に戻ったら? もう歩けるみたいだしね」

「そりゃ歩けるけど、全然全快じゃないんですが?」

「アソコは全快みたいだけど」

「わぁお」


 アスティの濡れスケ彼シャツを見て昂っておられる。


「これは、命の危機を感じたが故の本能というやつでな」

「はいはい、建前はいいからやりたいようにやってきなさい。あ、そういえば一番マシな鎧見つけておいたから試しに付けていくといいわ。動作チェックよ」


 そういう訳で病み上がりだというのにコアちゃんに渡された銀鎧をアスティに身につけさせて貰う。もしかしなくともこれはオークに殺されたラグネルの弟のものじゃないだろうか。もう一人の銀騎士は潰れちゃってたはずだし。


「体格の問題はなさそうね。練習用につかっときなさい」

「はいはい、わかったよ」


 そういう訳で銀鎧を着てアスティと魔王城までの階段を登っていく。

 フィーニャの陣痛は続いているようだ。出産って大変なんだなぁと思いながら十階層とコアルームを抜けて魔王城へ。


 テルシアは自分で檻の中に戻ってきていたらしく、じっと座っていた。こいつに関しては色々話す必要はあるが、明日でいいだろう。

 こんな爆乳とミルクを前に構っていられるはずがない。


 俺はアスティの搾乳を手伝って胸の張りを引かせてやるという紳士的理由で、アスティの同意を得てバスルームに向かった。


「……!! …………!!」


 全裸の沈黙の魔法使いが俺をみて顔を真っ青にして浴槽の中で震えていた。

 そういやここに放置してたんだった。それにしてもなんでそんなに怯えてるんだろう?

 アスティのせい? でも戦闘中と違ってアスティの迫力はおっぱいにしかないしなぁ?


「とりあえずアスティ、搾乳の前に鎧を脱がせてくれないか」

「はい! 飼い主様!」


 ガチャガチャと大きな音を立てて鎧を脱ぎ、ようやく服を脱ぐ。アスティも脱ごうとしたのを少し考えて止める。

 バスタブの中で縮こまってるミエレに詰めろと足蹴にしてスペースを確保し、シャワーをオン。


「おお! あったかいお水が気持ち良いのですぅ〜」

「あったかい水のことをお湯って言うんだぞアスティ」

「お湯ですね! 飼い主様は天才——賢者なのですね!」


 水に濡れてスケスケになったアスティが嬉しそうにする。大きな垂れ目、小さな耳と尻尾。その愛らしさを破壊するど迫力Jカップ。


「賢者になるのはもう少ししてからかな」


 とりあえず、搾乳。

 ああ、ミエレもいるなら折角なら手伝わせよう。胸を味わっている間に使う穴があった方が良い。

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