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【第二部開始】初心者マスターとポンコツコアの迷宮運営記 〜なんでもありの外道ダンジョンでも独立国家になれますか?〜  作者: 綴木春遥
第二部 北部奪還戦争と黒の手配書<上> Shapeshifter 編

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099.魔王軍幹部会議


 キングサイズのベッドってのが地球にはあった。俺は実際には見たことがないけど、二、三人が横になれるくらいの大きさらしい。


 なんでそんな話をしたかというと……


「このサイズなら問題ないでしょう?」

「確かにこのサイズならみなさまと眠れるのです!」

「う、うぉw バカでかベッドwww」

「ふ、ふん。アタシは関係ないからねっ」

「ガルルル……フゥー、フゥー……」

「ほらほらグレイス唸るのやめてね、どうどう。シスター、このベッドのメンテナンス係はお前に任命する」


「はぁ!? なんでよ!?」と叫ぶシスターは無視。

 現在、魔王城の寝室は幅六メートル、縦三メートルのキングサイズどころか魔王(デモンキング)サイズのベッドに占拠されている。


 理由はといえば、寝ているところを起こされたグレイスがシスターをアイアンメイデンして殺しかけたからだ。

 深夜か早朝かという時間に始まったベッド争奪戦をなんとかするためにコアちゃんに頭を下げたところ、クソデカベッドが出てきたというわけ。

 コアちゃん曰く「守護者は近くにいた方がいいし、これなら私も一緒に眠れるわね!」らしい。


 そういう訳で、全員でパジャマに着替えて同じベッドにゴロゴロしている。左から順にシスター、俺、グレイス、サメちゃん、アスティ。

 順番は特に決めた訳ではなく流れで。ちなみにコアちゃんは俺とグレイスの顔の間に鎮座している。眩しくてクレームを入れたらオレンジ色の常夜灯のようになってくれている。それでも近すぎて眩しい。ただでさえ暗闇でも目が効くようになってしまっているので寝る時に明かりがあるのはあんまり好きじゃない。


「シスター、話を聞く準備が整ったぞ。報告を頼む」

「はぁ!? この状況で!? これもう寝るんじゃないの!? アタシもう疲れたんだけど!!」

「奇遇だな、俺もだよ」

「うぉw 共感してるw」

「さ、サメちゃん様、今はしぃーなのですぅ」

「がじがじ」

「これだけ人数が揃うと私もふざけていいのかさすがに躊躇うわね」

「いつだってふざけなくていいんだよ」


 でもまあ、実際コアちゃんの言う通りではある。ついに揃っちまったイカれた混沌の群勢(ケイオスレギオン)幹部たち——フェルだけまだ復活してないが。ちなみに、元々俺が使ってたベッドはコアちゃん曰くフェルにあげるらしい。絶対小さいから要らないと思う——全員好き勝手に喋れば収集がつかない。コアちゃんがボケるのを躊躇うなんて正常な判断をする異常事態が発生してしまっている。


「シスターがまずは話をしてくれないと俺たちは全員好き勝手な発言を繰り広げて飽きたら寝るがどうする?」

「ど、どうするって……アンタ魔王としてそれでいいの……?」

「構わん。ではみなども、就寝」

「シノミヤが決めたなら仕方ないわね。私は枕投げをしたかったけど」

「コ、コアw 腕ないwww」

「母さまはどこからでも物を取り出せるので枕の雨を降らせることもできるのですよ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 本当にどうでもいい話で盛り上がりかけてるじゃない! わかったから! わかったから私の報告を聞きなさいよ」

「はぁ……そこまで言うなら仕方ない」

「こんのォ!」


 全く、話を聞くって言った時に素直に話さないからこうなるんだ。

 俺たちバカが軒並み揃って真面目な話が成立する訳ないだろうが。新人はこれだから困る。


「アンタまだなんか変なこと考えてないでしょうね?」

「ノンノン。シスターの報告を待っているだけだよ。魔王軍幹部シスターに偵察の報告を命ずる」

「……は! 魔王様! まずは最寄りのヒナトと思われる街ですが、情報通りに森の南にて発見。街は全て瓦礫に埋もれ、腐臭が空まで漂って来ていました。街の周囲で見かけたのは男が二人、騎士らしき女が一人です。あんな瓦礫の何が大切なのか、獣や野生のモンスターから守るように狩をしながら燃料を集めているようでした」

「ふぇ?」


 急に敬語で話し始めたシスターにびっくりして変な声が出た。さっきまで反抗的だったのにどうしたのこの娘。悪い物でも食べてきたのか?


「シノミヤが命令したからでしょ。この子たちは喋ったり人型の見た目をしているけれど、ダンジョンのモンスターよ。シノミヤが命令をすればちゃんと従うわ」

「あ、ああ……なるほどねー」


 じゃあ最初から命令しておけば良かったのか。確かにコアちゃんの言う通り、三人のことは少し特別視していたかもしれない。

 そもそも三人なんてカウントしてる時点で普段の俺と違ってたんだ。モンスターは体や匹でカウントしていたけれど……見た目があまりにも人間寄りだからなぁ。

 ん? ということはどんなプレイでも……いや、今はやめておこう。さすがにシスターが可哀想だ。可哀想なことは後でにしよう。


「ちなみに、その男二人の特徴ってわかる?」

「上空から見ただけだから詳しくは……でも、一人は大きな盾と槌を持っていたわ。もう一人は金髪の剣士ね」

「良い情報だ」


 十中八九、この前ダンジョンに来たおっさんとラグネルだろう。

 女騎士ってのはよくわからないが、たった三人で街——ですらなくなった廃墟を守りながら燃料集めね。冬でも来るのか?

 いや、腐臭ってことは死体が転がって処理ができてないのか。

 病気に備えてか弔いの為かは知らないが、そこまでして何かを守ろうだなんて病的だな。


「ヒナトのことはもういいや。なんとなく想像がついた。それより南には行けたか?」

「あいつらの目的がわかったの?」

「知り合いなもんでね。それより、続き続き」

「……廃墟からは結構離れたところに確かに大きな街があったわ。途中にも村や町はいくつも。そうね……人口をざっと三桁までで村に区切るなら十以上、四桁を町としたら三つ。それが道中にあって、領都とかいうのはヒナトよりもかなり大きかったわ。数万はいるんでしょうけど、さすがに空からそこまではわからないわね。他の場所も建物の数で見てたてた予測だから正確なものではないわ」

「数千人規模の町が三つに数百人規模の村が十以上か。しかもヒナトから推定領都と思われる街までの間だけで。こりゃ本気で五万の軍隊が有り得るな」


 シスターは南に向かって最短距離で行って戻ってきたのだろうし、西や東に逸れれば伯爵家以外の貴族の街だってあるんだろう。

 テルシアの言っていた五万はフカシではなかったということだ。嫌なところでテルシアの言葉に信頼が持てるということになってしまう。


「一応報告しておくと、まだそれ程大きな軍隊っていうのは揃っていないと思うわ。ただ、千人規模の騎士が街から少し離れたところで訓練をしているのは見かけたわね」

「強さはどんなもん?」

「さぁ? 私はこの世界の人間の強さを知らないもの……でも、少なくとも二人ヤバいのが居たわ。その内の一人にはバレたから殺そうと思って空から魔法で大岩を落としたんだけど、粉々にされたわ。魔法を斬れるタイプね。多分アタシじゃ勝てないレベル」

「マジかよ」


 シスター含めアスティとサメちゃんはゴブリン六十匹分の人魚一匹より遥に上のランクのモンスターの筈なんだが、そのシスターが勝てない?


「言っておくけどアタシの得意分野は魔法。アスティとその変なサメと比較されちゃ困るわ」

「う、うぉw 自己紹介忘れてたwww サメちゃんですwww」

「そういえばここも初対面だったか」

「シノミヤがシスターをすぐに追い出したからねー」

「追い出した?」


 こら、コアちゃん余計なこと言うんじゃありません。仕事を頼んだだけで追い出してないから。

 シスターがこっち睨んでる気がする。あっち向くのやめとこ。あ、グレイスこら、話に飽きたからって首を噛むな痛い。


「ま、まあ……話はわかった。つまり、まだ人間たちが攻めてくるまでは多少の猶予があるようだね」

 

「恐らくだけどね」とシスターの呆れ声。


「そんじゃあ、せっかくフェル以外の全員が揃ったんだ。これから——」

「ヴォォォォォォォ————!!」

「あ、フェルも復帰したみたいね。シノミヤの匂いがついたベッドを舐めてはしゃいでるわ」

「うっわキッモ……」


 なんてタイミングのいい最悪な報告だよ。


「あー、じゃあコアちゃん。フェルにも聞こえるようにしてくれる」

「せっかくならダンジョン中に届けよっか?」

「じゃあそれで」

「うぃー」


 コアちゃんが宙に浮かび白い光を取り戻す。


「傾聴! ダンジョンマスターから貴様らへの命令よ!!」


 こう言う時のノリが分かっているというか、それに乗せられる俺もどうなんだとも思うが。


混沌の群勢(ケイオスレギオン)に告ぐ。我らは本日夜明けと共にアルヴァリア王国フレイズ領北部へ侵攻を開始する。人間と人間の文明文化、あらゆる物を奪い取れ、肉も酒も女も子供も略奪しろ。男も我慢して連れ帰れ。殺したい奴は連れ帰ってダンジョンで殺せ。殺した肉は我らが第一の幹部"貪食"の贄とする。貴様らも犯し孕ませたい女を連れ帰り好きに弄べ。ダンジョンを守る者、命を捨てて奪う者どもよ、これは戦だ。この世の大地を踏み鳴らせ——蹂躙せよ(スタンピードだ)

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