お義姉さん、襲来
レクシアと話した翌日の早朝、アオイはユキカゼ達が持ち帰ったあの水をより詳しく調べていた。
(これは魔力と水、後は…何かの呪い?で構成されてるのは分かった…だとしたら、一体何が原因何だ?魔力が異常に含まれてるから、魔素の溜まり場っぽいけど、あそこは呪いなんか生まれないし…)
思考の沼に片足を突っ込んでいると、扉を勢い良く開けてユキカゼが入って来て、アオイの裾を引っ張って話しかける。
「アオイ、アオイ…」
「…?あぁ、ユキカゼ、どうしたの?」
「クラインが帰ってきた!!」
クライン…?と頭にクエスチョンマークを浮かべていると、ユキカゼが色々説明してくれた。どうやら、クラインさんはユキカゼの両親の養子で、捨てられていたのを拾ったらしい。今までは冒険者として各地を転々とて、今日帰ってきたとの事。
「冒険者のランクはE〜Sまであって、クラインはBランク…凄い」
「そうなんだ…」
「…それで、いつ子供を作るの?」
その言葉に、アオイは少し動揺する。
「え、えっと…結婚してからの方が…」
「…なら、クラインも帰って来たから、結婚の儀式を進めるようお母さんに言っておく…」
「う、うん…」
その表情を少し緩ませ、嬉しそうに尻尾を左右にふりふり揺らしているユキカゼを見て、もうこれ以上先延ばしには出来なさそうだと悟ったアオイだった。
そうして、ユキカゼと共にアオイが外へ出ると、そこには村人達が金髪をポニーテールにした少女と紫髪の少女を囲ってお祝いムードになっていた。
「帰って来たって事は、冒険者ランクはもうBランクに昇格したのか?」
「はい、しかももうすぐAランクに上がれそうなんです」
「凄いじゃないか!!これなら、親父さんと同じSランクも夢じゃないなッ!!」
「あぁ、やっとここまで来たんだからな、ただ登り詰めるだけだ」
「ん、クライン、お帰り」
ユキカゼは嬉しそうな顔をしてクラインと呼ばれた金髪の少女に声をかける。クラインは、ユキカゼを見て喜び…アオイヘ視線を向けた直後、背中に掛けてあった弓を構えて矢を放った。その矢は、一瞬にしてアオイの方へ…
「―――何、してるの?」
だが、ユキカゼが即座にアイテムボックスから純白の斧を取り出して矢を弾いた事により、アオイを穿つには至らなかった。
「何してるんですかッ!?クラインッ!!」
「いや、見慣れねぇ奴が私の大事な妹の隣に立ってたから…な?」
クラインは笑顔を浮かべているが、その目は全く笑っていなかった。ユキカゼはアオイを庇うようにしてクラインに立ちはだかり、紫髪の子はかなり動揺しているのか、あたふたしていた。そして、その光景を唖然として見る村人達。それもそのはず、突然なんの前ぶりもなく人に向かって矢を放ったのだ。静まり返ってしまうのも無理はない。
「おい、てめぇはユキカゼの何なんだ?場合によっては…」
「ユキカゼの婚約者だ、バカ野郎ッ!!」
クラインが矢筒からもう一本矢を取り出そうとした直後、ユキカゼのお父さんの拳がクラインの脳天に直撃、それをもろに受けた為に頭を抑えて悶絶している。
「まったく、このシスコンが…」
「うぐぐ、娘が心配じゃねぇのかよ…」
「はぁ?心配なんかする訳ねぇだろ…ユキカゼが自分の直感で選んで連れて来た男なんだ。それに、俺と手合わせして見せたからな」
「なっ!?ぐうぅ…」
そう言われて、クラインは複雑そうな顔をする。それは、ユキカゼの父がアオイを気に入ったという事でもあるのだ。つまり、アオイはそれ程の力があると言う事になる。
「うううぅ…認めねぇ!!アタシは絶対に認めないからなッ!!」
「おいおい、何子供みてぇな事…」
「勝負だッ!!アタシが勝ったらユキカゼとの結婚を解消しろッ!!」
「…はぁ、バカか?そんなのアオイが承諾するメリットがねぇだろうが」
「むうぅ…なら、アタシがもし仮に負けたら…アタシの事を好きにしていいぜ?」
そう言って、自身に親指を指して胸を張るクラインに、お義父さんは頭を抱えています。まぁ、僕の答えは決まってますけどね。
「え、嫌ですけど?」
「どうだ、受ける気に…は?イマナンテ?」
「だから、嫌です」
「な、なななななな何でだよ!?結構アタシ胸あるし、スタイルも悪くないだろッ!?」
「はぁ…それが?」
「アタシの身体を好きにしていいんだぞッ!?」
「例えば?」
「例えばって、そりゃ…その、エッチな事とか…」
「えぇ…いきなり見ず知らずの人とそんな事するんですか…?」
「なっ!?あ、アタシはそんな変態じゃねえし、それにまだ処女だッ!!」
「なら、尚更お義姉さんと戦う意味が…」
「ん、アオイ…ごにょごにょ…」
その時、ユキカゼがアオイの袖を引いてとある提案をする。その言葉に、アオイは「それなら…」と言って、クラインの勝負を受ける事にした。




