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星霊兵装:コスモダイバー  作者: フユルト
11/13

家族の為ならば

渓谷の大きさ:

縦:69km程度

横幅:5km程度

深さ(水面まで):11km程度

水深(水面から底まで)58km程度



―――そこは、かつて封印された怪物が今尚眠る場所…―――



ユキカゼとシラユキは、暗闇に閉ざされた渓谷を落ちていた。


「うにゅーーーっ!?」


『そろそろですね…』


シラユキがそう呟いたのと同時に、ユキカゼのブーツからジェット噴射のように吹雪が放出され、渓谷内部に溜まった水の水面に叩きつけられる事を回避した。


『…?』


「…どうしたの、シラユキ」


自身に抱きついているシラユキが首を傾げているのを見て、ユキカゼは疑問に思う。


『いえ、少し妙だと…』


「みょう?」


『えぇ…今は私を星霊兵装として纏っているので、マスターは気付かないと思いますが…現在、私達がいるここの温度はマイナス79度なんです…』


「それは…どういう…?」 


『…簡単にいえば、ここはアオイさんがいる上よりも最とっても寒いんです…つまり、水は氷になる筈なんです…ですが、何故かこの水は液体の状態を保っている…つまり、異常事態です』


その言葉を聞いて、ユキカゼは自身の足元を見る。そこには、まるで異常な程の寒さなどないように存在している、あまりの深さに深淵のように暗い水があった。


ユキカゼはシラユキにならばすぐに戻ろうと提案をするが、それに対して待ったをかける。


『ここの水を採取してアオイさんに調べて貰いましょう。絶対に、この水に何があっても直接触れたり口に入れないで下さい…どんな影響があるか分かりませんし、私が対処出来ない可能性がありますので…』


「…ん、分かった」


ユキカゼは試験管で水を採取した後、人差し指でインベントリの機能を内蔵した腕輪に触れ、パネルを操作してその試験管を仕舞った…その時、シラユキはユキカゼの足元から何か影が迫ってくるのを知覚した。


『…ッ!?上昇しますッ!!』


シラユキは即座にユキカゼのブーツから放出する吹雪の威力を上げて、一気に水から距離をとる。直後、水面に写る影がどんどん迫り、先程まで二人が居た場所をまるでトラバサミのように巨大なサメの見た目をした魚の口が閉じる。浮上してきた影響によって、大量の水飛沫が周囲に飛び散りユキカゼ達の方へ向うものも合った。


『アイスウォール…ッ!?』


シラユキが氷壁を空中に展開したが、その水はいとも簡単にそれを溶かし、二人に迫る。シラユキは咄嗟にユキカゼを守るようにして胸に寄せ抱き締める。


…突如薄い膜がユキカゼ達を覆い、その膜が水滴に触れる。僅かに青い膜が抵抗を見せたものの、亀裂が走った直後青い膜が砕け散った。もう駄目だと思ったその時、今度は白い膜が展開された。白い膜は先程と違って二人を守りきり、水が蒸発したように消えたのに合わせて消失した。


「…?」


『これは…アオイさんが仕込んでいたのでしょうか…ちょっと過保護な気がしますけど、今回はそれに助けられたと思いましょう』


シラユキはそう結論づけて、ユキカゼに帰還する事を提案した…だが。


「…どうやって戻るの?」


『…えー、それでは空の旅をお楽しみ下さい…てへ♪』


「待って、まさか…うにゃーーーーッ!?!?」


ユキカゼのブーツから勢いよく吹雪が放出され、上へと急加速する。そして、またしても渓谷には猫耳少女の叫び声が響くのだった…



――地上――…


「た、ただいま…」


「あ、もう帰ってきたの?まだ時間が掛かると思ったのに…」


『すみません、少々異常事態がありまして…』


そして、シラユキは渓谷内で起こった事を話し始めた。渓谷内部に溜まっていた水が、マイナス79度という温度の中液体を保っていた事、そこに巨大な生物に襲われた事、飛び散った渓谷の水が自身の生成した氷の壁を溶かし、アオイの用意したであろうあの膜によって防いだ事を伝えた。


『そして、これがその渓谷内部の水です』


「う〜ん、黒の多い灰色だね…【鑑定】…ッ!?」


アオイはすぐさまユキカゼに近づき、そして抱きしめながら問いかけた。


「ユキカゼっ、本当に触れてないッ!?口に入ったりしてないッ!?」


「だ、大丈夫…」


『大丈夫です…アオイさんが予備で用意していたあの白い膜が守ってくれていたので…』


「うにゅ、白い膜が出てた…」


「白い膜…?それに、あの機能だけじゃ防ぎきれる訳………そうか、あの人か」


アオイはその言葉に疑問を持ったものの、何となく答えに辿り着いたのか、危ない目に合わせた事をユキカゼとシラユキに謝罪して、二人に先に帰っておくように伝えた。



――天界――… 



アオイは、疑問の答えを握る人物に会う為、もう一度天界へ戻って来ていた。そこには、まるでカフェで寛ぎながらタブレットで映画を見るようにして、やはり自分をあの世界へ送ったであろう女神が、あちらの世界を映している空中に浮かぶパネルを見ながら、紅茶を飲んでいた。


「…レクシア様」


「あれ、帰ってきてたの?」


レクシアはとぼけたような声色でアオイに言葉を返す。


「…ありがとうございました」


「うーん、何の事かな?(棒)」


「誤魔化さないでください…レクシア様がユキカゼ達を守ってくれたんですよね?」


明らかな棒読みに、アオイは確信してその問いを投げかける。


「えー?アオイが用意していたあの【魔力吸収型:防御機構】を使ったんじゃないの?」


「…確かに、アレは機能しました…」


「なら…」


「…ですか、あの液体は【魔力吸収型:防御機構】程度で防げるようなそんな生易しい物じゃない事を、貴方が知らない筈ありません…それに、白い膜何か展開しませんよ」 


アオイの否定の言葉に、レクシアは手にしていたカップを戻し、両手を上げて降参のポーズをとる。


「あちゃー…急いでたから魔力の色を変えるの忘れてたか…反省反省」


「それより、いいんですか?神々は極力、自身の管轄外の世界や人に干渉しないというルール、レクシア様自ら定めたんですよね?」


レクシアが行なったのは、紛れもなくアオイの言ったルールに反していた。たとえ、全てを生み出した原初の女神レクシアであっても、全ての神々に絶対条件として通達したルールを破ったというのは非常に宜しくない。


「問題ないよ」


「いやいや…流石に―――」


「その前に…君は私のかわいい子供だよね?」


「え?まぁ、確かにレクシア様の手で作成されましたけど…血の繋がりは―――」


「そして、ユキカゼちゃんは私のかわいい子供のお嫁さんです」


「あ、コレ話通じない奴ですか…」


「つまり、私とユキカゼちゃんは家族という枠組みに入ります…ではここで質問、ユキカゼちゃんの身に危険が迫った場合、義理の親…いや、家族である私がユキカゼちゃんを助ける事に一体何の問題が?」


「――――――」


あまりの暴論に、アオイは言葉を失くした…だが、同時にそんな滅茶苦茶な所が逆にレクシア様らしいとさえ思ってしまう。


「せっかく、アオイに出来たお嫁さんだよ?少しくらい手助けしても問題ないでしょ?」


レクシアは立ち上がると、アオイに対して笑顔を浮かべる。だが…


「もし文句を言う奴がいるなら…私が潰す」


その瞬間、レクシアから表情が抜け落ち、辺りに濃密な怒りと殺意がぶち撒けられる。その圧力は原初の女神の手によって生み出されたアオイであっても、死を思わせる程だ。並大抵の神ではとっくに圧力だけで死んでいるだろう…が、それも一瞬で、すぐにいつもの見た目相応の可愛らしい雰囲気に戻った。


「今回は私が助けたから良かったけど、次からは自分の手で守ってあげなきゃ駄目だよ?アオイのお嫁さんでしょ?」


「は、はい…」


「じゃあ、今度来る時はお嫁さんと孫を連れてきてくれるのに期待してるね〜」


レクシアは、最後にそんな事を言ってアオイを帰した…その後、表情に笑顔を浮べると背後の何もない空間ヘ、こう呟いた。


「勿論、文句はナイヨネ?」


その瞳には、文句がある場合は殺すという、明確な殺意が宿っていた。



大切な物の為ならば、原初の女神は立ちはだかるどんな相手も、ルールも、原理も、全てを捻じ伏せる…



――それは、大切な者を失った、絶望と、怒りと、無力さを知る故に――



Qあの渓谷って何なん?


Aかつての勇者が怪物をぶっ倒す為に振るった聖剣の斬痕。尚、それでも死なない為封印を施してそのまま時の流れによって忘れ去られた…




ちょっと、レクシア様についての情報が漏出しちゃった…まぁ、しょうがないよね?


あと、レクシア様はあの渓谷に一体何が居るか知ってるし、何なら瞬殺を越えて存在自体を消し去る事も出来る…だが、敢えてしない。理由として…


「ワタシが手を下す問題じゃないし、何よりそこに住んでいる星の人達がやらかしたのが原因だから、私関係ないよね?」


と、述べております…


一応…レクシア様について知りたいって人の為に、いつか短編で出そうと思っているので、書いて欲しい人はコメントを…いや、できたらでいいんです…うん、ホントに

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