(3)「出会ったのは良いけれど」
白い毛玉。
次の日。
「おはようございます。」
「はい、おはよう。今日は1人?」
「そうですね。2人は今日は部活で。」
「だったら、今日は帰っていいよ。1人だと大変だしね。」
「流石にそれは……。」
ソコまで言うと、役所の人はニッコリ笑って俺の頭を撫でた。
「いいからいいから。折角だから休んじゃおう。
どこか遊びに行っても良いんじゃないかな。お友達には見つからないようにね?」
役場から半ば追い出された俺は、とりあえず昨日の神社に行ってみることにした。
まだまだ調べてないとこもあるし、何より気になって仕方がなかった。
家に帰って自転車に乗り神社に向かう。
天気を見る限り今日は雨が降らなさそうだから、
親にはいつもの友達の家に行って遊んでくると伝えておいた。
神社の下の階段まで着くと、小さな白い塊があるのに気付いた。
それはちょうど子供くらいのサイズで、毛玉のように見える。
「なんだこれ?」
遠目に見る限りは犬のようだった。白い服を着ている犬が丸くなっていた。
近くに寄ろうとすると俺の足音が聞こえたのか片耳がこちらを向いた。
その犬はすぐにこちらを向いて、走ってくる。
「みつけた! ボクが見えるお兄さん!」
「うわっ、喋った!」
勢いがついたまま犬に抱き付かれたので、そのまま道路に倒れこんだ。
背中がまだ痛むが、そいつをよく見てみると、犬じゃなかった。
服は神社の神主が着るような『正服』と呼ばれる白い服を着ていて、
犬だと思っていたが顔立ちは犬らしくなく、
ハスキー犬とかに近いような狼と呼んだ方が近い顔立ちをしていた。
「これでようやくボクもお役目がキチンと果せる! お兄さん手伝って!」
「何の事だか分からないんだが……。とりあえず退いてくれないか?」
「あ、ごめん。嬉しくて、ついやっちゃった。」
少しバツが悪そうにした、そいつを見ながら立ち上がる。
「色々聞きたいことはあるんだが、まずどこから聞こうか……。」
「んー、とりあえずボクの家に来てくれない? 今のボクだとあまり遠出できないからさ。」
「言ってることが分からないんだが。」
「良いから、ボクの家に来て。話はそれから。」
自転車を階段の脇に停め、腕を引かれるまま階段を上っていく。
「さぁ、ボクの家はこの奥だよ。」
「ちょっと待て。ここは神社だし、大人に聞いてもこの奥には住む場所も、
住んでる人なんて居るって言ってなかったぞ。」
「え? ボクが住んでるよ?」
「話が噛み合ってないんだが。」
拝殿の手前まで来たときに、一旦そいつを引き留める。
「どこに住んでるんだ?」
「この奥だよ。」
「奥はもう本殿しか……。」
「あ、そっか。キミたちはそう呼んでる場所になるんだっけ。」
「え? じゃあ……。」
そこまで口にしたときに、昨日の出来事を思い出して身震いする。
「この奥にある『大狼像』がボクだよ。
そして祀られているカミサマがボク、って事になるかな。
昨日は脅かしちゃってゴメンね。
久々にヒトが来たから嬉しくて『そのままの姿』で出ちゃった。」
「カミサマ……?」
「そう。昨日キミたちが見た姿は、コレ。」
急に風が強くなり竜巻が出来、そいつに重なったと同時に子供の姿が変わっていく。
背も高くなり2mを超えるくらいの姿になると竜巻が消えた。
「ちょっとくらい格好つけようかな。」
軽く正服を整えてから、俺の前に大きな狼獣人が跪いて頭を下げる。
「我が主、ようやくお戻りになられて、我はとても嬉しい。
願わくば二度と離れる事がないように。
約束通り、この地の加護は続けているのだが、
信仰による神通力の不足により、あと数十年後には封印が……。」
「待ってくれって、何の話だよ。我が主って何だよ。
それにその姿も不思議だしまだカミサマって話も訳わかんないのに、
どんどん新しい話や疑問とか出てきて、更に意味不明だ。」
「何も覚えてないのか?」
「覚えるも何も、俺は知らない。」
「石碑が読めたのに?」
「何で読めたんだろうなアレ。」
「……我が主よ、少々手荒な真似を失礼する。」
「うわっ!」
そいつに軽々と持ち上げられると、俺は拝殿の奥に連れ去られた。




