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少しだけ、距離が戻った放課後
放課後。
教室には、帰り支度の音が残っていた。
聖はノートを鞄に入れながら、
ふと隣を見る。
栞が、何か言いたげにこちらを見ていた。
目が合うと、
すぐ逸らされる。
少し前までなら、
そのまま終わっていた距離だった。
だが今日は違った。
「……何だ」
先に声をかける。
栞は、少し驚いた顔をしたあと、
ぎこちなく口を開く。
「えっと……」
沈黙。
教室に残っている生徒も少ない。
栞は、ノートを抱え直して言った。
「……もし、よかったら」
少し間。
「また、一緒に勉強、する?」
意外な言葉だった。
聖は瞬きをする。
「俺、赤点だぞ」
正直に言う。
栞は小さく笑った。
「だから」
それだけだった。
沈黙。
断る理由はない。
「……いいけど」
そう言うと、
栞は、ほっとしたように笑った。
久しぶりに見る、
自然な笑顔だった。
「じゃあ、図書室?」
「ああ」
二人で教室を出る。
廊下には、
夕方の光が差し込んでいた。
(……悪くない)
ふと、そんなことを思う。
戦場では得られなかった時間。
静かな日常。
誰かと並んで歩く帰り道。
守るとか、
戦うとかじゃなく。
ただ。
隣に人がいる時間。
それが、少しだけ――
心地よかった。




