第8話 ヴァンパイア少女
朝起きると同時に血を吸いに来る藍。
朝食の前に血を吸いに来る東子。
昼頃に血を吸いに来る雪菜。
夜、寝る前に血を吸いに来る氷麗。
私の負担を減らすために彼女達はローテーションを組んでいるらしい。だがヴァンパイアの私でも1日に4回の受血はきついよ。
でも、みんなが私の血がなくては生きられない。
私が耐えればいいだけだ、私があの痛みを毎日我慢するだけでみんなは死なずに済む。
絶対に誰も死なせたくない。それが優衣の一番の願いであり、彼女が彼女でいられるための心の支えになっていた。
だが、そんな優衣にさらなる苦難が立ちふさがる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
風呂場の方から聞こえてきた優衣の叫び声に4人は一斉に反応して向かう。
「どうした?ユイユイ。」
「た、た、た、体重が…大変なことになってる…」
「体重?」
風呂場の前に置いてあった体重計、優衣が乗っているそれにはハッキリと○○kgと表示されていた。
「なんだ、そんなことかぁ。」
「そんなことじゃない!
○○kgって普通ありえないから!」
「まぁ確かにそれはおかしいですね。
見た目と体重が合っていません。」
「ヴァンパイアだからじゃないの?」
「ヴァンパイアと体重がどう関係あるんだよ。」
「ほら、ヴァンパイアは血液量が増加するとか言ってたじゃん?
そのせいじゃないの?」
「取説を読みましたが、確かに体内の血液量が増えるために体重が増えると書いてありましたよ。
すなわち優衣さんの体に特に問題はありません。」
「なんだぁ、そういうことだったのね。
でも良かった〜優衣ちゃんになんともなくて。」
「いやよくないよ?」
全然良くないんですけど…
「君、重くなったねぇー」とか言われて「はい、ちょっと血が増えちゃいましてー。」とかシャレにならないからね?
「それにただ重くなっただけならいいんだけど、なんか最近鼻血が…」
「鼻血が?」
「突然鼻血が出てきたりするんだよ。」
「それはどうやら体内の血液量が限界まで増えすぎたからだそうです。取説にそう書いてあります。」
「まじか…これもヴァンパイアのせいか」
「いえ、普通の人ならそんなことないようですが、たまに血を作る器官が活性化しすぎて突然出血してしまう人もいるようです。
つまり優衣さんは優秀なヴァンパイアなのです。」
「それって別に嬉しくないな…」
「何言ってんだよユイユイ。それって他のヴァンパイアとは一味違うってことだろ?
私達のマスターが特別なんて嬉しいことじゃないか。」
「そうですよ優衣さん。血の量が多いのはとても素晴らしい事です。
……私達にとってですが。」
「……つまりもうちょい優衣ちゃんから吸ってもかまわないってことね、ウフフ。」
「優衣、恥じることはない。優衣の血が多いのはヴァンパイアとして誇れることだ。」
「もう、みんなしてそんな事を…」
こうして、以前よりも多く血を吸われるようになった優衣であった。
マスターであるヴァンパイアから血を受け取るためにする行為、受血。
だが実際は映画や漫画などで見る吸血シーンとは全く違う。
受血は優衣ちゃんを含めて3人で行う。
まず、優衣ちゃんをベッドに仰向けに寝かせて、1人が抑え役となって優衣ちゃんの手を握る。そしてその間にもう1人が首筋から受血をする。
何故抑え役が必要なのかと言うと、血を吸う時に優衣ちゃんが痛みに耐えられるようにするためだ。
優衣ちゃんは言葉にはしないが、受血中に抑えていた私の手を痛いくらいに強く握ってくる。相当痛いんだとおもう。
それを1日に4回もするとなると、とても申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
私達従者は1日に最低1回は受血しないと貧血状態を起こし死んでしまうため受血をする事によってのみ生きていくことができる。だがその代償は全て優衣ちゃんに押し付けることになってしまう。
今までいくつもの工夫をしてなんとか優衣ちゃんの負担を減らそうと考えてきたが、どれも成功には至らない。
それでも優衣ちゃんはその事に関して私達に文句を言うことはなかった。
本当は辛いはずなのに、いつも平然とした表情で私達と接している。
優衣ちゃんはすごい女の子だ。
絶対に優衣ちゃんを守らなくてはならない。
優衣を守るのは自分達の務め。
従者である4人は日々、優衣を守るために能力の練習に励むのであった。
「ところで氷麗ちゃん。輸血パックみたいなのに血を入れておくのはどう?」
「優衣さん、残念ながらそれは厳しいです。従者にしか分からないのですが、新鮮な血でないとほとんど力を得ることができないのです。」
「じゃあ献血みたいに針を使って受血するのは?」
「優衣さんはヴァンパイアですから、針を刺した後すぐに傷口が治ってしまって針が抜けなくなるかもしれません。そうなったら一大事です。」
「マジかぁ…。」
「だから優衣さん、もしこの前のように槍を刺された時はすぐに抜いてください。へたしたら槍が抜けなくなってしまいますよ。」
「うっ…想像しただけで寒気が…」
「まぁ、私達が二度とそんな事にならないよう守りますから大丈夫です。」
「あ、うん。なんかすまないな。みんなに守ってばっかりで。」
「いえいえ、当然のことです。優衣さんは私達たちのマスターですから!」
とりま1章は完結しました。
次からは本格的なバトルものへと移行して生きます。
優衣と4人の女の子達の過酷な毎日がスタートです。




