第7話 目覚めの少女
時々嫌な夢を見る。
周りに誰もいないとても静かで暗い場所、そこで1人ぼっちで泣いているだけの夢。
父さんと母さんはどこ?
クラスのみんなは?
このままずっとひとりなの?
不安でいっぱいそこは、優衣の大嫌いな場所だった。
誰も私を守ってくれない。誰も私を気にかけない。誰も私を見てくれない。
私はどうすれば孤独じゃなくなるの?
これは、優衣がまだ幼かった頃の心情であった。
目がさめると、自室の天井が見えた。
どうやら誰かが私を部屋まで運んでくれたらしい、おまけに体には丁寧に包帯まで巻いてある。
痛みは……ないな。
思い出せるのは後ろから飛んできた槍が腹に刺さってとても痛かったのと、泣き叫びながら近寄ってくる東子の姿。
私はあの時、死ぬんだって思った。
だけど今もこうして私は生きている。
まるで何事もなかったかのように。
とりあえず、みんなの様子を見てみるか…
手当たり次第に部屋のドアを開けて誰かいないか確認するが、一向に人の気配がない。
まさかみんな帰った?
そう思いもしたが、リビングに布団が敷いてあったのでそれはないだろう。
じゃあ一体どこに…。
優衣は段々と不安になる。
あんなことがあったのだ、何が起きてもおかしくない今の状況がとても怖く、恐ろしい。
駆け足で家中をさらにくまなく探すと、洗面所の近くから何やら話し声がするのが聞こえた。
それは聞き覚えのある声だった。
優衣は安堵しながら洗面所へ向かう、声の元はトイレの窓の外、庭から聞こえてきたものであった。
ん、外で話し合ってるのか?
「東子、お前は私より自分の心配をしろ。ただでさえ扱いづらい火の能力なのにお前が使えば優衣の家が火事になりかねない。」
「分かってるって。そういう雪菜も貧血にならないように気をつけろよ?」
「…東子に言われなくても分かってる。」
「わ、わ、わ、藍さん!
そんなにぶっ放したら何もかも黒焦げになっちゃいますよ?」
「でも、でも!私が弱かったばっかりに優衣が怪我をしてしまったの。
私がもっと頑張って優衣を守れるくらい強くならなきゃ意味がないわ!」
「でも藍さんの電気はもう十分強力だと思いますよ?」
「まだ丸太を焦がすくらいしかできないわ、あの女を倒すにはまだ全然よ。
氷麗こそ、風の力はどうなの?」
「はい、まだそう長くは使えないのですが、力を集中させればあの木くらいなら倒せます。」
「………すごいわね……」
優衣には意味がわからなかった。
え…ちょ、みんなどうしたの?
なんでみんな能力を使っているの?
そして家の庭がめちゃくちゃなんですけど…。
慌てて玄関から庭へとまわった。
「ちょっとみんなで揃ってなにしてるの?」
優衣がそう尋ねると、その声を聞いて振り向いたみんなが一斉に優衣の方へ走って向かってくる。
え、え、えぇ!?グファ!
まっさきに藍が優衣に飛びついた。
「よかっだぁぁあ優衣ちゃん!
ようやくおきてぐれだぁぁぁぁ!」
半泣き状態の藍が優衣に抱きつきながら叫ぶ。
「ど、ど、どうしたの藍?
そんなに泣くことかぁ?」
「だ、だっでぇぇ。
もう3日も目を覚まさないがらぁ、このままずっと起きないんじゃないがっでぇ、しんばいじだんだがらぁぁぁぁ!」
「落ち着けって、な?
言葉になってないよ!?」
「優衣、もう大丈夫なのか?」
「うん。傷口はもう塞がってるし、痛みも全くない。
これもヴァンパイアの力かな?」
「でも、本当に良かったです。
優衣さん死んじゃうかと思いました。」
「うん、ごめん。心配かけたね。」
「ゆ、優衣ちゃんは悪くない!
悪いのはぜーんぶあの女のせいよ。」
「ハイハイわかったからちょっと離れてくれない?苦しいんだけど…」
優衣が寝ている間、それぞれの能力を使えるようになった4人は庭でその力の練習をしていた。
火の能力を使う東子。
水の能力を使う雪菜。
電気の能力を使う藍。
風の能力を使う氷麗。
彼女らはまたあの黒ずくめの集団が来ても優衣や他の仲間を守れるように日夜能力の研究を続けていた。
「ところで、みんな私が寝ている間ずっと能力使ってたんでしょ?
よく貧血にならなかったね。」
「いや、それは。その…」
「ん?」
「実は…寝ている優衣ちゃんからこっそり血を吸わせてもらってたんだよね…」
「へ?」
「みんな血を消費するたびにユイユイから受血してたんだよ。
いやぁ、私も何回吸ったかわかんねぇなぁ、はっはっはっ!」
「お、お前らぁぁぁぁ!!」
優衣と東子の鬼ごっこが始まった。
優衣ちゃんの傷口はあの日の翌日にはもう塞がっていた。
ヴァンパイアとはいえ、致命傷を負いながら1日経たずして治ってしまうのは驚いた。
そして優衣ちゃんの血の量もそうだ。
あんなに血を流していたのに全く体に異常は見られなかった。
ヴァンパイアとはそういうものなのか、それとも優衣ちゃんだからなのか。
どちらにしても、もう二度とあんな目にあって欲しくない。
私達は優衣ちゃんを守れるくらい強くならなければいけない。
私達のマスターは優衣ちゃんただ1人なのだから。
受験終わったら終わったでなんか毎日が暇すぎる。




