第6話 襲撃少女
優衣の血液量は他のヴァンパイアの二倍くらいあります。化け物です。
そのせいか、しょっちゅう吐血しています。
アニメとかでよく吐血する人でも優衣には勝てません。
ヴァンパイアキットには未だ使用者には明かされていない事が数多く存在する。
例えば、マスターであるヴァンパイアが死ぬとその従者はどうなるかについてなどだ。
従者はあくまでマスターとの血の契約上で成り立っている主従関係であるために主人が死ぬと従者はその契約が切れ、自由となる。
ちなみに、従者となった者が行える事は3つある。
一つ目はマスターであるヴァンパイアにつかえて守る。
二つ目はマスターとの契約を強制的に解約し、別のヴァンパイアと契約を新たに結ぶ。
それともうひとつ。
マスターを殺し、自分がヴァンパイアとなる。
従者となる者の大半はマスターであるヴァンパイアと親しい者であるため、大抵は一つ目を選ぶ事が多い。
たまに別のヴァンパイアに寝返る者もいるが極少数だ。
さらにもっと稀にだが自分のマスターを殺す者もいる。
ヴァンパイアキットを使うということはそういうことだ。
ヴァンパイアとなった人々はやがて気付くだろう。
自分達は盤上の駒にすぎないのだと。
「東子!いるか?
頼む、すぐに出てきてくれ!」
優衣は従者となった全員の家を訪れては連れ出し。
最後になった東子の家に4人で押しかけていた。
「ん、ユイユイ?こんな時間にどうしたっていうのさ。」
「いいから東子、早く出てこい。」
「え、雪菜もいるのか?どーしたんだよお前ら。
まさかうちの家に泊まるつもりか?」
「ちげぇよ。いいから東子はやくでてこい!」
「分かった分かった。今行くから。」
外に出てきた東子に優衣は送られてきた緊急連絡の内容を話した。
「………マジか、そんな事があったのか。でもこれからどうするんだ?」
「私の家に来てもらうつもりなんだ。
今んところ部屋数に余裕があるのはうちだけだから。」
「う、うん。でもいつまでユイユイの家に泊まることになるんだ?
もしかしてこれからずっととか言わないよな?」
「とりあえず今の状況に収集が付くまでだ。
絶対に単独でいるのは避けたい。」
「そこまで言われたら行くしかないな。分かったよユイユイ。
親に伝えてくるからちょっと待ってて。」
これでなんとかみんなを危険な目に合わせずに済む…
優衣はようやく安心する事ができ、肩の力を抜く。
家から飛び出した時からずっと心臓の鼓動は激しかった。
ようやくこれで…と思った矢先。
「みぃ〜つけた。」
背後からのその声に背筋が凍った。
それと同時に脇腹に激痛がはしる。
優衣の腹に深々と槍のようなものが突き刺さっていた。
そのまま優衣はうつ伏せに倒れていまう。
かろうじて意識は保っているものの、下腹部の痛みで全く身動きが取れなくなった。
「優衣ちゃん!」
「優衣さん!」
「優衣!」
みんなが優衣の名を叫びながら駆け寄る。
優衣の体からは大量の血が流れていた。
「優衣ちゃん!しっかりしてぇぇ!!」
「はやく救急車を呼ばないと…」
「待て、あいつがくる!」
優衣に槍を突き刺した張本人。
全身を黒い衣装で覆い、仮面を被った小柄な女性が4人の元に近寄ってくる。
こいつが優衣を………
雪菜の心は怒りに満ちていた。
自分を救ってくれた一番大切な人を傷つけた目の前の女。
こいつだけは殺してやる!
雪菜は殺意に満ちた目で女を睨みつけ、全力で水の弾を撃ち出す。
小さな水玉なら血の消費が少なくなり、かつ高速で放つ事で驚異的な威力を持つこの技。
優衣を守るために徹夜して生み出した技である。
まるで銃弾のごとく撃ち出された水玉は黒づくめの女に見事命中した。
だが女はよろめくどころか全く気にする事なくこちらに近寄ってきた。
雪菜は何発も繰り返し撃ち出すが、女はどんどん近づいてくる。
そして雪菜はついに貧血状態になって地面に倒れてしまう。
女は倒れた雪菜に見向きもせず優衣の元に歩み寄る。
まだ能力を使う事ができない藍と氷麗は、血だらけの優衣を運びながら逃げた。
二人は必死に優衣を抱えてはしる。
「なんなのあいつ…。まるで殺人鬼じゃないの!!」
「恐らくあれが優衣さんの言ってた人だと思います。だとすればなんとしても優衣さんを殺させるわけにはいきません!」
「でもどこに……ヒィ!!」
逃げた先にいるのはまたしても黒づくめの集団。
こちらを見つけたと同時に光りの弾を撃ち出す。
「まずい、逃げ…」
撃ち出された光りの弾が藍に命中する。
藍はそのまま倒れ、動かなくなった。
氷麗は泣きながら優衣を引きづり、逃げようとする。
だがまたしても光りの弾によって氷麗もやられてしまう。
優衣は途絶えかける意識の中で、黒づくめの集団の会話を聞いた。
「なによこいつら。まるで蟻みたいだわ。」
「こんなクズを従者に選ぶなんてこのヴァンパイアには呆れるわ。」
「こいつらどうするんだ?
とりあえず殺す?」
「こんなもの殺したってなんの意味もないんだな。
ほっとけばそのうち勝手に死ぬだろうなんだな。」
「まぁまぁみなさん、ここはひとまずわたくしの家でお茶でもしませんか?」
「さんせーい。なんか今日はつま〜んない。」
「じゃあ決まりですね。」
そうして黒づくめの集団は去っていった。
優衣は叫びながらこちらに向かってくる東子の姿を最後に意識を失う。
優衣の周りには大きな血だまりができていた。




