第9話 もうどうにも(血が)とまらない
ーピンポーン。
朝早く届けられた小包。中には「重要」と書かれた封筒と手のひらサイズの小さな箱が入っていた。
「ブラッドアーム?なんだこれ。」
「どうやら血を別の物に変化させて武器にすることができるみたいです。ほら、身の回りにあるものから軍用兵器まで様々なものを作れるみたいですよ。」
ブラッドアーム。それはヴァンパイアの血を加工して作られた武器のことである。
その用途は広く、実際に存在する道具から空想上の物体までヴァンパイアの力量によっては作ることが可能であり、ヴァンパイアの特性のひとつでもある。
従者でもブラッドアームは作ることはできるが、ブラッドアームの生成には大量の血液が必要であるために従者が行う事は自殺行為に等しい。よって基本はヴァンパイアの能力となる。
ブラッドアームは一度生成すると誰でも使うことができる。つまり、マスターであるヴァンパイアが従者にブラッドアームを作って与える形がセオリーだ。
ブラッドアームの特徴は血さえあればどこでも武器を生成できる事であるが、その反面耐久性は乏しく、大抵の物は24時間以内に元の血へと戻ってしまう。
「何故こんなものが送られてきたのでしょうか…」
「そんなのあれのせいにきまってるだろ?
ユイユイを狙う輩から身を守るために開発元が送ってきたに違いない。」
「そう…ですよね。私達、一度死にかけたのですから…」
「…」
思い返されるのはつい最近の出来事。あの事件だ。
全員が死んでいてもおかしくなかったあの日のことは、誰の心にも深く刻んでいる。
「私達、もうこの状態から戻れないのかしら。」
「戻ろうとしても戻れないのは事実。受け止めるしかない。
今は優衣を守る、それだけだ。」
「おいおいぃ。随分とユイユイに執着してるなぁユッキー。
あ、もしかしてユッキー、優衣のこと…」
「東子、うざい。」
ぐさり
「ギャァァァァ目がぁぁぁぁ!」
「とにかく、今は辛気臭い話はせずにこのブラッドアームとやらを試してみようよ。
優衣ちゃん、早速だけどこれ付けて。」
「ん、指輪?これってなんのやつ?」
「あの小包に入っていた箱の中にあったものです。どうやらブラッドアームを作るにはそれが役に立つそうですよ。」
「ふむふむ、で、どうやってそのブラッドアームを作るの?」
「まず、頭の中で自分の作りたいものをイメージしてください。
最初は実験なんで簡単なものでいいですよ。」
「うーん、簡単なものね…例えばナイフとか?」
「優衣さん、別に武器にこだわる必要はないんですよ。今優衣さんが欲しいものでもいいんです。」
「私が欲しいものかぁ…
うーんこれかな?」
「想像しましたか?そしたら指輪の上のボタンを押してください。」
「おいっす、これか。」
優衣は指輪についた小さなボタンを押すと同時に指先に猛烈な痛みを感じる。
「痛ったぁぁぁ!これめっちゃ痛いんだけど。」
「わわ、優衣ちゃん大丈夫なの?」
「指先に血が集中するために仕方ないそうです。それよりも優衣さん、なんか出来上がってきましたよ!」
「おぉ!こんな簡単に作れるのか。」
「優衣さん、それはちょっとあの…」
「優衣、悪巧みはいけない。」
優衣が作ったのはお金であった。それも一万円札だ。
「優衣さん、これからそういうものを作るのは禁止です。」
「えぇぇぇぇぇ!!なんでぇぇぇ。
せっかく大金持ちになれると思ったに」
「能力を悪用するんじゃありません!」
「はい…すいません。」
「それより優衣さん、今すぐ体重を測ってみてください。もしかしたら軽くなっているかもしれません。」
「あ、なるほど。それじゃあちょっと測ってくるわ。」
「じゃあ私はそろそろ日課のトレーニングに行ってくるわ。」
「あ、私もいくぜぇ。」
「東子、調子にのってまた物壊すなよ。」
「わかってるわかってるって雪菜。」
「あとで優衣ちゃんの報告おねがいね。」
「分かりました。」
ーー5分後。
「あ、優衣さん。どうでしたか?」
「……えた」
「え、なんですか?」
「増えた!何故か増えちまってるんだよぉ〜」
「な、なんですって?変わらないならともかく増えたんですか?」
「もう私、ダメかも…」
「とにかく落ちついてください優衣さん!早まってはいけません。」
「嫌ダァ、私は軽くなるんだぁ。」
「あぁぁちょっと優衣さん、なに包丁持ってるんですか!ダメですよそれだけはぁ!」
優衣は前回測った時よりちょびっとだけ増えていたのであった。
「うーん、血が多すぎるのも問題だな。」
くしゃみと同時に口から出た血。決して怪我や病などではなく、優衣の血液量が限界にまで増えてしまった結果である。
「たしかにこりゃひでぇな。このままじゃ家中血だらけになるぜ。」
「なんとか対策はできないのでしょうか。」
「ブラッドアームは?」
「いや、作ってはいるんだけどそれでも血が出てくるんだ。」
「ブラッドアームの生成は血だけではなく精神力も使うので連続で行うことは難しいからなぁ。」
「やっぱり私達がもっと吸えばいいのでしょうか。」
「それはちょっと…最近飲みすぎて腹がきついくらいなんだよ。」
「私達4人が限界まで飲んでもなお余る優衣さんの血は本当にすごいです。」
「だろ?さすが私達のマスターだな。」
「どうでもいいけど、血を捨てるっていうのは…」
「絶対にダメだ!」
「絶対にダメです!」
「ダメだ、優衣。」
「ダメだよ優衣ちゃん。」
「あ、そうですか…」
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