第12話 夏の暑い日
「あづぅぅぅーーい。」
「もう8月ですからね。」
「なんでクーラーついてないの…」
「節電。」
「いいじゃんユイユイ、少しくらい。」
「ダメだ、まだ早い。暑いって言ってられるうちはまだ大丈夫だ。」
「けちけちけちんぼ。」
「うるせ。」
「でもそうは言っても暑いものは暑いですね。」
「ほらぁ、見ろよユイユイ。暑すぎて雪菜が溶けてるぜ。」
「あれは寝てるっていうんだ。」
「優衣……あつい…。」
「あぁもう!分かったから!」
「え?じゃあクーラーつけんの!?」
「なわけねぇだろ。アイスだよア・イ・ス!誰かにアイス買ってきて貰うんだ。」
「こ、この炎天下にですか?」
「ユイユイいってらっしゃーい。」
「………東子、後で庭の草むしりな。」
「な、なにぃぃぃぃぃ!」
アイスを買いに行く人は結局ジャンケンで決めることになった。
(ちっ、私は家の主だっつうのに。)
ジャンケンに負けたのは優衣。それも、一発で勝負が決まってしまったのだ。
(なんで私がこんな事ブツブツブツ…)
その頃、優衣の家では。
「ふぁぁぁ生き返るぅぅ!」
「いいんですか?こんな事して。」
「バレなきゃいいんだって、バレなきゃ。ユイユイが帰って来る前に窓開けて温度を元に戻せばいいだけだから。」
「うーん、優衣さんに申し訳ないですが、確かに快適です。」
「はっはっはっ、すーずしー!ここは天国だぁ!」
(クソっ、しろくまねぇじゃん。近くにもう一軒コンビニあったかなぁ。あーめんどクセェ。
そもそもアイスを買いに行ってもらっといてしろくまとかいう並のコンビニじゃあまり置いてないものを注文するとか調子乗りすぎじゃないの?
ここは素直にガリガリ君とかにしといてほしいんだけど。
あぁージャンボも売り切れじゃん。
しょうがねぇからモナカでいいか、最悪このドロドロに溶けそうな板チョコをぶっかければええし。)
ぐちぐち文句を言いながらもちゃっかり雪菜にはハーゲンダッツを買う優衣であった。
一方、優衣宅では…
「ぷっはぁぁぁ!やっぱ夏のカルピスはうめぇなぁ!しかも原液。」
「ちょっと東子さん?いったい何杯目ですかそのカルピス。もう原液が一杯ぶんも残ってないですよ!?」
「大丈夫大丈夫!下手に残しておくよりこういうのは飲み干して捨てちまえばいいんだよ!
ユイユイも気付かないって。」
(おいどういう事だ。なんでしろくまのためにコンビニを三軒もまわんなきゃなんねぇんだよ。本当に今日はついてないなぁ、はぁ。まぁアイスは全部買えたことだし、帰るか。)
案の定、優衣の家では…
「おらおらおらぁぁぁ、私の前に出たものは全部蜂の巣だゴラァ!」
「東子さん、そろそろ優衣さんが帰ってきますよ。隠さなくていいんですか?」
「大丈夫大丈夫、ユイユイはああ見えてトロイから。それにあえてこの辺りにあまりないしろくまを頼むことで時間稼ぎが…あ!私の戦車がぁぁ。野郎ぶっ殺してやる!」
「戦争ゲームもいいですが、本当に優衣さんが帰って来てますよ。」
「大丈夫だって、ユイユイはヴァンパイアだからこんな炎天下に出てたら日光くらってバタンキューだって………へっ?来てる?」
「よう東子、とりあえずバルス。」
「なぁぁ!しろくまが顔にぃぃぃ!
目がぁぁぁ、目がぁぁぁぁぁぁ!」
こうして、夏のとある暑い日の物語は幕を閉じた。