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第三節 灰銀のフェンリルと落ちこぼれ魔導師
静まり返った封印都市。
エリシアは震える声で呟いた。
「……あなた、一体何者なの」
レインは少しだけ目を伏せた。
雪が静かに肩に積もる。
「…昔、少しだけ世界を壊しかけた」
「え?」
「だから今は、できるだけ目立たず、寝ていたいんだよ。」
そして彼は、小さく笑った。
「ただの落ちこぼれ魔導師だよ」
「そう…」
エリシアは腑に落ちていなかったが、言葉を発することができなかった。
フェンリルが静かに隣へ座る。巨大な頭が、レインの肩へ軽く触れた。
慰めるように。
その時だった。
ぐぅぅぅぅ……。
妙に間の抜けた音が響く。沈黙。
レインが真顔になる。
「……腹減った」
エリシアは呆然とした。
世界滅亡級の戦いの後の第一声が、それなのか。
フェンリルは尻尾を振る。
『肉だな』
「あー、焼肉食いたい」
『我は丸焼きがいい』
「却下」
さっきまで世界を滅ぼしかけていた存在たちとは思えない会話だった。
エリシアは数秒黙った後――
ぷっ、と吹き出した。
「ふふ……何それ……」
笑ってしまった。緊張が全部抜けたように。
レインは不思議そうに首を傾げる。
「何笑ってんだ?」
「だって……あなた、最強なのに全然それっぽくないんだもの」
レインは少し考えてから答えた。
「面倒くさいし」
「そこなの!?」
フェンリルが再び笑う。
凍てついていた封印都市に、初めて笑い声が響いた。




