第一節 千年封印の終わり
それは王国北端、永久凍土の奥深くに眠る滅びた古代都市。
千年前、“ある存在”を封じるために築かれた監獄都市だった。
レインたちは、その最奥へ辿り着いていた。
崩れた白亜の塔。凍りついた街並みの上空を、黒い魔力が覆っていた。
エリシアは息を呑む。
「……何、この魔力量……」
空気に触れるだけで肌が痛む。
並の魔導師なら立っていることすらできない。
だがレインは眠そうに欠伸をしていた。
「相変わらず趣味悪いな、この街」
『千年放置されていた割には綺麗だろう』
フェンリルは崩れた街を静かに見つめた。
金色の瞳が、ほんの少しだけ細まる。
『……懐かしい匂いがするな』
フェンリルが鼻を鳴らす。
ふと顔を上げた。
大地が揺れた。轟音。
都市中央にそびえる黒塔から、膨大な魔力が噴き上がり、空が裂けた。
そして――声が響く。
『レイン』
低く、重い声。世界そのものが震える。
『ようやく来たか』
黒塔の扉が開く。
現れたのは、“竜”だった。
漆黒の鱗。山脈のような巨体。赤い瞳。
その存在感だけで、大気が軋む。
古代竜は笑った。
『終焉の魔導師』
エリシアの背筋が凍った。
その巨体が息をするだけで、空気が軋む。
竜は、ゆっくりレインを見下ろした。
『封印が解けた。約束通り、世界を滅ぼそう』
レインは小さく目を伏せた。
「……千年経っても、終わってないのか。まだその約束覚えてたんだな」
『千年前、お前が“次に目覚めた時は好きにしろ”と言ったのだ』
「そうだったか。ならばやめろ」
『なに?』
「面倒だからな」
エリシアは頭を抱えた。
会話が軽すぎる。




