第20話
俺達は先に進む。
悲しむ時間はない。
向かってくる者あれば殺した。
もはや武器を持っているかどうかは関係なくなった。
そして会議室に入った。
中には、男が一人。
サミュエル・テックで映された映像に映っていた男だ。
「よくここまでたどり着いた」
男は拍手をしていた。
「この民族主義者め!お前は悪だ」
「君たちが善でも?君達だってここに来るまで大勢殺しただろ」
「それで正当化しているつもり?何人もの人間がなくなったと思っているの?」
「五百万人ほどだろう。『世界危機』で8割死んだんだ、この地域だけで3割減って人類が滅ぶわけでもない。むしろ本来のドイツが復活し、秩序が復活するんだ」
「秩序ですか。このような騒動を引き起こし、人々を混乱させ、その間に権力を掌握しようとすることが」
「ああ、復活の儀式だ」
男は両腕を開き、天井を仰いだ。
天井のガラス窓から光が差し込む。
俺は耐えきれず銃を撃った。
「ムダーク!」
弾は男に当たらず、その男の足元に着弾した。
「シャエス!」
男はポケットからハンドガンを取り出し、こちらに向かって撃つ。
これも当たらなかった。
俺はもう一度銃を撃ち、今度は男の胸に当たった。
男はその場に倒れる。
だが、男は別の銃を出し、こちら、正しくはソフィアに向かって撃った。
ソフィアの腕に、注射器のようなものが刺さる。
「民族主義は死なない」
男はそう言って、腕を下ろした。
もう動くことはない。
「ソフィア!」
倒れるソフィアを俺は抱える。
彼女は前かがみで、俺の腕に抱えられている。
低いうなり声が聞こえる。
俺はソフィアを離すと、その場に倒れ、ゆっくりと立ち上がる。
俺とアドルフは、少しずつ離れた。
ソフィアは、こちらを向き、少しずつ近づく。
もう、ゾンビになっている。
俺は銃を撃つ。
ソフィアだった死体は、その場に倒れ、血の水たまりが形成される。
ああ。
ああ。
俺は男の死体を見る。
俺はどこに怒りを見せればいいんだ。
「スカブリャ!」
俺はその場に、膝をついた。
「お前のせいだ」
立ち上がり、男の死体に発砲する。
「お前のせいだ」
そして弾切れをする。
「お前のせいだ」
何回も引き金を引く。
「お前のせいだ」
だが弾は出ない。
俺は文字にならない声を出して泣いた。
その場に崩れ、膝をつく。
後ろからアドルフが肩を叩く。
「終わったんです。そう嘆いても、何も戻りませんよ」
そんなことはわかってる。
涙を腕で拭く。
俺は立ち上がり、アドルフに向いた。
「いや、やることがある。あのクソみてえな旗をひっさげる」
俺達は会議室を出た。
議事堂の頂上から、ベルリンの街を眺める。
あちこちから火の手が上がっている。
第三帝国が滅んだ時も、こうだったのだろう。
俺は鍵十字の旗を、引き抜いた。
俺は持っていたライターで火を点ける。
これで、終わった。
敵も、俺も。




