平良 その1
結局のところ具体的な解決には至らず、平良と瀬尾はリサイクルショップへ戻って来た。店に置かれた椅子に腰を下ろすと、どちらからとも無く溜め息を吐く。
平良は胸の前で腕を組むと1点を見詰めたまま考え込む
「とりあえず、うちのアパートを無断で使用している人間はいたと言う事だね」
「そうだな」
「これは由々しき問題だ。早急に父に報告をして対処しなければ」
「そうだな」
「それと尚美と言う人物を見付け、鍵を回収しなければ…それよりも鍵を交換したほうがいいかな?でも、今後は人に貸す予定も無いのに鍵を交換するのは無駄な気もするが…」
「そうだな」
「平良。君は先程から"そうだな"としか答えていないが、僕の話しをちゃんと聞いているのか?」
「そうだな」
「君の協力をしている僕に対して、その態度はあんまりじゃないか!!」
怒気を帯びた口調に、平良はようやく顔を上げた
「あの隣に住んでる田中のじいさんだけどさ~何か見た事ある気がすんだけど、お前なんか知らね?」
「はぁ?そんなの僕が知る訳ないだろう。それよりも君は僕の話しを聞いていたのかと言う、僕の疑問は解決していない」
「何かこう~思い出せそうで思い出せないのって気持ち悪いんだよなぁ~」
「僕は、この会話が全く噛み合っていない現状がとても気持ちが悪いよ」
「あ~っ…どこだっけなぁ…そんなに大昔じゃないと思うんだよなぁ~」
平良は額を指先で叩きながら記憶を思い起こす
そんな平良の様子に瀬尾は不機嫌そうに顔を顰める
「おい…平良。」
「かといって、ここ数日って感じでも無いんだよな~」
「おい、呼んでいるだろう!」
「その辺で見掛けたとかか?う~ん…」
「いい加減にしろ!!」
「だぁ~っ!!うるせぇ!!!いま考えてるところだろ!話し掛けんな!!!」
荒々しい声を浴びせ苛立った様子で詰め寄ってくる平良の姿に、瀬尾は目を細めて口の端を吊り上げる
「お客様だぞ」
澄ました顔で指を差す方へ視線を移すと、大学生くらいの男が1人紙袋を抱えたまま固まっていた。
「あぁ~お客さんすいませんね。ちょっと考え事をしてたもんで~」
慌てて笑顔を貼り付けるが、その笑顔は一層恐さを引き立たせる
「あっ…いえ…あの…」
「大丈夫ですよ。別に取って食うわけじゃ無いんですから~アハハハッ」
和ませようと渾身のジョークを浴びせるが、客は何故だか涙目で顔色も徐々に悪くなっていく
「それで今日は何かお探しですか?」
「あ…あの買い取りを…お、お願いできますか」
そう言うと、ずっと抱えていた紙袋からCDウォークマンを取り出した
「買い取りですか~それじゃあ、この用紙に記入をお願いしますね~」
カウンターの引き出しから1枚の書類を取り出すと、お客の前へ差し出した。瞬間、平良は血走った目を大きく見開いた
「ああぁ~っ!!!これだぁ!!!!」
「ひゃぁ!」
突然、目の前で発せられた大声に客は飛び退くと取り出したCDウォークマンを再び抱え入り口へと駆け出した
「えっ?ちょっと、お客さん買い取りは~?」
「で、で、出直します~!!!」
脱兎のごとく走り去って行く客の後ろ姿を見送りながら、瀬尾は平良に冷やかな視線を向けた




