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中古屋探偵  作者: 小田川アキ
13/43

アパート その1

翌日、平良と瀬尾は連れ立ってアパートへも向かう。

金属製の外階段を登ると甲高い金属音が辺りに響き渡る。2階へ上がるとすぐ近くのドアへと進む。昨日、凌子が入って行った部屋のドアだ。

「ここが入って行った部屋だ」

「うん、こちらも間違いない。やっぱり同じ部屋だったね。じゃあドアを開けるよ」


瀬尾はライトグレーのスーツの内ポケットから鍵を取り出し鍵穴へ差し込む。錆び付いた鈍い音を立てて、ゆっくりと扉が開かれると2人は隙間から中を覗き込む

「……」

「なにも…無いな」

入り口から一望できる7畳ほどの和室には、色褪せた畳と小さな台所スペースだけの質素な作りで、人が住んでいる気配どころかゴミ1つ落ちてもいない。

部屋に入り、とりあえず押し入れやトイレなど順に確認して行くがやはり何も見付からない


「随分と綺麗に片付いてるな」

「退去の手続きの時に父親が部屋のクリーニングも手配してくれたからね」

「なるほどね…」

どうりで細かいところまで綺麗に掃除されていると感心する


「そういえば、ここに住んでた奴ってどんな男なんだ?」

瀬尾はクラッチバッグから住人名簿と書かれたファイルを取り出すと、あるページで指を止めた

「名前は矢野正人、26歳で職業はフリーター。静岡の実家を出てこのアパートで1人暮し」

「26歳か…その若さで交通事故死は親もツラいな…」

「母親は精神的ショックで入院したって、退去の手続きの時に父親が言ってたよ」

「お前もその場にいたのか?」

「まぁね、いちお僕は跡取りだからね」

「へぇ、じゃあ探偵ごっこもそのうち辞めるのか~」

「探偵業はライフワークで家業はその次いでだよ!」

瀬尾の両親が聞いたら頭を抱えそうな台詞だが、本人は至って本気で言っているので質が悪い


「とりあえず、これ以上この部屋にいても意味は無さそうだな」

大柄な平良には随分と小さい玄関でスニーカーを引っ掛けると、そのままドアの外へ出る

「こんな狭い玄関じゃあ靴も履けないぞ!」

スニーカーの踵を直しながら視線を上げると、隣の部屋の表札が目に入る

「隣は人が住んでるんだな…」

「年配の男性が住んでるよ」

「へぇ~…何か知ってるかもしれないな」

「でもこんな昼間にいるか分からな…って何してるんだよ!」

見れば平良は木製のドアに耳を付け中の様子を静かに伺っている

「居るみたいだな」

気配を感じ取ると口の端を嫌らしく吊り上げ目を細める。その姿はまるで借金の取り立てに来たチンピラの様だった





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