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M列車で行こう〜魔導列車で征く異世界の歩き方〜  作者: 安指 蔵久
    線路二 世は情け        
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六号車 『ライク・ア・ローリング・マギ・ストーン』

 ――しかし、これで列車について色々知ってる事が、理解……とりあえずできたとしておこう……


「……と、まあそういうことじゃからのう……

 そろそろあの絡繰りの車の事……キカンシャについて教えて貰えんかのう!

 もう解って在るのじゃろう? 早う! 早う!」


 ……おっと、治まってなかったのか……

 まあ、今ならわかると思う……奇妙だが知ってる。


「……何をお話しすれば?」


「どうすれば動くんじゃ!……燃える石じゃったか? あれが無いと動けんのか?」


 ……いや……そうじゃない。必要なものは別なものらしい……


「……それでも動くみたいですけど、推奨されるものは魔導結晶というものだそうです……知ってます?」


 俺は知らない。見たこともない。


「何と! 魔石か! ならばあるぞい!……はっ! しまった……馬車じゃ……置いて……そうじゃ! フェイ! お主、持っておろう!……!?」


「……持っておりますが、アレを動かすにはこれではどうかと……」


 そう言って外套を払って腰の皮袋を出した。……なかなかお洒落だ。イケおじじゃないか。

そこから掌に数個の石? を出して、見せてくれた。……あれ? これ焚き火の下の碁石……見たことあったわ。


「足りないだろ?」


「……何と……そうじゃ、一つ跳躍して……」


「導師! もうお控えください……何度もできるものではないでしょう。……もうじき此処へ……置き去りにした者達も到着します。ご辛抱を……」


「……何と……」


 治まったか? しかし、魔導……魔石でいいのか? あれを罐に焚べるのか……ちょっと宝石っぽいけどいいのか……?

 

「……だが、魔石なら工面出来よう……おぉ、早う来ぬかのぅ……」


「……それでショウ、魔石をどう使うんだ? どのくらいの魔力が要るんだ?」


「あいにく、量は判らないんですが……罐に焚べます」


「……燃やすのか?……?」


「……燃えるんですか?」


「……ショウよ、――あの中に炉はあるんじゃろうかの?」


 ……炉? まぁそんな感じか……罐だけど……構成要素のようなもの、としてもいいようだ……多分。


「そんなとこです。燃えるかは解りませんが、魔力を循環させて、結晶を『連鎖裂壊』させる仕組みだそうです」


 まぁ、連鎖裂壊とかいう仕組みはよく判らんが、方法はわかる……さっきわかった。

 ……スコップで罐に放り込む。以上。因みにスコップはワンスコとも言うらしい……さっき知った。


「……あの巨躯に魔導裂壊炉が……然も、連鎖……させる……?」


「そうみたいですね……魔石ってそんな風にしていいんですか?……なんか高そうですけど?」


「値打ちは一様には決められんな……最上等級は国宝の上……値が付けられん。等級外の屑もあるがな、アレもある意味値が付かん。逆の意味でな」


 玉石混交ということか。


 何となく苦笑いのライラーさんが、慌て出した。


「――導師! また弾かれますよ! もう二度も弾かれたでしょうに!」


 ローゼルさんがフラフラと機関車に近付こうとしていた。……二回? 俺が気を失った後も弾かれたのか。

……今ならわかる。一応注意しておこう。


「……乗務員以外は機関車に乗れませんよ。そういう結界が張られているそうです」……仕組みは知らんけど。


「……おお……まさか魔導裂壊炉が……」


 いきなり顔を寄せて問いただしてきた。


「……機能するのかの……?」


「……しなきゃ動かせませんね」


「……! いかーん! 動けるように成って貰わんと!」


「……そうですよね、ここに置いていくことになってしまいますから……」


 ――!!


 警笛が鳴った。……怒ってる?……焦ってるのか?……そんな風に感じる。


「……どうしたんじゃ?……キカンシャから不穏な波動を感じたぞい」


「置いて行かれると思ったんですかね。それじゃ俺もここに置いてけぼりですけどね」


「変わった言い回しだな……ショウだけなら馬車に乗れるだろう」


 ――!!


 おお、まただ……これは理解してるのだろうか?


「列車と離れるわけにはいかないようです。……俺の……技能? これは列車の側じゃないと使い物にならないようです。……機関車ありきってやつです」


「……ほう……やはり紐付けられておるのじゃな……しかし、心配は無用じゃ。如何なる手立てを講じてでも魔石は工面しよう……」


 そう言うとなにか、一計を案じるかのように白髪髭を扱いた。……目が怖い。


「……して、ショウよ、魔石が工面出来たら炉に投じると申しておったが、……儂にもさせては貰えんじゃろうか?……どうじゃ?……のう?」


 ……諦めてなかったか。


「お話しした通り、炉……罐と言いますが、これがある運転室……キャブには、乗務員以外乗り込めないようです。どうにもなりません」……多分。……そういう理解が頭に入ってくる。……まだこの記憶の感覚には慣れない。


「……それに、魔石を罐に投じるには附帯技能の『火夫』……っていうのが必要みたいです。……これも『火夫』にしか使えない物らしいです」


 側のワンスコを手に取って、シャドウ投炭……じゃなくて投石か?……物騒だな……それをやってみせた。


「……何と……」


 ガックリと肩を落とすローゼルさんを横目に、ライラーさんに尋ねた。


「……お仲間はいつ頃此処へ?……置き去りにしたって言ってましたよね?……物凄い速さで走って来てましたけど……此処から遠いんですか?」


「……まったく、導師がいきなり跳躍するから……慌てて追いかけたのだ……結果、置き去りにして来てしまった。後を追って来るよう言伝ておいた。明け方には此処へ到着するだろう」


……明け方か……ん?……もう明け方か……ということは、夜通しこの明るさだったのか……?……何か大事なこと聞き忘れてるような……


「……今日は月も二つ出ていて明るい。靄も出ているが、あの……

列車?あれが目立つからな……見失うこともないだろう……ん?……どうした?何を――」


 ……忘れてた。……他に色々ありすぎた……


「あ、アレ!……月!……二つ!……ある!……?」


「?……それがどうした?……いきなり辿々しくなって……何を驚いている?」


 焦りすぎて片言になってしまった。……見間違いじゃなかった。……ここは地球ですらない……のか?


 ――本当に別の世界なのか……?


「如何致した?……今一度、試練の儀を行う……」


「――! いえ! 納得しています!」


「それは良い。……あの双子の月も、神話の時代には三つ子の三姉妹であったそうじゃ……」


杖で地面を突いていじけていたローゼルさんが復活した。


「……太古、竜の王が世界に混沌をもたらした折、母なる大地は中娘を連れてこの世界を去ったのだそうじゃ……それ以来、大地は伽藍堂と成り、月は中娘を探して夜中駆け回っておるのだそうじゃ……今の儂の心とおんなじじゃ……」


「……ヘルリロール叙事詩ですね……幼い頃は夢中で話を責んだものです……」


「……フェイは今もじゃろうて」


 ローゼルさんが揶揄って、さっきのお小言の復習を果たした。ライラーさんが言い返そうと口を開いたその時、こんな話題に似つかわしくない……聞いたことのあるメロディが流れた。


 ……鉄道唱歌?


「何じゃ?……」


「……ショウ……そこから聞こえてくるぞ?」


「え……?」……確かに……上着の左側を捲るとベストのボタンホールからポケットへチェーンが垂れている。

……装飾があるので気付かなかった。

……そのまま左手でチェーンを手繰って取り出した。


「おお、無事だったか!……?」……思わず声を上げてしまった。


見覚えのある懐中時計だ。外蓋にはレリーフの天馬が跳ねている。俺のお洒落懐中時計だ。……だが違う……

オルゴールが治っている?……鉄道唱歌だったのか……何のメロディかわからなかったが……何故?……ピッカピカの高級品のようだ。……元はそうだったようだが。

そうこうしていると、オルゴールが演奏を終えた。


「ほう……素晴らしい。それも魔導具じゃのう。……何じゃ?」


「……楽しげな旋律だったな……魔法なのか?」


「いえ、これは時計ですよ。懐中時計と言いますが……鳴っていたのはオルゴールです。こういうのありませんか? こちらに……」


「……何やら音がしておるのう……これも絡繰りかの?」


「はい、……魔導具って言いました?」


「如何にも、魔導具じゃのう。……ほれ、魔導銀が儂の杖に共鳴しとる。旋律で時を知らせるとは粋じゃのう」


……杖でわかるのか? さっきもそんなこと言ってたな……共鳴は俺には聞こえないが……


「壊れてたんですけど……新品みたいになってます……何故でしょう?」


「……こちらに界を越えた折に、新たな器に錬成されたのじゃろう……お主の身につけておるものも、お主やあの列車もじゃろう……得心せなんだか?……試練……」


「納得してます! させて下さい!」


それにしても何時にセットしたアラームだったんだ? 六時じゃなかっただろうか。

 お、もう午前4時か……あってるのか?……そもそもここの時間って……


「……天馬か?」


ライラーさんがレリーフに食いついた。仕方あるまい。男の子はみんな大好きだ。……だと思う。


「そうです、これが気に入って手に入れたんですよ」


「……美しいな……叙事詩の神馬のようだ」


……おお、ロマンチスト。……俺もこんなこと言えるおじさんになりたい。


「ヘルリロールの神馬か……


エルラリオル・リル・ラーリオン……」


……なに?……長いな……もう忘れた。


「……どういう意味なんですか?」


「……古語でな、『黄金に輝く六本脚の天馬』という意味じゃ」


「伝令神の神馬だ」


フェイデルさんの瞳が輝いてる。少年の心とおじさんの粋を合わせ持っているようだ。……俺も見習おう。


「……にしてもじゃ……長すぎやせんかの?」


「いや〜いい名前だと思いますよ。覚えきれませんでしたけど」


「『エルリオン』だ……普通はこちらで覚える」


「なるほど……覚えやすいですね。それなら」……もう覚えた。


「やはり……長すぎる……」


「……短い方は、もう覚えましたよ?」


「違う、キカンシャの方じゃ。……一向に終わらん……何故じゃ?……」

 


 ――終わらない? 何が……?……いや、……違うな……

後最までお読みいただき、ありがとうございます!

少しでも「面白かった」「続きが気になる」「迷える不惑を応援したい」と思っていただけましたら、作品ページ下部の【ポイント評価(★★★★★)】や【ブックマーク登録】をいただけますと、今後の執筆の大きな励みになります!

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