第63話 『勇者パーティー討伐』
ジュンとリップは砦へと向かい、建屋へ侵入して身を隠していた。
密かに、勇者パーティーの住む広間へと隠蔽魔法で潜入していた。
「何か、外が騒がしくないか?」
鬼たちは四方八方から、頂上の砦めがけて棍棒や槍を手に駆け上がっていく。
「わ! 馬鹿め、鬼どもが向かってくるぞ!」
勇者パーティーのリーダーが叫ぶ。
「弓隊、魔法使い、攻撃だ!」
すかさずシオンは、砦を制圧するため、駆け登る鬼たちへ透明な魔神防御障壁を付与した。
勇者側の放った矢は障壁に弾き飛ばされ、魔法使いが放った火魔法も当たってかき消えてしまう。
「リップ、そろそろ砦を守っている周囲のカラフルな鬼たちを、重力魔法で動けなくしてくれ」
ジュンが小声で頼む。
リップはシオン譲りの重力魔法を放った。
「さて、見ものだな」
ジュンが呟く。
砦からは剣士二人が飛び出していた。
下から飛び交う鬼たちの槍を剣でかわしながら応戦している。
「やればできるじゃないか」
ジュンは制圧完了をシオンへ念話で伝えた。
それを受けて、シオンは防御障壁の魔法を解除した。
ジュンは制圧した「勇者パーティーモドキ」の面々を凝視する。
「何故こんなダンジョンの奥で、鬼たちを奴隷扱いし、財宝や金塊、鉱石を巻き上げて山のように溜め込んでいるんだ?」
そう問いただしたジュンに、リーダー格の男が言い放つ。
「お前に知ったことか!」
その口めがけて、リップが軽く電撃を仕掛けた。
「ガガガガガッ!?」
全身を硬直させながら、男はなおも吐き捨てるようにぬかした。
「俺たちが……ここの王だからだ!」
身勝手すぎる言い分に、ジュンはショックと呆れを隠せない。
その時、頭上からレオンが降り立ってきた。
「おぉー! こやつらか!」
レオンが鋭く睨みつけると、あまりの威圧感に勇者モドキたちは縮こまった。
「なー、ジュンよ! コイツらを海の中に放り出してやろうか!」
「だ、か、ら……それを決めるのは僕の役目だって、シオン様から言われてるでしょ? 分かってるのかな、もー……」
ジュンの呆れ顔に、レオンは「あ! そうだったな」と頭をかいた。
「はい! それでは断罪の時間です。
全裸で足枷を嵌め、ダンジョン内での過酷な鉱石採掘、向こう十年の刑とする!
「その他、こやつらに加担したカラー鬼どもは、シオン様がこれから作る『離れ小島』へ島流しだ!」
もちろん、そこでも過酷な鉱石掘りの重労働が課せられることになる。
「シオン様! これで決まりです。あとはよろしくお願いします!」
ジュンの宣言を聞いたシオン様は、「分かりましたわ」と軽やかに頷くと、大陸にあったちょうど良さそうな山を、麓からスパーン!と空間ごと綺麗に切り出した。
そしてそのまま、少し離れた海面へと豪快に放り投げる!
ドギャァァァン!!と凄まじい水柱が上がり、あっという間に真新しい『離れ小島』が完成した!
そこへ、動けなくなっていたカラー鬼たちを一斉に転移魔法で吹き飛ばし、島流しを完了させる。さらにシオン様は、その島流し先の管理体制を青鬼たちへと委ねたのだった。
「良いですわね? 管理が行き届かないから、この様な事態が起こるのですわ! お分かり? 毎日の帳簿、人員の掌握、採石状況の確認を怠らぬよう……そして、管理者たる皆様も『きちんと有給を取りながら』、健全なローテーションを構築するのですわ!」
鬼たちをギロリと見つめ、可憐かつ完璧なホワイト管理論を言い渡すシオン様。青鬼たちは「は、ははーっ! 善処いたしますっ!」と恐縮しながら平伏するしかなかった。
さらに、「住居が足りなくて困っている」と陳情してきた鬼たちのために、シオン様は大陸の向こうからもう一つ山をスパーンと切り出してきた。
それを鬼ヶ島と小鬼島のすぐ裏手へとドスンと設置し、新たな『中鬼ヶ島』をあっけなく作り上げてしまったのだった──。
「さて、これで問題解決ですわ!」
溜め込んであった財宝の山を持ち上げ、再びダンジョン内へと戻すため、一行は洞窟の奥へと入っていった。
ダンジョンの入口には「有料ダンジョン」と書かれた看板が掲げられる。レオンはあの桟橋にあった船とかいう乗り物のことも少し気になっていたようだが、その思いは胸の内に静かに沈めるのであった。
心の底に沈んだ船が、再び浮かび上がることは二度とないだろう。
多分?
「やっぱりあったか!」
ジュン、リップとピクシーの双子が話していた。
後ろから財宝をあちらこちらに隠しながら来たレオンとシオン様が、「あらあら、やはりありましたわね」と呟く。
「この壁の雰囲気からして、そろそろだと思っておりましたぞ」
レオンが言った。
「ですが、これが今回の鍵になりそうな……?」
レオンがそう言いかけた途端、巨大な門がガガガッと音を立てて開いた。
(第64話へつづく)




